俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

「2001年宇宙の旅」70ミリフィルム版

製作50周年記念 『2001年宇宙の旅』70mm版特別上映 | 国立映画アーカイブ
スタンリー・キューブリック監督の映画「2001年宇宙の旅」が、製作50周年を記念して、70ミリフィルム版で上映されました。
この70ミリフィルム版のどこが凄いかというと、クリストファー・ノーラン監督とワーナー・ブラザースの監修によって「オリジナル・カメラネガからデジタル処理を介さずに作成」されたものであることです。1968年の公開当時と同じ6チャンネルサウンドで、上映前の前奏曲、休憩時の音楽、終映時の音楽までを再現。オリジナルにあるフィルムの傷まで、敢えて消さず、公開当時そのままであることを目指したニュープリントなんです。

ただ、この70ミリフィルム、日本国内で上映できる施設はただ1箇所、京橋にある「国立映画アーカイブ(旧フィルムセンター)」だけなんですよ。この70ミリフィルム版はワーナー・ブラザーズから貸し出されたもので、日本上映後に他国を回るのと、日本で70ミリフィルムを上映できる映写技師も限られるため、国内での公開は10月6日、7日、11日、12日、13日、14日の計6日間。さらに1日あたり2回が限度で、合計12回の上映になります。私は会社の先輩と2人で、この激戦チケットをもぎとり、最終回の上映を観に来ました。
2001年宇宙の旅」は公開当時、70ミリフィルムで「シネラマ」劇場での上映でした。シネラマもすごいですね、両端が湾曲した横長の大スクリーンで、人間の視野を意識した作りらしいですよ。シネラマを見られる劇場も、今の日本ではすべて廃館になりました。
実は私、「2001年」を観るのは初めてなんです。今回の「国立映画アーカイブ」での上映は、シネラマの大画面とはほど遠い小さなスクリーンでしたが、いやもうすごかった! これが今から50年前の、1968年公開の映画とは信じられないスタイリッシュさです。CGなどない60年代に、ここまでリアルな宇宙船の映像をよく作れたものだと、感心を通り越して空恐ろしかったですね。アニメかと思ったら、全部特撮ですって。だからか、妙なリアリティは! どんな精巧なSFXでも出せない、実物のリアル感があるのです。

最初のヒトザルのパートは、初見の自分にはやや長かったけれど、とにかく映像の迫力と見せ方に圧倒されるので、最後まで見入りました。すべてのSF映画の祖と言われるのも納得だわあ。哲学的な内容であり、AIがもてはやされる現代に通じる「機械と人間」の問題を先取りする慧眼があり、いやもう、すごかったです。
21世紀の現代から見ると、昔の映画の「近未来予想図」が微笑ましくなる場面もありますが、すべてのセット、すべての画面に手抜きがなく、細部まで作り込まれているので「時代遅れ」とは感じないんですね。これってすごくないですか? さっきから「すごい」しか書いてないけど、それしか言葉がない。すごい映画でした。
デジタルではない、フィルムで観られたのも最高でした。フィルムの手触りってありますよね〜。フィルムの、めりはりのある立体感が好きです。ざらついて見えても、のっぺりとはしていないの。
上映の前に、劇場の方かな、今回の特別上映についての説明と、12回しか上映できないお詫びを何度もされました。でも、もともとの貸し出し日数が限られているのと、映写技師さんたちの身体的負担を考えると、これ以上の上映は安全を考えると無理だったとか。
『2001年宇宙の旅』70mm上映はどう実現した? 国立映画アーカイブに聞く、その背景と役割
終映後、自然なかたちで観客から拍手が沸き起こりました。フィルム万歳! 技師さんたちにも感謝!

いやあ、2人で観に行ってよかったです。観終わったあと、自分の考えを整理したいのと、他の人はどう解釈したのかも聞きたくなりますね。居酒屋に場所を移して、楽しく語り通しました。