色に出りけり

夜の社内。一人減り二人去り、ぽつねんと糸と上司だけになる。さて帰ろうと思うが、上司の仕事は終わる気配がない。手伝える内容でもないし、申し訳ないと思いつつ、声をかけた。
「あの、すみません〜。じつは、今日はこれで帰らせていただきます」
「え？」と、一瞬びっくりしたような目をした上司は、次の瞬間笑い出した。
「なんだ、帰るのね。うれしそうに言うから、何事かと思っちゃった」
え、と糸が問い返す番だった。
おかしい。ひっそり声で申し訳なさをにじみ出したつもりだったのに……。どうやら、「申し訳ない」気持ちよりも、「ヤター！ 帰る帰るカエルー」の無意識の方が、声に反映していたようだ。もー、わかりやすっ。つくづく嘘のつけないタチである。
で、「お先にどうぞどうぞ」と笑顔で送り出されました。ほんと申し訳ないッス。

写真は、土曜夕方の繁華街路地。街灯がついているけど、まだ明るいです。こんな時間に帰って、そぞろ歩きてぇー。いい季節だよね。