俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

えぐい内容ですが……

しつこく「桜飛沫」追記。
第一幕に、最初すんなり入れなかったのは、間引きに過剰反応してしまったせいもあるかもしれない。昔、本で見た「間引き絵馬」を思い出してしまって……。芝居の中では、題材の一つといおうか、物語上の設定であり、そのこと自体がテーマではないのだけれど、それだけに複雑な気分だった。二度目の観劇では、そういう設定として受け入れられたんですが。
以下は、苦手な向きもいるかと思われるので、ご興味のある方だけ。「間引き絵馬」についてです。そのまんまですよ。

「間引き絵馬」とは、読んで字のごとく、間引いている最中を絵馬にしたものです。生んだ女性が、赤児を圧殺(口をふさぐ等)している場面で、赤児の口許からは魂のような吹き出しが、煙のように立ちのぼり、その先には観音菩薩がおわします。その足許に駆け寄る、赤児の魂。……というのが、基本的な図柄。
10代のころ、図書館から借りた本で、この絵馬のことを知りました。絵馬の写真が何点か載っていて、読めないまま返却したのを覚えてます。
下記のリンク先は、絵馬の画像です。どーんと出ます。サイズでかいです。強烈です。

間引き絵馬・1
利根町教育委員会」HPより、「町史・文化財」ページ。茨城県利根町、徳満寺所蔵。右上部分は落魄しているが、菩薩の足許だけは確認できる。障子に写った母親の影に、鬼の角が生えている。少年時代にこの絵馬を見た柳田国男は、大変な衝撃を受け、農政学を志したそうです。実際、彼は農商務省農務局に入局。この「間引き絵馬」は、彼の農政学とその後の民俗学、両方に影響を与えたようです。
【参考】柳田國男第2の故郷(「茨城県利根町ホームページ」より。ここにも間引き絵馬の画像があるので注意)

間引き絵馬・2
東毛歴史資料館」HPより。太田市、青蓮寺所蔵。

間引き絵馬・3
ふくしま教育総合ネットワーク」HPより、「ふくしま教育情報データベース」内「ふくしまの画像」ページ。福島県伊達町、福巌寺所蔵。圧殺する母親を止めようとする男性、男性の制止を押しとどめようとする身内。左手奥に描かれている観音菩薩を、先に生まれた兄弟が手を合わせて拝んでいる。「ふくしま教育情報データベース」内「郷土資料」の項での説明では、「福巌寺間引防止の図」とあり、「間引き・子返しを戒しめ教化した絵馬である」という。

間引きをいましめた図
仙台市博物館」HPより、「Jr.Kidsコーナ-」近世のページ。

最後にもうひとつだけ。一幕にあった徳市(医者)に対する揶揄で、「中条流の先生」があったかと思いますが、「中条流」というのは、江戸期、堕胎の医者を指したことばです。もともとは、産婦人科医術の一流派だったもの。