俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

変わった

阿佐ヶ谷スパイダース「桜飛沫 (しぶき)」第2回目、楽日

2/19 (日)、18:00開演、於・世田谷パブリックシアター。前回の休憩20分が15分に短縮されていた。本日は楽日だったのだけど、第1回目とはかなり変わった感想。
一幕の【蟒蛇如 (うわばみのごとく)】が、格段によくなっていたのです。この1週間に何があったの? というくらい、役者陣が底上げされてた。一幕に気を入れた分、二幕はちょっと、もたなかったところがある。どちらも間合いを詰めて、テンポアップされていたが、やっぱり二幕分は長い。長いことを忘れるまでには至らなかった。
前回は前寄りの思いきり上手、役者の表情は楽しめるが、斜め45度の角度で舞台の奥はセットに隠れる、そんな席だった。今回は最後尾から数えた方が早い真ん真ん中、役者は遠いが配置はばっちり。すでに話は頭の中に入っているし、引きで観る分、より客観的になれた気がする。やはりセンターはいい。
センターの見晴らしのよさで、上手寄りからは気づかなかったところ。
第一幕、ジャビラ茸で自殺しようとしたが死ねなかったお種が、徳市をくどく場面。必死にすがるお種の背に手を回した徳市が、背帯に挿されたジャビラ茸をそっと抜き取り、しかと彼女を抱きしめるのね。徳市はすべてを諒解したのだな。
第二幕、佐久間が「すみませんでした」と泣きじゃくる満月の夜。「満月」がね、上手からは建物のセットに隠れて見えませんでした。その建物(旅籠屋)二階の障子がやぶれて、さびれ具合を演出してたのも、単なる影だと思ってた。

一幕・二幕ともに、かなりテンポアップしていて、こまかく「間 (ま)」を詰めていた。一幕はそれが大きく貢献している。二幕は、間を詰めるのではなく、シーンを整理、間引いたほうがよかったのでは……。人数もまだ絞れると思う。反対に、「ここはもう少し、タメがあっても……」と思った箇所が2点ほど。
まず1点は、ならず者左京たち3人の首を、町人たちがサッカーよろしく、嬉しそうに蹴り合いっこする場面。「衆愚」。普通人のどうしようもなさを長々と見せつけてくれたのが、あっさりになって残念。マルセの「私も皆といっしょに狂ってしまえばよかったのよ!」という悲鳴が、より強く感じられたと思うので。
2点目は、終盤の冒頭、グズとマルセと佐久間の、3人だけになった宿場の静けさ。映画キャメラ長回しのような、緊張感のある絵だったのに、すぐに人がやってきちゃった。全体的には、間をツメツメして締まったんだけれども。
二幕は、富岡さん(福助)のセリフも一箇所、短くなっていた。蛾次郎が晒されたシーンで、「あと2人、左京と蛭間、3人の首で、皆で蹴り合いっこしたら楽しいだろうなあ。サッカー。サッカーしたい」→「この首でサッカーしたら楽しいだろうなあ」(どちらもうろ覚えだけれど、こんな感じ)

一幕がよくなっていたのは、役者陣のバランスが釣り合い、テンポアップにレベルアップが加わったからだろうか。水野美紀ちゃんを含めて、今回は満足。美紀ちゃんは、自分の役柄の見方を変えたら、地味なつくりも気にならなくなった。伊達ちんも、前回は「かわいいだけじゃなあ、雰囲気だけの人で終わり?」と、密かにひどいことを考えていたのに、ここにきてはまる。橋本じゅんさんも、より新感線くささが脱けて好ましい。前回は役者たちのパラパラ具合が気になったが、今回はみんなバチッと向き合っていているように感じた。いいね!

二幕で、演出が変わったのか、それとも自分の記憶ちがいなのか気になる箇所がある。ラスト、徳市が登場する場面だ。前回の記憶では、新兵衛が佐久間を討とうとするのを、「邪魔だ」と斬り捨て、新兵衛を助けようとしたヤマコも斬って殺したように見えたんだけれど、これは勘ちがい? 楽日では、突き飛ばした程度に見え、実際二人も生きていました。ヤマコが新兵衛にとりすがるのを、前回は斜め45度の角度で見まちがえたんだろうか。うーむ。
ところで、二幕最後といえば、徳市の悪役メイク(一幕とちがい、黒いアイシャドーを塗りたくって目つきを鋭く見せている)にウケました。笑うところとちがうのに。

【追記】
カーテンコールのことを書くの、忘れてた! 圭史は、楽日はちょっと遊ぶのね〜。3、4回のコールで、新感線風に登場してくれました。2、3人ずつ舞台中央から軽やかに登場、客席に礼をすると両端にハケて次の役者が出てくるのを待つ、その繰り返し。阿佐スパで、新感線カーテンコール流儀が見られるとは! 役者たちも照れてて、かっわいかったなあ。