俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

会合、観劇

土曜の休日、2本立て。会合とミュージカル。
12:30に渋谷で、昨秋以来の大学サークルの集い。近況交換などしつつ、昼ビールである。すごい休日っぽい! このあと観劇だからと、どこかで自制してしまった己れが悲しい。あれこれ近況交換しながら、2次会は先輩のお宅へ。残念ながら1時間ちょいしかいられなかったが、元気な顔を見られるだけで安心しますね。先輩宅のすっきり室内が、うらやますぃ〜。
けっこうギリギリに出たのもあり、日比谷の帝国劇場に開演5分前着。なぜか日生劇場だと思い込んでいて、日劇から帝劇まで、走った! 間に合った!
今日のは「レ・ミゼラブル」。橋本さとしジャン・バルジャンおめでとう観劇です。橋さとの主人公オーラが、遺憾なく発揮されてましたよ。舞台負けしてなくてよかった〜。しかし、あのマリウスはちょっと……。

ミュージカル「レ・ミゼラブル 2007」

7/28 (土) 17:00開演、於・帝国劇場。一幕17:00〜18:30/休憩25分/二幕18:55〜20:10。「日本初演20周年記念」なのね。
プリンシパルの配役は以下の通り。

バルジャン:橋本さとし    ジャベール:岡幸二郎
 マリウス:藤岡正明   アンジョルラス:坂元健児 
エポニーヌ:笹本玲奈    ファンテーヌ:シルビア・グラブ
 コゼット:菊地美香  テナルディエ夫妻:駒田一、瀬戸内美八

劇団☆新感線で、NHK「プロフェッショナル」のナレーターもつとめる橋本さとしの、初バルジャンおめでとう観劇。「ミス・サイゴン」「ベガーズ・オペラ」など、ミュージカルでの活躍をへへえと眺めていたが、まさかバルジャンをやるとは! さとしとバルジャンの意外さに、思わずチケを取ったった。橋本バルジャンと岡ジャベールで、他は前回(id:oreade:20050517)と、なるべくちがうキャストを選択。
橋本バルジャン、予想外にいい出来でした。舞台負けせず、堂々と立ってた。しかし、異色でしたね〜。私は山口バルジャンしか観たことないけど、おそらく今までにない、新鮮な切り口のバルジャンだと思う。
まず細い! 若い! 熱い! 野性的にして直情径行。冒頭の囚人時代は不当な運命にルサンチマンの固まりで、怒れるバルジャン。ぜってーコイツ再犯するワーてな勢いが、司教さまとの出会いでコロッと改悛。小気味いいほどの正邪反転で、こどものように素直です。この後、マドレーヌ市長時代のフロックコート姿に萌えた。かっこよすぎ! 客観的に二枚目と分かっていても、自分にとっては「整った馬ヅラ」だったのが、こんなにかっこよく見えたのは「野獣郎見参!」以来だわ。
コゼットに対して、父親以上の感情はなさそう。マリウスへの妬心もうすく、このへんの真直さが、よくも悪くもさとし、という気がする。本当の娘ではない女、その女を奪う若い男への、ねっとり感がないんだ。あわいの感情が出せるようになると、もっとよくなるのではないかしら。
竹を割ったようにわかりやすく純粋だから、ジャベールとの対決シーンでも無駄に熱い。そんなに顔を近づけて、まっすぐ目を見て歌わんでもー! 負けじと胸を張る岡ジャベール。なんか少年ジャンプっぽい。(実際は顔を近づけてなくとも、本人の熱さに詰め寄って見える橋本マジック)
ちょっと面白かったのが、橋本バルジャンの動きのよさ。これまた無駄にキレがいい。年寄り設定の後半で、大儀そうにモノをもつ場面でも、どこか軽々とキレがいいの。うーん若い。前回が、貫禄の山口バルジャンだっただけに、ちがいが際立って見えた。

橋本バルジャンにケチをつけているように見えるが、そうではないの。

 劇団☆新感線出身の橋本は、ジャベールの独唱「スターズ」が好きで、練習を重ねていたが、オーディションで演出のジョン・ケアードから「バルジャンをやってみたら」と言われた。「無理やろ。キャパシティー(能力)・オーバーちゃうか」と戸惑ったが、「ジョンには見える何かがあるのかも。信じてみよう」と引き受けた。
 名曲「ブリング・ヒム・ホーム」を歌うシーンでは「神にすがるのではなく、同じ目線でかみつくくらい勢いを出した。コゼットへの無償の愛に支えられた大きな優しさ、強さを表現したい」という。
??「レ・ミゼラブル 初挑戦の二人息ぴたり」(「読売新聞」2007年6月20日付記事) より

上記引用記事を読んだとき、思わず笑ってしまったが、同時に納得もした。笑ったのは、「スターズ」を自宅練習しているさとしを想像して。ジャベールやりたかったんだー! で、やっぱり熱い。とまどいながらも、素直に信じて引き受けるのもいい。納得したのは、バルジャン役に推挙したジョン・ケアードの眼。橋本さとしは、主役オーラのある男なんです。脇よりも、主役の方が映えるし、舞台負けしない人。そのへんを見抜いたんじゃないかな。

他キャストでは、駒田テナルディエがよかった。食えない悪党の凄みがありましたね。愛嬌よりも、底知れなさのほうが上。妻の瀬戸内さんは、駒田テナルディエに対して「従」のよう。
藤岡マリウスは、たぶんもう観ません。猫背でアゴが出てる。それで二枚目? 品がなく見えるので、背筋はまっすぐにね。群衆シーンになると紛れて、存在感なし。坂元アンジョルラスは上手だし、菊池コゼットは知念里奈より数段ましだったが、このマリウス・コゼット・アンジョルラスは、申し合わせたように背が低いのがつらかった。長身の橋本バルジャン・岡ジャベールのシーンから移行すると、巨人国と小人国に迷いこんだガリバー気分になります。
演出面では、光と影の対比照明が、前回よりくっきりとなったような。ぐっとタメが入るぶん、場面転換が粗くなり、かえって余情が失われたのが残念。群衆が駆け抜けるシーンなんか、ドタドタの足音が耳障りで興ざめしちゃう。時間の制約がきついのかな。

橋本バルジャン、新しくて面白かった。初めて観た山口バルジャンの回と、あれこれ比較してしまい、割と最初のに影響されるもんだと思った。次は別所バルジャンが観てみたいなあ。