俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

2005、2007に続いて3回目

夕方から観劇。その前に理髪に行きたかったが、起きられなかった……。ふつうに部屋を片して、日比谷まで。

ミュージカル「レ・ミゼラブル 2009」

10/11 (日) 17:00開演、於・帝国劇場。一幕17:00〜18:30/休憩25分/二幕18:55〜20:10。
プリンシパルの配役は以下の通り。

バルジャン:別所哲也      ジャベール:石川 禅
 マリウス:小西遼生    アンジョルラス:坂元健児 
エポニーヌ:知念里奈     ファンテーヌ:シルビア・グラブ
 コゼット:神田沙也加  テナルディエ夫妻:三谷六九、阿知波 悟美

【男性アンサンブル】
グランテール:伊藤俊彦 クールフェラック清水裕明 ジョリ:横田裕市 コンブフェール:菊地まさはる フイイ:鎌田誠樹 レーグル:港 幸樹 バベ:櫻井太郎 ブリジョン:藤田光之 プルベール:上野聖太
モンパルナス:赤座浩彦 クラクスー:五大輝一 

レ・ミゼの舞台は、通算3回目。山口バルジャン、橋本バルジャンときて、今回は別所バルジャンです。
別所バルジャン、いいねー!
個人的には一番好み。前半の世を恨み、すさんでいるときの野性味やルサンチマンがほどよく出ており、司教と出会って改悛するのに無理がない。説得力がある。市長時代の堂々たる体躯、やがて老いて、体が利かなくなるあたりもうまい。山口バルジャンは品がよすぎて前半の怒りが希薄だし、橋本バルジャンは若すぎて単純(バルジャン役に抜擢された1年目の感想だから、3年目の今は変化しているかもしれません、念のため)。総じて、別所バルジャンはバランスよく、生きた人間としての感情が伝わってくる。非常に魅力的です。
そして今回、特筆すべきは、キャスト全員が熱い! カンパニーとしての一体感がありました。内容は同じなのに、受ける感動がちがう。キャストが異なると、ここまで変わるものかと、我ながらびっくりですよ。今回が一番好きですね。
まず、アンサンブル・キャストが一様に熱い。今までテレンコやってた印象しかない学生軍団が、オーバー・アクションながらまっすぐ演じていて、個別認識できるほどに存在感がありました。今回のアンサンブル・キャストいいわー。キャラ立ってるわー。たぶん、舞台を離れても仲のよいキャストたちなんじゃないかな。彼らの間に「仲間」の雰囲気があったもの。今まではそういう「設定」にしか見えなかったものね。地声に近いやりとりが多い中、坂元アンジョルラスがただ一人、ミュージカル発声だったのが少し浮いてたかな。
三谷テナルディエは、悪党の気配が強かったですね。わりと分かりやすいです。テナルディエの妻・阿知波悟美さんは、生活に疲れて愚痴っぽい感じ。
石川ジャベールは、初めての拝見。この人も熱いかったですねえ。演技のノリが、が時代劇の役者みたいだった。里見浩太朗北大路欣也ね。高橋英樹ではないな。

さて、マリウス、コゼット、エポニーヌです。小西マリウスはかっこいい! それだけでOKです。マリウスは二枚目じゃないとダメー。背中伸びてないとダメー。演技もがんばってたし、坊ちゃんぽさも出ていたので、よかったんじゃないかしら。で、コゼットとエポニーヌ。神田沙也加のコゼットに、知念里奈のエポニーヌでして、知念はコゼット役経験者でもあります。この2人が、今までにない熱いキャラ立てでした。「攻めの神田コゼット」に「死にそうにない知念エポニーヌ」。新しすぎる!
神田コゼットはオーバー・アクションが目立つが、がんばりが好印象で、そう悪くもなかったですよ。ただ、コゼットは“おとなしいお嬢さん”の役柄のように思うのだけれど、神田コゼットは勝ち気。攻めの姿勢で、お嬢様というより女王様のような気が、なきにしもあらず。神田コゼットに負けていないのが、知念エポニーヌです。自分の想いに気づかない片恋の相手に、“分かってくれないのね……”と歌う場面では「あんな女にうつつを抜かしやがって、チッ!」と、舌打ちの幻聴が聴こえそうな勢い。ここは、片思いのせつなさを出すところよね? 最後、片恋の相手に看取られ死にゆく場面でも、もっと抱いてと、グイグイ相手の腕を引っ張ったり、瀕死のわりに動作が元気。レ・ミゼでなければ「狂言自殺だろオマイ」とつっこみたい。で、バタッと死ぬ。な、なんだってー! 本来、悲しいシーンなのに、ほんのり込みあげる笑いをこらえたよ。それでも、コゼットよりエポニーヌのほうが、知念里奈の声質に合っていると思う。
新しいコゼット、エポニーヌ像に驚きながらも、それも楽し。とにかく、キャストたちの熱い一体感と、別所バルジャンの人間性に心うたれた舞台でした。舞台に近い客席で、表情がよく見えたのが大きかったかもしれませんね。