俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

吉祥寺にて

「あまちゃん」つながり!

葛河思潮社「冒した者」@吉祥寺シアター

覚えていないくらい数年ぶりに、吉祥寺へ出向きました。
観劇のためですが、行く前までは「吉祥寺でオサレカフェ!」と思っていたのに、結局ギリコの時間で、街歩きもできない体たらく。悔しいから帰りに喫茶店に寄ったら、なんか高かった。私にはやっぱり無理せず、池袋界隈がお似合いだわと思ったです。

【脚本】三好十郎
【演出】長塚圭史
【出演】
田中哲司 松田龍平 松雪泰子 長塚圭史
江口のりこ 尾上寛之 桑原裕子 木下あかり 中村まこと 吉見一豊

9/29(日)14:00開演、於・吉祥寺シアター。上演時間は2幕で約3時間、休憩15分。
「葛河思潮社」は、阿佐ヶ谷スパイダース長塚圭史の、ソロ・ユニットのようなもの。えーと確か、古い戯曲でもいいものは上演しよう、というコンセプトだったような気が (うろ覚え)。でも、今まで三好十郎の芝居しか上演してないですけどね。
第1〜2回公演(初演・再演)の「浮標(ぶい)」は観ていないのだけれど、同じ三好十郎作品としては、スズカツ演出で圭史が出演した「胎内」(id:orenade:20051023#p1) を観ました。そちらが面白かったので、今回チケットを取ったのです。松田龍平の、久しぶりの舞台でもあるし!(笑)

まず驚くのは、独白の多さ。セリフ量が半端じゃないです。主役といっていい(狂言回しもつとめる)田中哲司さん、覚えるの大変だったろうなあ……。終盤の独白部分は、熱が入りすぎてほとんど叫んでいたようなもん。それでも、さすがだなと思うのは、叫ぼうが囁こうが、セリフがちゃんと聞きとれるところ。
作品舞台は、日本の敗戦から数年後、朝鮮戦争が起こらんとする頃。英語が話せることから進駐軍に出入りしてオンリーとなった女性、広島で被爆した少女、理想家肌の医師とクリスチャンの妻、左翼活動に傾倒する学生。没落した家の娘 (私生児) と彼女をめぐる男たち、愛妻を病で亡くした劇作家の男。
彼らが暮らす屋敷に元演劇青年がふらりと現れ、彼の出現を機に、それぞれの人間の心の沈殿が曝されていきます。と同時に、敗戦後の日本の混乱、価値観の転換と反転――何を忘れ、置き去りにし、見ないふりをしていたのか浮かび上がる仕掛けで、イマドキの演劇にはないド直球です。そして多層的。
すごく真面目なんですよ、脚本が。その真面目さと、ここまで長い独白を書いてまで訴えたい情熱が、なんというか……すごい。



脚本が古い作品なので、言葉遣いも古めかしいです。昔の銀幕みたい。物事を止めることを「あれはもう、よしました」とか、ちょっと懐かしい感じがしますよ。
役者陣は、実力派がそろって非常に安定感があります。思った以上に、松田龍平が役柄に合ってました。私、龍平の舞台を観るのは3回目なんですが、最初が泉鏡花、次が宮藤官九郎で、全然テイストが違うんですよね〜。コメディアンな龍平も好きですが、今回のような、水のようにさらっとしているのに得体の知れない感じもいいですね。
龍平が演じた元演劇青年・須永と、木下あかり演じる被爆少女・モモちゃんのラストが、すごくよかったです。さみしくてきれいで、やるせなかった。