俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

明日の未来を

劇場の大判ポスター

勤労感謝の3連休に帰省したり、いろいろしてましたが、まずは直近、舞台の感想からUPしていこうと思います。
SMAPの草なぎ君主演の舞台でっせ!

ぼくに炎の戦車を赤坂ACTシアター

【作・演出】
鄭義信(チョン・ウィシン)
【出演】
草彅剛 チャ・スンウォン
広末涼子 香川照之
成河(ソンハ) 馬渕英俚可 高田翔(ジャニーズJr.)
青木崇高 安寿ミラ キム・ウンス

ジョン・テファ キム・ムンシク キム・ヒョンギュ ザン・ドクジュ イ・ヒョンウン
星野園美 ちすん 朴勝哲 清水恒男 水谷悟 西村聡 川守田政人 新田えみ 大隣さやか 根本大介

12/1(土)12:00開演、於・赤坂ACTシアター。上演時間は、一幕12:00〜13:35(95分)/休憩20分/二幕13:55〜15:30(95分)。休憩入れずに3時間10分、ですね。カーテンコールもあったから、実際に劇場を出たのは16時ちょい前くらいだったかしらん。
舞台は、日韓併合より10年後の1924年で、京城(現・ソウルに相当)の郊外。これだけで分かるように、日韓の歴史が、がっちり絡んできます。舞台観る前は「重そうだよな〜」と思っていたのですが、そこはわりと優しく、笑いを交えて描かれていましたね。「お勉強」という芝居ではないです。
また、日韓の歴史だけではなく、朝鮮の芸能集団「男寺党(ナムサダン)」の芸人生活が、舞台の一画を占めます。日本で例えると、昔の角兵衛獅子や三味線、琵琶弾きなどの「門付け(かどづけ)」が近いかなあ。
あまり難しいこと知らなくても、楽しめる(というと語弊があるかな?)舞台ですが、歴史なり何なり、ある程度分かっていたほうが、より面白く観劇できるかと思います。
私も、そんなに知識があるほうではないですが、たまたま韓国の伝統芸能を扱った映画を観ていたので、そこんとこは昔の自分に感謝ですね。

※私が観た映画はこちら。参考までに。
・風の丘を越えて
(パンソリと「恨(ハン)」が主題。村から村を渡り歩く旅生活のなかで、親子3人、楽しげに「アリ アリラン スリ スリラン……と歌い歩く追憶シーンが忘れられない。→風の丘を越えて [DVD]
・王の男
(男寺党の芸人が主人公。えーと確か、初めて韓国映画で同性愛をチラッとでも描いた作品でしたっけ。ソコは触れ込みほどではありませんでした。舞台作品を映画化したものだったはず……。クライマックスに綱渡りもあったよ! 拙感想はこちら→id:orenade:20070114ですが、あんま大したこと書いてなかった。ので、画像をどうぞ→

日韓併合、朝鮮独立運動に関して、劇中に出てきた「万歳事件」は、いわゆる「三・一独立運動」を指します。
劇中で片鱗だけ語られる「虐殺事件」とは、「堤岩里教会事件」のようですね (Wikiでは「提」岩里ですが、「堤」が正しいもよう)。詳しく知りたい方は、ぐぐってみてください。
あと、字幕で「貴族」とあったのは、戯曲を読むと「両班(ヤンバン)」でした。日本でいう「士農工商」の『士』に当たる地位ですが、日本が武人であるのに対して、こちらは文人(高官の官僚)ですね。個人的イメージだと、“お代官さま”かしら?

ここまでが前置き。長いね!
作・演出の鄭義信(チョン・ウィシン)さんは、黒テント出身の人だったような。その後「新宿梁山泊」の座付き作家になり、現在フリーで活躍されている方です。黒テント新宿梁山泊も未見で、鄭さんの作・演出された劇は初めて。
日韓の俳優が半々くらいで、言葉の壁をクリアするためか、オーバーアクション気味の演出。
舞台上における役者の絵図、人さばき (殺陣みたいに人が入り乱れるシーンの処理。これは役者さんの力量もありますね)、空間の使い方などは、うまいなあと思いました。
ただ、ギャグがくどかった〜。この人、もしや関西出身? と思い、パンフレットで確かめたらビンゴでした。昔の新感線みたく、ギャグの繰り返しが多いの。関東だと、受けるネタを繰り返すのは、せいぜい3回が限度だと思うんですよ。それが、3回はデフォルトで、5回6回は当たり前の世界なんですよ。長いわ〜。あれをつまめば、上演時間はもう少し短くなったはず。

