俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

三原順 復活祭

三原順」という漫画家を知っていますか。
1973年「別冊マーガレット」でデビュー、1975年から81年にかけて「花とゆめ」に連載された「はみだしっ子」シリーズで有名な方です。私は「ムーン・ライティング」「Sons」も好きです。
少女漫画らしからぬ硬質な描線で、児童虐待や親子の相克を70年代から真正面に描いた作家でした。スリーマイル島原発事故から3年後の1982年に、原発エネルギー問題を扱った「Die Energie 5.2☆11.8」や「X Day」を描いてもいます。非常に作家性が強く、その思索の深さで多くのファンを獲得してきました。残念ながら1995年3月20日地下鉄サリン事件の起こった日に、42歳の若さで病没。それから20年経った今もなお、彼女の作品を求める根強いファンの声に押され、「没後20年展 三原順復活祭」が現在、東京・御茶ノ水にある、明治大学米沢嘉博記念図書館・1F展示コーナーにて開催中です。入場無料。

米沢嘉博記念図書館|「〜没後20年展〜 三原順 復活祭」

春にしては陽射しの強い中、観に行ってきました。
原画から発するエネルギーの強さ! 背景の樹木の一葉に到るまで、きっちり書き込まれています。黒白のコントラストが強く、力強く丁寧な描線でした。カラーイラストも、生の絵はすごいですね。発色とか、塗りこみの繊細さとか、見たらわかる感じ。
ネタ帳やネーム下書きノートも展示されていて、興味深かったです。きっちり作り込むタイプの作家さんだったんだなあ。

はみだしっ子」シリーズが名作なのは知っていたけれど、読んだのはだいぶ遅く、社会人になってからでした。本屋に寄ったら、三原順の遺作である「ジョデイの森 ビリーの樹」が、帯に「追悼」の文字も大きく平積みされていたのです。思わず手にとり、レジに持っていったのが、三原作品をまともに読むきっかけだったように思います。
それから三原順作品を追いかけ始めたのでした。当時は、単行本はだいたいが絶版で、「はみだしっ子」シリーズくらいしかコミック文庫化されてなかったのよね。その後、ぼちぼちと白泉社で文庫化されるたびに買いそろえていきました。
思春期の頃、三原作品を読んでいたら、どうなっていたかなあと思います。妥協のない話なんですよ。つらくなるくらい考えさせられるんですが、でも読んじゃうんだよなあ。

没後20年の今、20冊目となる彼女の最後の文庫本が刊行されます。その名も「LAST PIECE」。
三原順作品集 LAST PIECE|白泉社
これで、商業的に発表された三原作品は網羅されました。
だいたい、亡くなって20年も経てば、その人の作品を知っている読者も少なくなり、大部分が絶版となって入手が難しくなっていくのが通例です。それが、絶版だったのが復刊されていくのです。それだけ根強いファンがいて、新たな読者を生み出していく作品の力がある、ということでしょう。願わくば、10年後も20年後も、彼女の作品が読み継がれんことを。