俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

初見、本谷有希子

土曜、晴れ。明日は曇で雨ふるやもしれず、朝から洗濯、布団干し、掃除、ビデオの消化(といっても1時間だけど)で、ブランチは13時。ただのお昼と化す。
取りこんだ布団に倒れて感触を楽しんでから、趣味の講座へ。んでもって、青山円形劇場まで小走り。

劇団、本谷有希子腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

前々から名前だけは見て気になってはおり、しかし仕事その他でいそがしくスルーしていたところ、チラシの絵が山本直樹で、e+から公演案内メールも来着、さらに本屋で見かけた「群像」の表紙に大きく
本谷有希子腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』」小説270枚
の文字が躍っていたのがトドメで、急に観に行く! と思い、当日券の列にならんだわけだ。こういうのって久しぶり。当日券売りは開場の1時間前で、糸が列にならんですぐ、販売が始まった。
11/13 (土)、19:00、於・青山円形劇場。円形劇場も久しぶり。ここ最近、大きな劇場でしか芝居を観ていないので、舞台との近さがうれしい。実際、よく見えました。
内容は、好みです。こういう、身内のどうしようもなさ、逃げられない錯覚とか、割と好きみたい。暗いなー、俺。
キャスティングもよかった。肉体って雄弁だね。スミカ役の森尾舞さんが美しいくずれかたをしてる。そしてシンジ役の伊達暁さん! かっこよかった……つくづくかっこよかった。役柄はヘタレなんですけどね。というか、伊達さんがカコよく見えるのって、アリですか? 初めて彼をチラシで見たとき「カコイー」と言ったら、「え、伊達ちんがカコイー?」と、思いっきり反語で返されたことが忘れられません。その後、「はたらくおとこ」「真昼のビッチ」と生身の伊達さんを見、別にカコイーお顔、というわけでもないなあ(失礼)と、納得していたのだけど、今回の伊達さんはカコイー。かっこいいよ。つなぎの衣裳が男前度・当社比UPなんだろうか。でも、なんか好きだわ。

気になった点をあげると、最後のキヨ→スミカでは、あんなにセリフで解説してあげなくてもいいかな。手がかりだけ出しといて、観客が類推する方が好きなもんで。「お姉ちゃんの存在は、お兄ちゃんには……だったんじゃないかな」というのも、それだけだと、シンジがいいひとっぽくなる気がする。
以下ネタバレ含みますが、シンジがスミカを呼び寄せたのは、忘れられなかった、というのもあると思うんですよ。仕送り問題や世間体、というのは無意識の言い訳で、深層下では、あいつは今どうしているか、気になってて、ちょっとしたい気が残ってたんでないかと。でもそれはそれ、これはこれで罪悪感もあるわけ。だから抜け毛になって、スミカにびくびくして、でも追い出せなくて、マチコには甘えと愛情がないまぜで、やっぱり抜け毛になって。なんじゃないかと思う。ヨシオ役の菅原永二さんが「こういうのはいやですね〜」と言ったがその通り、一歩この家から出れば、やめていいことなのに、中にいるとそれが分からず自縄自縛……それが、この3兄妹なんだろう。その縄目から、キヨは最後に飛び立った。