俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

真夜中のパーティー

PARCO劇場「真夜中のパーティー

【作/訳】作:マート・クローリー/訳:小田島恒志
【演出】青木 豪
【スーパーバイザー】青井陽治
【出演】
 阿部力(マイケル)  内田滋(ドナルド)
 右近健一(エモリー) 浜田学(ベルナルド)
 中野英樹(ハック)  徳山秀典(ラリー)
 中村昌也(カウボーイ)村杉蝉之介(ハロルド)
 山崎樹範(アラン)

7/11(日)13:00開演、於・渋谷PARCO劇場。
真正面から同性愛を扱ったいう点で、もはや古典劇ともいえる「真夜中のパーティー」を、「IZO」の脚本を書いた青木豪さんが演出し、劇団☆新感線の右近さん、カムカムミニキーナの山崎くんが出演というので、観てきましたよ。「真夜中のパーティー」自体を観るのも初めてなので、けっこう期待していたのだけれど、キャスティングがイマイチでしたね。
理由:若手イケメンを押さえればいいってもんじゃないぞ!

メインどころは、みなさんお綺麗な顔でよろしいのですが、同性愛者の雰囲気がない。「演じてます!」という臭みがぷんぷんで、どこから見てもストレート。白けちゃうんだよねえ。
同性愛者のお仲間が集まるパーティーのさなか、皆でまったりとチークダンス(男同士)を踊るシーンも、妖しさがなく面白みに欠ける。このチークダンス中、ただ一人のストレート(いわゆるノンケ)がドアを開けて入ってきて、お互いドキマギする仕掛けなのに、生きてないよね。

最初、ドナルド役が内田くんだと気づかず「あれ誰だ?」と思ってました。なんか顔変わった? 太った? 髪型のせい? 私、内田くんはけっこう好きなんですが、今回のドナルドは特によい点は見いだせず。
マイケル役の阿部くんは、滑舌が悪いとか、いっぱいいっぱいだとか言われてましたが、私もそうだなーと思いますが、顔が好みなのでこれからもがんばっていただきたい。まったくひどくはなかったので、もう少しなんかすれば、一皮むける気がします。
キレイさでは、ラリー役の徳山くんがグンバツでした。演技がどうとかより、キレイさで目立つのは、いいのか悪いのか。
右近さんは、予想通りのオネエキャラで、予想通りイイ味出してました。オネエって、全世界共通だよな〜不思議。役名の「エモリー」が、「江守徹」を連想させて胸のなかで大笑い。まったく関係なくてごめんなさい。
右近さんと、ハロルド役の村杉さんとで、ベテランらしく舞台を〆てました。

今回の収穫は、ハック役の中野英樹さん。一見地味ですが、ともすると目が彼を追います。それだけ存在感があるということ。右近、村杉と並んで、舞台の重石になってましたね。検索したら、青木豪さんのユニット「グリング」所属の役者だと分かり、納得。そりゃーできるわけだ。
山崎くんのアランは、この劇中、ただ一人のストレート。少々俗物の大卒エリート役で、ちょっと演技が暑苦しかったかも。
自分は「ストレート役なんだ、ふーん」くらいの印象でしたが、以前、山崎くんのゲイっぽい演技を観たことのある知人は「ゲイ役が似合ってたのに、もったいない」とこぼしてました。

さて、肝心の内容です。
もとは1968年初演のオフ・ブロードウェイ劇で、1970年に映画化。同性愛を興味本位ではなく、初めて真正面から捉えた金字塔の映画で、観たことはなくとも、題名だけは聞いたことのある方は多いのではないでしょうか。
初演から40年以上が経過しており、多少古さはあれども、状況はそれほど変わっていないんだろうなあ、と思わせられました。同性愛に限らず、マイノリティーを取り上げていて、ふだんは「暗黙のルール」な社会のひずみを言語化しています。たとえばユダヤ系、黒人系、階級。同じゲイの間柄でも、互いのクラスの差でヒエラルキーができてくるのがリアルだわ。
同性愛者である、というだけではなく、社会のヒエラルキーや属性に苦しめられている話であるのですね。極論してしまえば、同性愛は問題を顕現化するきっかけとも読めます。
また、脚本がとてもうまいんだなあ。登場人物の属する階級が、その台詞の端々で分かるようになっています。たとえば、マイケルは大卒のおぼっちゃまで、今はプーの(おそらく)シナリオ・ライター。プーなのに、NYのイーストサイド(高級住宅街)で、高いアパートを借りて暮らしています。着ている服はブランドもの。彼の元恋人であるハロルドは高卒だったか中退だったかで、仕事の続かない、現在清掃夫。趣味は精神分析医にかかることと、読書。ロウワー・クラスから脱却して知識人階級になりたいのねきっと。このへん、「蒲田行進曲」のヤス*1をちょっとだけ連想させます。

ただ、台詞からわかるといっても、いわゆる「仄めかし」なので、予備知識がないとサッパリ、だと思います。私は以前、ハリウッド映画史における同性愛表現を追ったドキュメンタリー映画セルロイド・クローゼット」*2を観たから、それなりに理解できたけれど、それでもよくわからない部分もありましたね。
パンフレットを買えば、用語説明などあったのかしらん。

演出は、品がいい感じ。あからさまな性的表現の演出は、苦手なのかもしれない。かなり真面目さんと見た。

*1:大部屋俳優から脱出したいヤスの部屋には、映画関連のポスターや本がごまんと並んでいる。しかし、彼にはスターたる素質がない。

*2:とても面白い映画なので、興味がある方はご覧になってみてください。