俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

最後の再放送、初めての舞台

13:05、ブランチをこの時間に間に合うように食べ、掃除はほっぽっといて、TVの前に陣取る。大河の最終回、再放送。…………同じポイントで泣くんだなあ。笑うんだなあ。やられるんだなあ。大河関連のblogやBBSで指摘されていた、隠しポイント(例:首のないお地蔵さん)も確認。勇の最後のセリフに閃く刀、一転して黒地に白く「完」の文字。ハイここで大きくしゃくりあげます。一呼吸おいて「ら〜ら〜ら〜らららら〜♪」、大河のテーマ曲とともに過去の名シーンが……うっうっうっ(嗚咽)。ぢーん。は〜……。
何度観てもすばらしい、“奇蹟の大河”と呼ばせていただきます。脚本配役めぐりあわせ、すべてが奇蹟。天の配剤。リアルタイムで視聴できて幸せ。

と、18:00をまわったのにまだ大河ですか (長いな!)。気持ちを切り替えて日比谷の日生劇場です。有楽町駅からしゃかりきに歩く。信号待ちで、背後にいたお姉さん4〜5人グループの話し声が聞こえてきた。「新選組がさ、……」「やっぱ観るよね〜」「きゃきゃきゃ」
あなた方、同志ですか!?
そう、本日の演目は世界のニナガワ演出、藤原竜也のロミオなのだ。総司ぃー!(長いな!)

TBS・ホリプロ主催「ロミオとジュリエット

12/18 (土)、18:30開演、於・日生劇場

 演出:蜷川幸雄
 ロミオ:藤原竜也、ジュリエット:鈴木杏
 1部 18:30~19:50
 休憩 15分
 2部 20:05~21:35


初ニナガワ、そして舞台を観るのは初フジワラの竜也くんです。ジュリエット役は、「アオドクロ」で演技力は実証済みの鈴木杏ちゃん。二人のロミジュリを一言でいうと、「熱演」。
杏ちゃんは17歳、藤原くんは22歳。若い二人の、疾走感あふれる舞台でした。シェイクスピア劇を、真っ向から観るのも初めてだけれど、いやーすごいね! 超絶長いセリフ量。1階から3階まで組まれたセットを走り回り、飛び降り、時にはよじ登りながら、おっそろしいカツゼツのよさで、セリフを一気に吐く藤原くんと杏ちゃん。藤原くんは、せつない表情がうまい。杏ちゃんは、セリフが少し浮くときもあったけれど、人形を抱いた少女から恋を知った女性になる変化が、ちゃんと出ていたと思う。

マキューシオ役の高橋洋さんが、目をひいた。親友の藤原ロミオとは、「女オンナー」って言ってる高校男子のノリ。マキューシオのロミオに対する執着が、観ていてどこか引っかかったのだけど、どうやらマキューシオはロミオに、恋情に似た感情があった、という解釈のもよう。
敵対グループとの抗争中、女(ジュリエット)に目がくらんだロミオは「コイツ彼女の親戚だしなー」と腰弱になり、マキューシオは殺され損となる。ここの恨み節がすごい。
「お前がとめた剣の下から、俺は刺されたんだ」と、ロミオの変節をなじるマキューシオ。「俺をこんな目にあわせた、お前たちモンタギュー・キャピュレット両家が憎い」と、彼は何度もくりかえす。自分を捨て女をとったロミオ、自分からロミオを奪ったジュリエットへの、まるで呪いのようだ。馬鹿をみた自分を嗤うように、彼は自ら舞台袖に引きあげ身を隠す。と、袖から仲間が走り出、「マキューシオが今、死んだ!」
ここから、ロミオとジュリエットの本当の悲劇が始まる。

モノクロ・黒枠にふちどられた若い男女の顔写真が、天井まで覆いつくすセット。若者の遺影にびっしりと囲まれたなかで、恋人たちはただ一夜を過ごし、地下の霊廟で毒をあおぐ。現代風の衣裳には、目新しさは感じなかったけれど、こういう発想はすごい。このへんが、世界のニナガワなんでしょうか。69歳ですよ? 大変なエネルギーだよね。
主役二人の熱い演技に、正直「そこまでやらんでも」と思ったが、これも“若さ”の表現なのかしら。なにしろ“5日間の恋”ですから。

最後にわき道。シェイクスピア劇と歌舞伎は、似ている気がする。上演時間の長さ、冗漫な場面、古めかしいセリフ。ほどよく取り入れられた時事ネタ。今だと余分に思えるシーンも、観客のお楽しみで、急くことなく気楽に面白がっていたのだろう。今は芸術、昔は娯楽。現代まで続いたのは、娯楽のなかに、人間の業がひそんでいたから、かしらん。