俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

ヤスケン初見

連休明けの火曜日。仕事で行けなくなってしまった知人の代わりに、芝居を観てきた。お連れさまが先に来ており、ご挨拶。さて観てきたものは。

R.U.P.プロデュース「歌の翼にキミを乗せ 〜ロクサーヌに捧げるハイネの詩〜」

【脚本】羽原大介
【演出】杉田成道
【出演】観月ありさ/西村雅彦/安田顕村杉蝉之介武田義晴/チョウソンハ

7/17 (火)、19:00開演、於・新宿初台の新国立劇場。上演時間は2時間半ほど。
脚本は「パッチギ!」「フラガール」を書いた羽原大介で、演出はTVドラマ「北の国から」シリーズ、「海峡を渡るバイオリン」の杉田成道
古典純愛戯曲「シラノ・ド・ベルジュラック」を、太平洋戦争時代の日本に置き換え、翻案したもの。わりと原作に忠実で、うまく翻案されていた。戦争ネタ部分は「お勉強したのね〜」という感じ。上官をはじめとする兵隊像が類型的。主眼は恋愛で、戦争ではないから、一面的な描き方になるのはしかたないのかしら。戦争のネタ扱いは、あんま好きじゃないから辛口でごめんなさい。「パッチギ!」の人らしいシーンもあります。
演出は手堅く、役者はみんなよかった。配役は、シラノ(浦野)が西村雅彦、ロクサーヌ(ふみ)が観月ありさ、クリスチャン(尾形)が安田顕
安田顕さんは、いま大人気の「TEAM NACS」の人で、ナマで観るのは初めて。動きはいいし美声だし、かんどころもある。クリスチャンを、おばかな二枚目以上に演じていて、シラノの西村さんと張ってました。ナマは雑誌の数倍いいですね。
今回が初舞台の観月ありさは、背筋の伸びた立ち姿がきれい。ありさちゃんとは関係なしに、ロクサーヌ嫌いを自覚した。「お兄さま、今のは立原道造ですわね」「まあ、ハイネの詩」みたいなセリフに付き合うのは苦痛です。その文学少女とカンちがいっぷりに、「ひでえ女だな!」と突っ込むことばんたび。「ねえ、あたしのことどれくらい好き? ちゃんと言ってくれなきゃヤダー。それも文学的表現でね!」なんて、シチメンドーな女のどこがいいんだ (顔です)。だいたい、二枚目な顔に惚れたくせに「やっぱり男は顔ではなく、心根ですわ」。クリスチャンがあわれだ……。
終盤、兵士たちが一人ひとり、「わだつみの声」エピソードを始めたときは、正直うんざりした。その冗長さを、西村さんが、無駄にうまい演技でそらす。すごいよ西村さん。
原典では、大きな赤鼻がコンプレックスなのを、ここでは額の青黒い痣(に見えた。パンフレットでは「たんこぶ」)にしている。この芝居全体の違和感は、そこだな、きっと。赤鼻だとユーモラスで、喜劇の悲劇になるんだけれど、額の青痣では「ノートルダムのせむし男」だ。悲劇で終了。西村さんのシラノが、ときに小面憎くみえるのは、戯画化が足りないのです。もちろん、笑いも散りばめられているんだけれど、もとが喜劇ベースか・悲劇ベースかで、舞台の基調も変わってくるよね。
村杉蝉之介さんが、西村さんと同期の兵隊役で、「よう浦野!」と、タメ口きいて肩を組むのが、物語と全然関係ないところで面白かった。素じゃ絶対できないだろうなー、村杉さん。
とまあ、いろいろツッコみながらも、けっこう楽しんで観ましたよ。なんでシラノなのかは、分からなかったけれど。