俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

昼夕夜の3連ちゃん

デニムポケット。ショルダーにも

秋の行楽3連休、初日。芝居と講座と作品展の3連ちゃん。
午前中、ばたばたと家を出て、昼の12:30より劇団☆新感線吉原御免状」。オープニングアクトがすごい。ものすごい「絵」になってます。かっこいいなあ。新感線の「第二章」一発目として、いいスタートを切れたのではないでしょうか。よしあし含め、こまかい感想は後日。
劇場を出たあとは、趣味の講座へ。おつとめを果たしたあと、高円寺まで移動する。目当ては、友達のインディーズブランド「工房DAISHI」が、カフェ兼ギャラリーのスペースを借りて行なっている作品展である。
テーマは「アバウトドア」。インドア派のアウトドアなんである。

工房DAISHI 秋の文化祭「AB OUTDOOR (アバウトドア)」
2005年9月6日(火)〜18日(日)
高円寺のカフェ「HATTIFNATT (ハティフナット)」にて開催

※詳しくは下記URLへ
 工房DAISHIのHP http://members.jcom.home.ne.jp/kbd/
 工房DAISHIの作品が買える雑貨店「Too-ticki」HP http://www.too-ticki.com/
 →2007年12月現在、「Too-ticki」等での店売はなくなったようです

会場のカフェ「HATTIFNATT」は、雑貨店「Too-ticki」の姉妹店。こぢんまりした店のドアを開けると、すぐそこ、右手の展示スペースに工房DAISHIの作品がディスプレイされている。わーわー言いながら手にとって見た。ひとしきり騒いだあと、2階のカフェでごはん。カフェのスペースにも、工房DAISHIの作品が展示されている。写真は、その一つで「デニムポケット」。よーく見ると、飾りのドングリは、中身は本物だけど、カサの部分はフエルトっぽい布なのね。こまかい! ぬくい! これ、同行の友達が気がついて教えてくれました。
こうしたギャラリー・スペースは、空間が広く使えるのがいいですね。店の空気をこわさずに利用し、ゆったりと編まれた作品群。おちゃめな作品紹介のタグも下がっていて、しゃれが利いてる。
店のメニューも、おいしそうなものばかり。で、実際においしかった。大満足。
出てくる飲物のコースターや、ドリアの鍋敷き、ナイフやフォークを入れる籐製箱の下敷きも、工房DAISHIの作品。商品として売られているものを実際に使用し、楽しむことができます。
着いたのが20:30過ぎと遅かったので、メンバーの友達は帰っただろうなと思っていたら、ラッキーなことに一人と会えた。自分たちの作品への愛情を感じた。作品展終了まであと1日。がんばれ〜。

新感線「吉原御免状

原作 隆慶一郎/脚本 中島かずき
演出 いのうえひでのり
出演
堤 真一 松雪泰子 古田新太京野ことみ 梶原 善/橋本じゅん 高田聖子 粟根まこと藤村俊二

逆木圭一郎/右近健一/河野まさと/村木よし子/インディ高橋/山本カナコ
礒野慎吾/吉田メタル/中谷さとみ/保坂エマ/村木 仁/川原正嗣/前田 悟/二木奈緒
田畑亜弥金子さやか/鶴水ルイ/熊本梨沙/鈴木かすみ長谷川静香
武田みゆき/中間千草/仲里安也美/嶌村織里江/横山一敏/藤家 剛/武田浩二
佐治康志/矢部敬三/三住敦洋/富永研司/吉田和宏

9/17 (土)、12:30開演、於・青山劇場。休憩1回を挟み、3時間の上演。
新感線、初の原作小説モノだ。原作モノは、高橋留美子の漫画「犬夜叉」舞台化が先行しているけれど、今回はがっつり活字。急逝が惜しまれた隆慶一郎の、同名デビュー作である。隆さんの作品は何作か読んでおり、この「御免状」シリーズも既読なので、どう舞台化するのか楽しみだった。
演出家のいのうえひでのりさんが“大人の新感線になる”と、しつこく言っていた「いのうえ歌舞伎、第二章」の第一弾でもある。楽しみでもあり、不安でもあり。サイコロの目はどう出たのか、観てきました。

不安は杞憂に終わった。よかったですよー「御免状」。
オープニングアクト、タイトルバックのあたりは、もうこれだけでいい、と思わせられるくらい素晴らしい絵作り。「吉原御免状」というタイトルにぴったりの、豪華絢爛さ。大道具、舞台美術、回り舞台、かなり歌舞伎を取り入れている。回り舞台の使い方は、ちょっと「レ・ミゼラブル」が思い出された。空間・奥行を使い倒してやる、そんな印象を受けました。

