俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

ノンストップ土曜日

疲れた。起きてから20時までノンストップで、さすがに疲れた。
午前中はクリーニングの引取り、昼は新感線の舞台「メタルマクベス」(上演4時間)、お茶も飲まずに趣味の講座に直行、夜にいたる。上演が4時間て、やっぱりきついわー。新感線の舞台は生理的にスカッと気持ちいいけど、なにせ情報量が多いので、処理に脳が息切れするのよね。休憩25分間も、パンフ購入とチラシのチェック、同行者との意見交換であっちゅー間に終了。講座への移動中も、夜公演を観る友達に「上演4時間で休憩25分、帰りの電車に気をつけて! 松たか押し!」とメール送信。休む間なしで、講座に着いたときはヨレてたねー。
次のクラスの聴講のうち、20時で身心スイッチが切れた。切れ目の20:30、一足先に抜けさせてもらってスタバで休息。はー……落ち着く。ちょっとずつバランスが戻ってきた。
あとから合流の友達と久しぶりに話せたし、夜公演の子からは時間情報の礼と「こちらは内野さん押し!」との感想メールをもらった。同時に、遠方の友達からも久しぶりの嬉しいメールが届いたり、みんなーどうもありがとう!

劇団☆新感線RX「メタルマクベス

【原作】W. シェイクスピア
【脚色】宮藤官九郎
【演出】いのうえひでのり
【出演】
内野聖陽松たか子
森山未來北村有起哉橋本じゅん/高田聖子/粟根まこと
上條恒彦
右近健一/逆木圭一郎/河野まさと/村木よし子/インディ高橋
山本カナコ/礒野慎吾/吉田メタル/中谷さとみ/保坂エマ
皆川猿時冠徹弥/村木仁/川原正嗣/前田悟/ほか
【Metal Macbeth Group】岡崎司:guitars /高井寿:guitars /前田JIMMY久史:bass /岡部亘:drums  /松田信男:keyboards /松崎雄一:keyboards

6/3 (土)、12:30開演、於・青山劇場。第一幕12:30〜14:10、休憩25分、第二幕14:45〜16:20。計4時間の上演時間である。長いよ!
長いけれども、面白かった。宮藤脚本を、いのうえさんが如何に演出するかに興味の第一があったのだけれど、二人の個性が際立つ結果になったと思う。そして毎度のことながら、舞台の情報量が多すぎて目が泳ぐ〜。
宮藤さんの翻案のうまさに脱帽。この人は原作モノの料理が本当に上手だ。シェイクスピアの科白をまんま取り入れながら、クドカン流に場面を移し替えたり、意味を増幅させてる。原作と変えたのもあるね。時間のある方には事前に、ちくま文庫版『マクベス』(松岡和子訳) をお勧めします。物語構造を理解するのに、かなり役に立つよ。

いのうえ演出×宮藤脚本で、いつもの新感線とちがうのは、「笑い」がクドカン節なこと。ときどき、グループ魂のコントを見ている気分になった。下ネタの方向性も、宮藤さんと新感線ではちがうし。新感線の下ネタといったら、パンツとかブラジャーとかケッコウ仮面とか、小学男子がスカートめくりをして喜ぶレベルだと思うのね。それがいきなり「セックスしたーい!」。中高男子がエロ本を机の下で交換しあう世界ですよ。見栄でコンドームを財布の中に入れておくわけですよ。どんな顔で演出したのか見てみたい。見てみたーい。
ゲロもかなり引っ張ってた。あそこは宮藤さんというより「大人」っぽい。実際、「愛の罰」の演出をもじった箇所があって、演出の遊び心と礼儀を感じました。

マクベスの脚色で、宮藤さんは夫婦愛、家族を落としどころにしている。マクベス夫妻のバカップルは、宮藤脚本によく出てくる「愛し合う夫婦」だ (「ぼくの魔法使い」みったんるみたん、「吾輩は主婦である」たかし君みどりちゃん、「タイガー&ドラゴン」師匠夫妻など)。ラブリーで笑わせながら、容赦なく追いつめて切り捨てるのも、とってもクドカン。宮藤さんの脚本には、いつも虚無を感じます。すごく愛している相手でも、せっぱつまると「すまないねえ…」と簡単に殺しそうな、ポカッとあいた穴のような怖さが、この人のホンにはある。大好きなトンボの胴体をバラして遊ぶ子どものような、無意識の残虐さと明るさ。
セリフでよくわからなかったのは、「丘の鯨」。そういう出典ありましたっけ? 何かひっかかるんだけれども、思い出せない。むー。
架空の近未来と、80年代メタルロックバンドの二重構造で話は展開するが、80年代「マクベス内野」の無惨な堕ちようは、非常にリアルだ。たたみかけるような筆致で、宮藤さんはマクベス内野の転落人生をドライに書き込んでいく。この容赦のなさは、松尾さんにも、いのうえさんにもない。ふたりともウェットだからね。だからといって、いのうえ演出と宮藤脚本の相性は、悪くなかった。あまり違和感がないので、かえってびっくり。同行者は「皆川猿時さんが、両者の橋渡しをしてる」と言ったけれども、それもあるかも (皆川さんは大人計画の役者で、グループ魂の「港カヲル」です)。しっかし、最後の絵ヅラは、何をどうしても「いのうえ流」になるのね〜。

役者については、簡単に。メタマクでの一押しは、マクベス夫人の松たか子に一票。松さん、すごいよ。彼女が舞台をひっぱっているわ。容姿・声・演技、3拍子そろい踏みで、コメディもできるのね〜。森山未來君はさすがの身体能力。そして若い! Over40の人間が多い中、一人だけ動きがちがう。羽が生えたように軽いのね。歌もいけて、ミュージカルの経験が生きてますな。歌でびっくりしたのは、上條恒彦さんも。うまかった。
北村有起哉さんもよかったけれど、もうちょっと何とかならないかな。パンフを読んだら、文学座のような演技を要求されているそうで、イメージはできるけれど照れがあって、とコメントされてました。たしかに遊びの少ない役柄かもね。
タイトルロールをつとめる内野聖陽さんは、カーテンコールで非常に嬉しそうに挨拶していた。この役を演じるのが、本当に楽しそうだ。別に嫌いじゃないし、いやでもない。客観的にみれば、いいんだろうとも思うのですが、どうも……個人的にヒットしないのです。好みっておそろしい。