俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

おそろしく辛口になってしまった……。

OJから八嶋・山崎さんへ楽屋見舞

久しぶりの丸ごと休み。文化の日に、お芝居を観てきた。
底光りのする曇天で、天気雨がたまに落ちる。出かける前に、掃除とアイロンがけ、買い出し。アイロンを何枚もかける。CDもかける。なんかほっとするなあ。本日のCDは「The Last 5 Years」と「chorus」。ぐずぐずと過ごし、新宿に出たのは開演直前。いつもこうして、デパート探検を逃すのだった。
写真は劇場ロビーに飾られていた、オダギリジョーから八嶋智人山崎樹範さんへの花。「楽屋見舞」とある籠に入った花で、上には「大入」と書かれたお札が貼られている。八嶋さんは「新選組!」、山崎樹範君は「天体観測」つながりね。山崎君にはなぜか、稲垣吾郎さんからも花が贈られていた。花というか、レモンの木の鉢植えで、黄色い果実が生っていた。何つながりかしらん。

カムカムミニキーナ旗揚げ15周年記念公演「越前牛乳」

作・演出:松村武
出演:松村武/八嶋智人山崎樹範/藤田記子/吉田晋一/佐藤恭子/今村佳岳/小島啓寿/市子嶋しのぶ/元尾裕介/亀岡孝洋/坊薗節子
客演:清水宏/松田かほり

11/3 (木・祝)、19:00、於・新宿シアターアプル。上演時間は2時間40分くらい。
カムカムは、1997年「源トライアングル」1998年「マントル無頼」以来。今回の「越前牛乳」は9年ぶりの再演で、これは昔、ビデオを借りて観た。「やっしゃんが、くるくる回ってる〜!」と、ハイジが有為転変、しか覚えてない。しかし、くるくる回る八嶋さんがおもしろかった記憶だけはあり、また今年8月「エドモンド」のがんばりに、なんとなくチケットを買った。ちなみに、9年前は「越前牛乳〜飲んでリヴィエラ」と、副題がついている。

結論からいうと、八嶋智人さんはよかった。しかし、公演としては「もういいや」。

八嶋さんは外部で客演を重ね、揉まれてきたぶん成長していると思う。他の役者がへこい分、言いっ放しのアドリブもハプニングも、拾う拾う。もれなく拾う。そして回る。
八嶋さんと、主宰の松村武さんとのボケツッコミ&どつき大会が、一番おもしろかった。この二人、奈良県出身で同級生なんです。遠慮のない跳び蹴りにハタき、八嶋さんの身ごなしのキレと軽やかさ。ほんっと、くるくる回るのよ。松村さんも回って、回って回って、回りすぎて目もまわしてた。
しかし、2時間40分は長い。
腰が痛くなっちゃった。一部をのぞき、大方の役者はへこいし、後半はつらかったなあ。話としても、マダム越中(こしなか)以降はいらないと思う。未来・過去・現在とつなげたいのは分かるけれど、だったら、もっと無駄を省くべき。まだ一幕あるのなら、大岡裁きのシーンを長々やる必要ないね。過去ビデオ鑑賞でも、マダム越中以降はすっぱり忘れていたわ。

シアターアプルは久しぶりだったのだけど、「狭い」と思った自分に驚いた。昔は好きな劇団がここに来ると、「アプル進出だー、すごーい」なんて喜んでいたのに。
いつのまにか、アプルが狭く感じるようになってしまった。まったく象徴的である。
つまり、それだけ大きい舞台を見慣れたということだ。お金はかかるけれども、役者も演出もハズレが少ない。衣裳も舞台美術も洗練されている。そんなグレードの高さが当り前になると、しょぼい舞台に耐えられなくなってしまうのね。


そう……カムカムが、どうしても、しょぼく見えてしまう。
金がかかればいい、というわけではなく、もっと小さな劇団でも、しっかりした美術は観られる。でも、なぜかカムカムのはもっさい。謝恩会みたいな舞台美術なんだもの。
松村さんは、広い舞台を使える伎倆はあると思うし、野田秀樹の影響を受けたと思しき話づくりは、世界観も大きい。スケールがある。才能はあるのだろう、と思う。
しかし (八嶋さんなど一部を除いて)、役者が、ついていけてない。カムカムを過去2回でやめたのも、役者陣の低調さが原因だったわ、そういえば。あまりにもつらい役者が多かったので、山崎樹範君とか、いたはずなのに覚えてないくらい (知人によると、山崎君も外部出演で成長したとのこと)。あの頃からレベル、ほとんど変わってないなー。役者がある程度そろっていないと、舞台は成り立たないよね。作品と役者の魅力、どちらも引き出せないまま、共倒れになることが多い。で、役者の出来がいつまでもアレだと、演出力にも疑問が及んでしまう。
(劇団員だけでは成立しない場合は「客演」。呼ぶなら、自分とこの劇団員よりレベルの高い役者さんを、無理してでも呼んだ方がいい。これは長くなるので、いずれまた改めて書きたいと思います)

要するに、「15年間やってきて、これかよ」という思いがぬぐえないわけ。
駆け出しの劇団や、5年前後のところならば「がんばってるね」だけれど、15年目でしょう? もうちょっと、どうにかなっててもいいじゃない。
「越前牛乳」は9年前の再演で、脚本はほとんど変えていないみたいだから、今現在の松村さんの作品世界はわからない。でも、役者レベルや演出に関して、自分が観た当時の印象から抜け出るものは、特になかった。一番おもしろかったのが八嶋さんと松村さんの掛け合い合戦というのは、前のときもそうだったし、第一、話の本筋に関係ないやね。
旗揚げ記念公演で、あえて9年前のままの形で再演したのだろうけれど、そこで劇団自体の成長を見せてほしかった。形は同じでも、演じ手の向上、演出の洗練がないと、再演の妙は出ないでしょう。見せられたのは、若さをひいた学生演劇でした。