「いのうえ歌舞伎、第二章」で不安だったのは、いのうえさんが、今までの新感線を否定するような物言いをしていたこと。笑い・歌・踊りがごたまぜだった過去と訣別し、「より物語性を重視し、シンプルで大人な舞台にしたい」と言っていたのが、どうも引っかかったのです。物語性重視はいいのだけれど、なんでもありのごった煮感が、新感線の魅力だったのに……。シンプルすぎて単にかっこいいだけの芝居、ツルツルして、引っかかりがなかったらいやだなあ、と思い思い、来たけれど、新感線はやっぱり「新感線」でした。よかったー!
今回、笑いは一切ない、と思っていたが、そんなことはなかった。ぐっと控えめではあるけれど、これからも笑いを「捨てる」ことはなさそうで (笑いを捨てる新感線なんて!)、まずは一安心。*1

配役は、よくはまっていた。第一番は、松雪泰子の勝山大夫。特に、休憩後の第二部からは目が離せなくなる。昨年の「夜叉ヶ池」のお姫様より、断然いい。(「夜叉ヶ池」は、全体的にぬるい進行だったため、くらべるのはかわいそうだが)
個人的に懸案の、堤真一の松永誠四郎も、思いのほか合っていた。堤さんの陽性なキャラクターが、誠四郎の純粋な無邪気さをよく出している。実は自分、堤さんがまったく「圏外の人」なんですよ。いい役者さんなんだろうな、とは思っても、ぜんぜん胸が騒がないの。巷では評価の高い、「アテルイ」の坂上田村麻呂*2ですら、「ふーん」の一言でかたづけたほど、ヒットポイントがない。つまり、タイプじゃない。そんなわたくしが、初めて堤さんを「いいんじゃない?」と思いました。これはすごい。

中島かずきさんの脚本も、原作をよく消化してまとめていたと思う。あの話も入れたんだ、このエピソードはこう来たかと、舞台の進行を、原作の思い出で補完しながら観ていた。舞台の軸に、勝山と誠四郎の恋を据えたため、わりを食ったのが、京野ことみの高尾大夫。舞台だと、アレ用としか思えん役柄だが、原作はもっと比重が高い人物なんです。原作の高尾は、もっと気が勝ってますよ。個人的な原作イメージだと、勝山とは違ったタイプの妖艶な美女なんだが、ことみちゃんは童顔だしなあ。松雪さんの勝山と対比するため、とはいえ。
幻斎役の藤村俊二おひょいさん)は、雰囲気はぴったり。ぴったりだけど、噛む。セリフをとちる。忘れる。自信がないからもごもご言う。何言ってるか分からない。多分、セリフが入ってないのだろう、物言いに説得力がない。説明セリフはお付の若い者に任せて、おひょいさんは、最後のおいしい決めセリフだけ言ってくれればいいのに (暴言)。いや、雰囲気はぴったりなんですよ? 次に観るとき、もう少しよくなっているといいなあ。
今回、数少ないお笑いを担当した、梶原善ちゃんの水野も、できればもう少し、かぶいてほしかった。「傾ぶき者」たる水野の衣裳が、割と普通なのが不満です。

最後に告白。
古田新太さんが、義仙で登場したとき、ボンバーちょんまげと上着のトラやき文様を観て、「レッツゴー!忍法帖」を思い出してしあった。シリアスな場面なのに、古田さんを観ると、脳内は「レッツゴー!」。シリアスな場面なのに「レツゴー」て。もしくは、自雷也っぽいなーとも思った。
でも、堤さんの誠四郎と対決するときの殺陣は、きれいだった。堤さんも、さすがJAC

堤さんの誠四郎だけれど、欲をいうなら、もう少し「悩み」も出せるようになるといいな。ネタバレになるけれど、出生の秘密が明された場面。原作では、誠四郎が「捨てられたわけじゃなかった!」と、何度もくりかえす。彼の心中、親に捨てられたという思い込みが、かなりの陰を落としていたのがわかるのだけれど、ちょっと舞台だと割り切りが早いんだよなー。それと舞台の一番最後、誠四郎の放心したつぶやきは、もっと重みが出るといいかと。この2点は、時間的な制約と物語の進行上、説明不足になるのもしかたがないのですが。むずかしいなあ。他にもいろいろあるけれども、このたびはここで退出いたします。……

*1:ときどき、新感線はギャグがしつこいことがある。それが多少整理されるのであれば、一般客には馴染みやすいかもしれない。

*2:アテルイ」松竹×新感線で、新橋演舞場2002年8月公演。東北、蝦夷の長・アテルイと、彼を征伐する坂上田村麻呂の物語。アテルイ市川染五郎、田村麻呂に堤真一。田村麻呂は、一見ちゃらんぽらんだけれど、実はオトナのわけ知り男。