俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

五稜郭に函館山、地ビールに泣く1days【函館】

さて今日から函館札幌、3泊4日の旅である。
平日に! 会社を! 休んで! 行く!!!!!
昨日の夜は終電を逃して乗換駅からタクシーという代償を支払いつつ、睡眠2時間で羽田空港へ。朝食おにぎりとお茶を購入。ANA853便、羽田10:10→函館11:30。行きの機内で寝るつもりが、朝食タイム&同行者と今日明日の打ち合せで大盛り上がり、ぱっちり冴えて函館空港に着いた。連絡バスで20分ほど揺られ、JR函館駅へ。
駅前には「和光」「棒二森屋」(建物はなぜか WAKO、Boni-moriya とローマ字表記) という、2軒の百貨店。どちらも地方デパートだが、「和光」のさびれっぷりはやばい。木更津の駅前デパート(その後閉鎖)を連想させる、マダムな品揃えと古めかしくすさんだ建物には、客もほとんどいなかった。早々に退散し、隣の「棒二森屋」をのぞく。こちらは少し古いが明るい店内、人も多く華やいでいた。うるわしく懐かしい百貨店の風情に、ほっとする。

函館は、自分は3回目 (うち1回は仕事)、同行者は初めて。初日は晴れ、翌日から崩れる予報に、歩き回る五稜郭と夜景(函館山・元町)は今日、トラピストと湯の川温泉は明日に決める。
ホテルに荷物を置き、タクシーで五稜郭へ。13:30、五稜郭のすぐ前にある「あじさいラーメン」でお昼。「焼葱背脂ラーメン」塩味を頼む。焼葱が甘くておいしい。そして量も多い。東京のバラリラな具とは、載せ方がちがう。ラーメンには疎いので知らなかったけれど、今は函館塩ラーメンが人気らしいですね。札幌みそラーメンははるか彼方。

14:00過ぎ、店を出て「五稜郭タワー」にのぞむ。ちょうど新タワーを建設中(今年4月1日オープン)で、現行タワーはちんまり、その半分の高さ。小っちゃ! ほぼ完成の新タワーと現行タワーが仲良くならんでいるけど、新タワーがオープンしたら、古い方は壊されちゃうんだって。新旧ならび立つのを見ると、建築デザインの流行りがよく分かる。古い方は、昔の特撮に出てきそうな昭和レトロで、新しい方は新築マンションのチラシにありそうな、明るくさわやかな感じ。
現行タワーの1階は、五稜郭の歴史パネルと、非常に充実したお土産コーナーがある。新選組土方歳三特設コーナーには、「新選組!!」山本土方の特大ポスターが! 公の場で「きゃーきゃー」とうろたえ、携帯でパチリと撮ったのがこれです。

タワー最上階は展望コーナーで、五稜郭の星形城塞がよく見える。車道や街中は除雪されているけれど、生活道路や民家の裏手は、このように雪が残っています。それでもタクシーの運転手さんによれば、暖かかった先週、だいぶ雪が融けたとのこと。タワーから下りて、五稜郭のなかを実際に歩く。地面の土が雪融け水でぬかるみ、靴がめりこむ。滑るう。星の外郭をつくる土塁にのぼり、軽く半周。土塁には桜が点々と植えられており、その季節にはさぞかしと思われる。あー、函館の高校生になりたい。部活帰りに花見デートしたい。そのとき初めて手を握りたい。
お堀の水は、一面ぴしっと氷だった。キビシイ環境にか、白い腹を見せて浮いた鯉が、そのままの格好で氷に閉じこめられている。それをカラスがつつく。これが生態系か!

次は函館山方面に移動。市電に乗って「十字街」で下車。函館は路面電車が走っていて、7〜10分間隔の運行でとても便利。函館山の元町付近は、急な坂道と石畳、点在する洋風建築と教会が異国情緒を誘い、歩いていて楽しい場所です。ちょっと雰囲気のある喫茶店や洋食屋さんもちらほらあって、時間があれば立ち寄りたかったけれど我慢がまん。五稜郭を満喫しすぎて、すでに時計は16:30をまわっている。急に気温もさがり、昼間の暖かさが嘘のよう。
掻き残しの雪に悩まされながら(足許が滑るのだ)急勾配の坂をのぼり、雪の残るハリストス正教会まで来た。日暮れ前のふしぎな明るさに照らされた函館市内と海が望めて、なんとも美しい。しばし見入る。と、5時を知らせる教会の鐘が響きわたった。応じて、港の船も警笛を鳴らす。こんな絵になる光景に自分がいるなんて〜。(寒いけど)

