俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

「落葉の隣り」もかなり好き

久しぶりに山本周五郎を読んで泣く。うますぎるよ山周。泣かせる話から滑稽譚まで、どれもうまい。「コレ書きたい」というのが、ちゃんとある人の文章はいい。

大炊介始末 (新潮文庫)

大炊介始末 (新潮文庫)

短編集。この巻に収録されている「おたふく」を読みたくなって、開いたのだが、そういやこの巻には好きな話が多かったのだった。「おたふく」、かわいい話だよ〜。人に勧められるままに結婚した男が、いつか、女房がなくてはならぬ存在になったことに狼狽するあたりが好き。女房が半日出かけただけで、仕事が手につかない。気がつけばツッカケで往来に出、女房の姿を探している。ざまァねえ、と自嘲の思いで立っていると、近所の子が「おばさん、魚屋にいたぜ」。とたん、カラリと霧が晴れた男は、いそいそと長屋に戻るのである。
その他「ひやめし物語」「よじょう」「大炊介始末」「なんの花か薫る」「ちゃん」「落葉の隣り」と、おすすめ多し。
松風の門 (新潮文庫)

松風の門 (新潮文庫)

実は、「おたふく」は三部作。作品の時系列でいうと3番目の「おたふく」が、一番最初に書かれている。で、2番目が『松風の門』収録の「湯治」。これを読むと、「おたふく」でいつも笑っている印象の“おしず”が、実は苦労人であることがわかる。「世直し」を声高に叫ぶ人への皮肉もきいた作品。