俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

立ち見客もいました

NODA・MAP走れメルス 〜少女の唇からはダイナマイト!」

1/23 (日)、19:00、於・Bunkamura シアターコクーン。上演時間は1時間45分。
野田芝居は、かなーり久しぶり。「夢の遊民社」時代は知らないし、野田地図になってから「贋作・罪と罰」「贋作・桜の森の満開の下」を観ただけ。
ファースト・コンタクトの「贋作・罪と罰」は、どうして役者がむやみやたらに走り回るのか面妖で、「野田さんはわからん」と思った記憶がある。当時は芝居を観始めたころで、己の許容量もひくかったのでした。新感線すら、最初は「どうして女子がSF・SMな布面積の少ない衣裳で、意味もなく出てきて女豹のように踊りくねるのか、さっぱりわからん」「音響絞れ」と思ってたからね。それが今や、大阪まで行っちゃうからね。

で、野田さんだ。チケットの感動的なまでのとれなさ*1に、行く気すらなくなっていたところ、中村勘太郎くん(おなじみ「新選組!藤堂平助役)が出演の報せ。そりゃ行きますよ!

走れメルス」は夢の遊民社時代のもので、初期の代表作。初演は1976年・劇団の第2回公演と、若い時分の作品だ。70年代から活動してたんかー。すごいなあ。
今回の舞台は、今まで観た野田芝居(といっても2本だけど)と、ちがっていた。
素直に観られた。いや、芝居のセリフやしぐさが、素直に入ってきた、というべきか。過剰な熱さが、まっすぐに射ぬく感じ。
今まで観たNODA・MAPは、物語世界が大作なのはいいんだけれど、立派すぎて、どこかツルツルした印象だった。きれいに落とされて、かえって引っ掛かりが少ないの。
それが今回は、ザラっとしている。ざらつきの余計なでこぼこが摩擦を起こし、熱となって心を焦がす。
パンフレットを読むと、野田さんも素直な心持ちで演出したらしい。だからだろうか、この芝居のストレートな熱情が素直に伝わってきて、物語に入りこませた。

勘太郎くんは、実は最初は心配していたのだけど、がんばってました。さすが歌舞伎役者、身体能力が高い。段田安則さんがやった役だそうだけど、冴えない鬱屈した部分を目立たせるなら、段田さんの方が適役かもしれない (勘太郎くんはキレイだから)。要領が悪く純情な点は、勘太郎くんが映えるでしょう。
古田さんは、モテ役より、こういう役のほうが今は似合う。いい迫力です。メルス役の河原雅彦さんが意外に(失礼)よかった。観ている最中は、“こちら側”である深津絵里×勘太郎に目がいってたけれど、“向こう岸”である小西真奈美×河原雅彦がなんであったのか、後から気になる。深津絵里の“向こう岸”にひそむ小西真奈美が、逃げた花嫁であるということは?……イヤ本当に、いろいろな物語が紡げます。
野田地図より、遊民社の方がすきかも、と思った夜。その後、恵比寿に足をのばし、山本耕史おすすめのお店「京Restaurant/Ubcra」で交歓会。

*1:松尾スズキさんが出た「パンドラの鐘」「農業少女」瞬殺の思い出……。プレイガイドの一番先頭に並んでとれなかったのは、野田さんが初めてだーよ。