俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

初演版の2人が帰ってきた!「RENT」

「RENT」のポスター

初演オリジナル・キャストで、その役柄のまま映画版にも出演した2人が、来日版「RENT」に来る!
東京公演2日目を観てきた。……もう、すごい!
愛のある舞台だった。Adam Pascal と Anthony Rapp が素晴らしい。この2人を生で観て、聴けて、よかった。2007年に期間限定でブロードウェイに戻り*1、09年の全米ツアーにも参加中*2のオリジナル・キャストの2人だが、日本公演にも来てくれてありがとう。
ブロードウェイ最終公演・フィルムDVDも、ご紹介しますね。Adam と Anthony は出ていないようだけれど、こちらもよい出来らしいし、どうしようかなあ。観劇の感想は下にずらずらと。長いよ〜。


Adam Pascal & Anthony Rapp in「RENT」The Broadway Tours

【脚本、作曲】ジョナサン・ラーソン(Jonathan Larson)
【演出】マイケル・グライフ(Michael Greif)
【出演】ロジャー:Adam Pascal/マーク:Anthony Rapp/トム・コリンズ:Michael Mcelroy/ベニー:Jacques C. Smith/ジョアンヌ:Haneefah Wood/エンジェル:Justin Johnston/ミミ:Lexi Lawson/モーリーン:Nicolette Hart/他、アンサンブルに日本人CAST:Alexi Darling,Roger's mom and others as Yuka Takara

8/8(土)18:00、於・赤坂ACTシアター。上演時間は2時間25分 (第一幕70分/休憩20分/第二幕55分)。
今回の来日版「RENT」は、とてもスペシャル。オリジナル・キャストの主役2名、ロジャーとマーク(Adam Pascal と Anthony Rapp)が来るのだ! 年明け1〜2月だったか、「半年以上先の、8月の予定なんて分からないよ〜」と言いながら、先行販売チケットを申し込んだっけなあ。
そして今日、東京公演の開幕2日目。
すっごく、よかった! チケットを取って、心からよかった。
初めて「Broadway はすごい」と思えた。というのも、2006年の来日版が期待はずれで、相当がっかりさせられましたからねえ (当時の感想はid:orenade:20061123#p1)。
今回の高得点:
・生バンドの音量が、ちゃんとロックだった(06年のしょっぼい音は、会場が悪かったのかしら。新宿の厚生年金会館とACTシアターとでは、小屋の大きさがちがうものね)
・電光字幕が、場面ごとにセリフを拾っていて、理解に役立った(06年は電光板が壊れてんのか!? と思うほど、セリフが動かず、訳出を怠っていた。今回の字幕は、06年の2倍以上はあるよ)
そして何より、06年と大きくちがう点。
CASTが皆、舞台を愛して、演じていた。「愛」の有無が、これほどまでに舞台の出来を左右するとは、正直びっくりしたくらい。06年の舞台は Play ではなく Show だ、と前に書いたけれど、今回はまちがいなく“Play”です。本物の「RENT」を初めて観られたと思った。泣いた。

今回の舞台に「愛」が現出したのは、オリジナル・キャストの2人、Adam と Anthony の存在が大きいと思う。だって、この2人が愛情をもって、丁寧に演じているのが、すごーく伝わってくるのよ。主役が舞台に愛をもっていれば、おのずと周りも感化されるじゃないですか。結果的に全員が、いい舞台にしよう、RENTを作り上げよう、という方向になったのだと推測します。
だからか、他のCASTもノッて、ちゃんとパフォーマンスしてくれました。もう、ほんっと06年版はなんだったんだと言いたい。エンジェルの「Today 4 U」、ミミの「Out Tonight」も、06年のチンタラ加減からすれば上出来ですよ。モーリーンの Live performance も、今回初めて楽しめた。あの部分は毎回 (映画版でも)「MooMoo、言ってられっかい」となる、個人的にサムい場面No.1なのだが、今回はMoo…と言ってもいいかな、と思わせるくらい盛り上がりましたね。モーリーン役のNicolette Hart が、ファンキーな役柄をうまく演じてた。ちょっとイッちゃってる可愛い姐ちゃんなの。コメディエンヌも出来そうな、舞台の勘所を持っていると見た。間合のとりかたがうまい。で、映画版・婚約式のイメージから、モーリーンは都会のアッパークラス出身かと思ってたけど、字幕を見たら、どうやら田舎(郊外?)出身の可愛い子ちゃんぽいね (06年は、そういうのも字幕に出なかった)。
字幕関連でもうひとつ言うと「I'll Cover You」。愛はお金で買えないけれど借りることはできる、と字幕で流れてハッ。「RENT」って、家賃(rent)だけでなく、そこの意味もあるのね! 初めて気づいたよ。己の英語力のなさに凹むわ〜。