ハリストス正教会は、ロシアのニコライ神父が伝えたもので、なるほど屋根が丸みを帯びてロシアっぽい。ニコライといえば、東京湯島のニコライ聖堂ですな。どちらも同じ宗派。だいたい「正教」「正教会」とつくのは同じ宗派なのね。おおもとはギリシャ正教で、東西に分裂した東ローマ帝国(首都コンスタンティノープル)で栄えたもの。西ローマはラテン語圏でカトリック、東ローマはギリシャ文化圏の正教、と大ざっぱに考えれば簡単である。
その東ローマ皇帝の妹を嫁にもらい、ギリシャ正教に改宗したのが、キエフ公国(ロシアの原形国)のウラジーミル一世だ。それからロシアの国教は正教になったわけ。ゆえに、ロシアから日本に渡った「ハリストス」はギリシャ語読みで、キリストの意。ロシアは正教とともにビザンチン文化を享受し、ギリシャ文字からキリル文字を得た*1オスマン=トルコによる東ローマの滅亡後、正教を守るロシアは、東ローマの後継者たらんとする。東ローマ最後の皇帝の姪と結婚したイワン三世は、東ローマの紋章「双頭の鷲」を使用し、「ツァーリ (皇帝)」の称号を生み出した。(ハプスブルク家も同じ紋章。双頭の鷲、大人気)

函館山のロープウェーには暗くなってから行くことにして、ふもとの港側、赤レンガ倉庫街までぶらぶら巡りで歩く。倉庫街までは手のとどく距離、函館はどこでも散歩気分で歩ける街だ。途中、ガラス好きの同行者につられて「金森美術館バカラコレクション」に立ち寄った。ミニ・ミュージアムだが眼福である。1世紀前のクリスタルが、今出来のような輝きを放つ。何より館内は暖かい、って外は気温下がりまくりなのよ。「温かいものが飲みたいです〜」と直訴し、受付のお姉さんに、近場の喫茶店を訊く。「この辺は、閉まるのが早いので……」と案じ顔で教えてくれたのは、赤レンガ倉庫街にある喫茶店だった。そこも19:00には閉まるという。慌てて移動。あとから気づいたが、金森バカラ美術館と、金森赤レンガ倉庫は、同じ「金森」つながりだったのね。
18:00過ぎに赤レンガ倉庫に到着。館内のショップ構成は、修学旅行生が楽しみそうな感じ。お土産店のチェックは怠らず、一回りしてから喫茶「スナッフルズ」に入店。ものっそいケーキに魅かれたが、注文はカフェラテのみ。だって、来る途中に「函館地ビール はこだてビール」の文字が躍る、ビヤホールを見てしまったんですもの! 夕飯は寿司の予定を、あっさり地ビールに変更。「やっぱ地ビールでしょ!」「ビールビール!」と、カフェラテを手にしてうなずきあい、いそいそと夜景を片づけに席を発った。

しかし夜景は、簡単に片づけられるシロモノではなかった。ロープウェーで山頂に着いたのは19:30頃だが、何度見ても函館の夜景は美しい。函館と似ている町に「神戸」があると思っているが (海と山の接近した港町、異国情緒、開明的、こぢんまり感、石畳の坂道、洋風建築、夜景が有名)、神戸とちがうのは、函館の方が平べったく、美しさのなかに寂しさがあることだ。
神戸より広く海に囲まれた函館は、黒々とした海に点綴する光の珠だ。ビルと民家にあふれ、車のライトがひっきりなしに流れる神戸の夜景は暖かく、生活感があるが、函館のそれは、黒い海と地平が分かちがたく、しんと静かで、けなげである。寒さをおして、外の展望スペースから夜景を望む。か、風は冷たいけど、ガラス越しより、ナマで見るのが一番。暈をかぶった月が、煌々と輝いていた。
20:00、ロープウェーを下りて、再び赤レンガ倉庫街へ。函館ビヤホールの向かい、同じ地ビールの飲める「はこだて海鮮倶楽部」にした。はーもう、大正解! 函館に行く人は、ぜひ一度「はこだてビール」を飲んでみてください。すきっとした口当たりながら、芳醇な味わいのあるビールです。函館の地下水100%使用だそうで、それも影響しているのかしら。とにかくおいしい。基本は3種類、それと季節に応じての期間限定醸造ビールがそろってます。春が間近の今は「ダークエール」。これも甘すぎず、うんまーい。
「あまりお酒は……」という若い女性のためか、夜メニューなのに丼もの多数。サイドメニューの方が少ないかも。サイドメニューばっかり頼んだ我々のおすすめは「ほたて貝のバター醤油焼き」「甘海老の素揚げ」。ほたての肉は弾力に富む大型肉厚、黒肝も甘く、バターと醤油は香りづけ程度で、貝の味がばっちり楽しめます。パリッと揚がった甘海老を口に入れると、海老の甘い汁がじわっと広がり、頭から尻尾から食べられちゃう柔らかさ。もう一回食べたい……。イカ刺しも、もちろん新鮮で「うんまーい!」
大満足で宿に戻り、「時効警察」最終回。なんて幸せな1日。

*1:キリル文字については、「あき@」さんのHP「再大──Pereunivers」内、「キリル文字とは」の項で、とても分かりやすい解説がされております。
「再大──Pereunivers」http://home.hiroshima-u.ac.jp/reuni/
キリル文字とは」http://home.hiroshima-u.ac.jp/reuni/lang/cyril/cyril.html