俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

異業種参入はむずかしい

きのうの金曜だけ出社して、すぐに土曜。あまりに充実した夏季休暇だったもので、まだ俗世間に対応できてません。今日もぼーっとしてます。
しかし入れた予定は待ってくれない。本日はPARCO劇場なり。

PARCO劇場「夜叉ケ池」

10/16(土)18:00、於・PARCO劇場。上演時間125分、休憩なし。
今回のウリは、豪華でマニアなキャスティング。

 演出=三池崇史(映画監督。「着信アリ」「ゼブラーマン」等)
 脚色=長塚圭史(演劇ユニット「阿佐ケ谷スパイダース」主宰)
 美術=会田誠現代美術家
 出演=武田真治松雪泰子松田龍平田畑智子(松雪・松田は初舞台)、ほか

糸のお目当ては、なんといっても龍平くん。やっぱり生で観たいじゃないですかっ! 美術の会田さんも、どんなものを見せてくれるか気になるし、映画監督が舞台をどうさばくのか、(不安ながらも) 見てみたい。役者陣では、きたろうや遠藤憲一萩原聖人も出るし、脇もよさそう。さてどんな目が出るか?

……うーん。期待ほどではなかった。
場面転換が弱い。圭史の脚本の、ぬるーいギャグがおもんない。つまらんものをぐだぐだやるな、先へ進まんかいっ。同行者は寝てたぞ。
ぐだぐだ感をパワーアップさせてしまったのが、演出ですね。どんな場面でも、いちいちタメをつくるのはやめてください。単なるつなぎ、くすぐりで、さらっと流せばいいものですら、タメる。ゆえにダレる。同行者は寝る。糸は(巻いて巻いて!)と焦る。
この無駄なタメって、映画の感覚ですね。映像で撮る分には、タメは生きると思うんですよ。一拍の間とか、画面の奥行きとか、深みが出ますからね。フィルム編集で、いい感じにできるし。
でも舞台はナマモノなの、編集はきかないの。どうでもいいシーンすら、いちいちタメられるんじゃあ、あくびが出んのよ。タメるんなら、ここはちゃっちゃと行って、先の見せ場でたっぷりやろうよ。映画の手法を舞台に持ってきても、だめなんだなあとため息が出ました。
会田さんの舞台美術も、割と普通。もっと何かあると思ってたんだけど。川筋の上流、岸辺の奈落をどう使うのかと思ったら、スモークを下からたいて立体感を出すだけだった。ごめんなさい、きびしすぎます? 維新派観たあとだからさ。赤い灯りは綺麗でしたよ。
衣裳は堂本教子さん。魚の化身たちの、赤いうろこの衣裳がちょっとよかった。

役者陣は、みんなよかった。題材からして重厚にしようと思ったのか、セリフ回しにちょっと小津調入っていた気がします。夜叉ケ池の主の姫・松雪泰子は、ほんとに綺麗! この世の者ではない感じを、美で示しています。村一番の美女役・田畑智子は清楚ではあるのだけど……カワイイ系の方なので、原作ベースの「夢幻的な絶世の美女」とはイメージちがったかな。でも、けなげで必死なさまは、よく出てました。
松田龍平くんはカッコよかった! けっこう背が高くて、びっくり。存在感のあるひとだわ〜。脇では、遠藤憲一さんがやっぱりうまい。きたろうさんも、うさんくさくていいね。

【追記】
UPの際に、文章をまちがって一部削除してしまったもよう。つけたします。
涼平丹波哲郎の侍女・乳母おもしろかったよ。
圭史の脚本は、もともとぬるいギャグが多い(と個人的に思う)んですが、後半の破綻と結末への収斂に、それが生きてくるんですね。しかし今回は「原作ありき」なので、ぬるさをうまく使えなかったのだと思います。演出を圭史自身がやれば、また別だったのかもしれないけれど。
三池監督の演出も、絵画的な感じがハマる場面はちゃんとあります。ただ、全編そういう調子でやられると寝ちゃうよ、という話。最後、人間どもの醜さ全開のところは、タメがよかったところでもあるし。
脚本と演出に、一部ミスマッチのきらいはあるけれども、役者が健闘しており、まあこんなものですかね。一言でいうと、今回の舞台は「企画モノ」ですね。さんざん辛口書きましたが、それは期待が大きかったため。全体でいえば、まあ悪くはない、のかも。