演出は、06年のエイミー・ヘンズベリー(Amy Hensberry)から、初演版のマイケル・グライフ(Michael Greif)に。微妙にところどころ違う気がしたけれど、「ここ」とはっきり言えるのは、エンジェルが亡くなるシーン。06年はピンクの照明だったのが、今回は大きな白い布を使った演出。しかし、性的なシーンであることには変わりない。性=生=死、の解釈は同等ね。
据え置きの舞台セットも、特に変わりないように見えた。てか、お月さまの「ぼんぼり」は、やっぱりあるんですね……。
ところで、オリジナル・キャストの Adam Pascal と Anthony Rapp。この2人に、Broadway の実力を見せられました。もともと、2人が主演した映画版「RENT」から入り、映画サントラ、さらに 1996 Original Broadway Cast版のCD2枚組でハマったクチの自分です。ホンモノが目の前で動いて、歌っている状況が、わかっていても信じられない。2人とも、日本まで来てくれて本当にありがとう……。歌声も変わらず、伸びやかで揺るぎなく、安定してる。Adam はロックだし、Anthony は「La Vie Boheme」で、La Vie 〜〜〜〜、と息長く投げかけるパフォーマンスでは拍手が起きた。2人の掛け合いなんぞ、涙出ちゃうよ。「What You Own」が聴けるとは!
しかし、涙ぐみつつ笑っちゃうのが「RENT」。毎回、同好の知人とツッコミを入れて楽しませてもらうのだけど、ロジャー……ほんっとダメ男だな! 恋人のミミから「私が重荷なのね」と責められて、「ボク……ボクは生涯でただ一つの名曲を、つ、作れれば……うえーん!」て、顔クシャクシャにして逃げちゃうし (しかし、この Adam の顔クシャ涙が可愛い)。ミミとの仲を心配したマークから逃げるなよ、と説教されると「一人者のお前になんか、言われたくないやい!(マーク硬直)」。でもすぐ言い過ぎた、と反省して気まずそうに「……電話するよ」(可愛い)。瀕死の恋人を前に「君のために作った曲があるんだ」→ギター片手に歌う。ふだんなら嫌いなタイプまっしぐらなのに、Adam のロジャーは可愛げがあって、憎めないのよね〜。マークが世話焼きたがるのも分かるわあ。
Anthony Rapp は、随所で盛り上げようと気を配っていた。彼のクセなのか、前かがみになって両脇を締め、拳をにぎった Yes! の格好で歌う姿が可愛かったな〜。Anthony のクセに気がついたのは私ではなく、同行者だけれど、「向こうのミュージカルのスタイルなのか、誰かがメインで歌いあげているときは、みな邪魔をせずに棒立ちが多くないか」とも言っていて、なるほど! と思った。あと、国民性のちがいなのか、幕切れがあっさりしている。日本人演出だと、もっと大げさに・ドラマティックにしそう。「タメ」が日本感覚より少ない、そんな気がした。

とにかく、今日の「RENT」は最高でした。素晴らしかった。パンフレットは、マーク(Anthony Rapp)が裏表紙の赤、ロジャー(Adam Pascal)の黒と2種類あり、各2,000円。Adam と Anthony の対談や個人インタビュー、今までの日本版・来日版RENT、ブロードウェイ版RENTの軌跡も載っており、個人的に「買い」の小冊子。「コーラスライン」のメインキャストを蹴り、「RENT」のアンサンブルを選んだ日本人CAST、高良結香(YUKA TAKARA)さんの談話が泣けます。

今は、ほんとにここにいられて幸せです。
……彼(ロジャー役:Adam Pascal)はオン・ステージでもオフ・ステージでも、みんなをまとめたり、叱咤したりして、カンパニーみんなのお父さんみたいな感じ。アンソニー(マーク役)は1回も公演を休まず、ケガしても何しても必ず舞台に立ちます。ふつう若いキャストは、ちょっと喉が痛いとかいうだけでも、すぐ休んだりしがちだけど、このカンパニーは、あの二人のダディーみたいな存在が、毎日全力を尽くしてお客様にストーリーを伝える姿勢を、口には出さず行動で見せてくれるので休まないんですよ。
――2009年来日版「RENT」パンフレットより

ええ話や……。今回の舞台のよさがどこから来るのか、このコメントからも分かりますよね。