東京公演の楽日(昼・夜公演のうち、昼)でして、草なぎ君、声嗄れてました。あんな叫ばなくていいのに〜。台詞回しが、ときどき一本調子なのが気になるわ。理想主義者で純粋だが、すぐ頭に血がのぼるという役柄なので、それも演出なのかしら。広末も、かなり嗄れてましたね。
草なぎ君は日本で夢破れて、朝鮮に渡った小学教師です。ここでこそ理想の教育を、と意気込んで来ただろうに、実際には人民弾圧、皇民教育の徹底化で、自分の情熱は宙ぶらりん……と、やるせない思いを抱えております。
日本では「白樺教師」でしたが、社会主義者ではないかと糾弾されて朝鮮に来た人なので、たぶん、もとはエリート階級なのではないかと。で!ですね、眼鏡かけてるんですよ草なぎ君。四角いセルフレームの眼鏡でね……、

草なぎ君眼鏡似合う眼鏡似合う眼鏡似合う眼鏡似合う眼鏡(以下略)

……はあ、思わずこれくらい書いてしまうほど、すっっげえ萌えました。今の髪型だからかも! 登場したとき、あまりの端正さに心拍数あがったもの!
あと、時代設定からして、服装がダサいんですよ。白シャツに大きめのスラックス、学生時代から着てそうな十年モノの、ダボッとしたVネックセーター。
私、かっこいい人がダサい格好してるの、好みなんですよね……。ダサいのがむしろイイ!みたいな。むしろカッコよさが強調されるぜ!てきな。ダボッとセーターが、草なぎ君の線の細さと凛々しさを強調して、「ああ女の子が彼氏のTシャツを着て『やだ膝上まで隠れるゥ〜』とか、袖先から指チョンとか、男子が萌える気持ちが今わかったぜ……!」と、萌えまくりでした気持ち悪くてサーセン
や、でもここまで外見に萌えたのは久しぶりですね。ふだんは、こんなじゃないですよホント。

あと、草なぎ君演じる日本人教師の「直輝(なおき)」と、彼と友情を育む、韓国では賤民として卑しめられる芸能者の「李淳雨(イ・スンウ)」の関係が、ちょっとBLくさかったです。劇中では、それを疑われて「僕たちはそんな関係じゃない!」と怒ってますが。
草なぎ君が、そういう雰囲気を醸し出しているのかな〜。淳雨を演じる、韓国人俳優のチャ・スンウォンさんが、かなり背の高い大柄な方で、二人が並ぶと、草なぎ君が小さく華奢に見えるせいもあるかも。
とまあ、触れ込みとしては、草なぎ君が主演で、韓国の芸能集団「男寺党」にスポットを当てた作品――なのですが、草なぎ君は主演のわりに、それほど目立ってないです。
おそらく、舞台にたくさんの主題を持ち込んでしまったため、彼のパート(彼とからむ部分の多い男寺党も、必然的に)が薄まったのだろうな。個人的には、香川照之演じる女給カフェのオーナー「清彦」のパートが、見せ場が多かったように思います。
清彦は日韓両方の血を受けた、複雑な生い立ちの人間でして、作・演出の鄭義信さんの思い入れが強いんでしょうね。つい、彼のパートに力が入ってしまったような……香川さんもたっぷり演じられていて、余計に「主役はこちら?」となっちまった感があります。
でも、清彦が自分を指して「半日本人 (ハンチョッパリ)」と言うシーンは、せつなかったなあ。あのシーンに、鄭さんの思い入れを見ました。ハンチョッパリとは、もとは故国である韓国が、在日韓国・朝鮮人を指していう蔑称でもありますから……。
(ちなみに、チョッパリは日本人を指していう蔑称。足袋や下駄を履いた足が、豚足 [チョッパリ、チョッパル] に似ていることから)

他の役者さんたちも、総じて満足。韓国勢も、言葉は分からないながら (セリフは韓国語。字幕が出ます)、演技がノッていて、よかったです。「男寺党」の芸能、もっと観たかったなあ。
脚本は、ちょっと詰め込みすぎたかな。いろいろな人の、いろいろな思いが、絡まって一つになるのではなく、バラけてしまった嫌いがあります。時代を語る上で、しかたない面もありますが、少しもったいなかった。
最後は大団円、といっていい〆。鄭さんが、明日への希望を込めてつくった作品とのことなので、あえて甘さを残したのでしょう。ちょっとベタでメロドラマ風のところもあり、重い歴史を扱いながら、ギャグパートもふんだんに入れているので、観やすい舞台だと思います。
韓国公演もあるそうで、韓国の方の率直な感想も知りたいですね。