俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

初見

音楽劇「コーカサスの白墨の輪

2/11 (金・祝)、14:00、於・世田谷パブリックシアター。休憩15分を含み、上演時間は3時間25分。
演出と出演、串田和美。出演、松たか子谷原章介毬谷友子。外国人俳優も多数。
串田さんといえば吉田日出子自由劇場上海バンスキング」、つっても観たことなし。串田演出、初体験です。他の役者さんたちも、ナマではみんな初見。昨年の大河つながり(谷原章介 as 伊東甲子太郎)で、新しい風が吹いてきたよ。

原作はブレヒト、物語の舞台はグルジア黒海カスピ海に挟まれたコーカサスカフカス)地方の一国で、旧ソ連から1991年に独立した国家だ。中央アジアの端に位置する。そんな民族色を取り入れた音楽と衣裳。衣裳が、とてもよい。ガーゼのような、麻のような材質で、くたっと柔らかく、粗く素朴である。刺繍の縫い取りや、小道具のポシェットなどもすてき。あんな服ほしいな、と思っていたら、ワダエミでした。贅沢な舞台だー。
音楽は生演奏で、基本の楽隊3名ほどに加え、役者たちが鉦をたたいたりチェロを弾いたり。思ったよりも歌は少なかった。「音楽劇」というほどではないかも。ただ、ナマ音、ナマ歌の波動は強いです。音楽と舞台の進行を司る、あさひ7オユキさんのおじいがいい味出してました。
役者陣は、よかった。串田さんはうまい。毬谷友子さんには圧倒された。舞台の途中、赤ん坊の声を毬谷さんがあてているのだが、あまりにあっていて、この世の声に聞こえないのね。この女優さんの底知れなさを見せられた気分。凄いわ。
松たか子さんは、身軽くしなやかで、体の柔らかい子だった。舞台で映えるし、目立つ。カンのよさそうな人。深津絵里と発声が似てた。
谷原さんも好演。TVでよく見る役柄とは全くちがっており、顔だけじゃなくてよかった……と、大変失礼なことを思ってしまった。ただ、串田さんのアズダックと松たか子のグルシャが話の中心で、毬谷さんは出番が少ないながらもしっかり印象づけるのに対して、谷原さんはやや弱いかな……。出番も多くないし、毬谷さんが凄すぎるのだろうけれど。

今回の舞台はすり鉢状、すなわち円形。すり鉢の一番底が舞台で、そこから放射線状に客席がのびる。すり鉢の底から客席まで仕切りがなく、いつのまにか地続きにつながっている風。心理的にも距離的にも、舞台と客席は近い。その近しさを利用して、観客参加の場面を串田さんは設けた。わたしも、その「場」の端っこに参加したけれど、楽しかったな。舞台から見える風景がとても新鮮で、一体感がありました。
いったんハケた役者たちは、舞台の外周に腰をおろして、客とともにサークルをなす。外周にいる間も、楽器を鳴らしたり小芝居をしたり、ときには一介の観客となって舞台を眺める。演じ手と観じ手の別が曖昧で、なんだか祭りの輪の中にいるよう。今回の串田演出には祝祭的なものを感じました。あと、物語の普遍化。
惜しむらくは、外国人俳優さんたちの口舌が、外国なまりの日本語で聞き取りづらかったこと。それに3時間強の上演時間は、やっぱり長い。グルジアの歴史を知らないと、分からなそうな部分もあったし。ところで、ドイツ人のブレヒトが、なぜグルジア? 謎だ。