俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

初ベニサン・ピット

都営新宿線森下駅で降り、ベニサン・ピットでお芝居観てきた。ベニサン・ピットは、元は倉庫の芝居小屋だけあって、雰囲気ありますね〜。真面目なストレート・プレイをやる劇場、のイメージあり。
芝居の中身と寝不足で、船こいじゃった……我ながらショック。

阿佐ヶ谷スパイダース「失われた時間を求めて」

【作・演出】長塚圭史
【出演】中山祐一朗 伊達 暁 長塚圭史 奥菜恵

3人とひとりと長い椅子 そしてどうしようもなく夜
ばくばくと 呑まれていくのか 恐るべきものへ 

5/11 (日) 14:00開演、於ベニサン・ピット。上演時間は1時間40分ほど。
最初は「1時間40分か、短いなあ」と思ったけれど、観てわかった。この上演時間で限界。2時間いったら間が持たないわ。この芝居が最後まで持ったのは、役者全員がよかったのと、演出のおかげではなかろうか。特に、奥菜恵がいい。オキメグちゃん、復活おめ! さらにうまくなってたよ。外野は気にせず、今後もいい芝居をしてほしいです。

ところで、内容。本格(?)不条理というほどではなく、筋らしい筋があるのでもなく、昨日みた夢の話をされてるみたい。もしくは、意識が目覚める直前の、事故患者のとりとめもない走馬灯のような。圭史のポエマーな部分が全開。
で、翻訳調の会話劇なのね。マクドナーに影響されすぎ。まあ、圭史が演出したマクドナーの劇を観ることなく、こんなこと書いてんですけど。「悪魔の唄」「アジアの女」のときも思ったが、圭史はその時々で興味のあること、素直にぽろっと作品にするみたいね。その出し方が、よくも悪くも育ちがいい感じ。真面目っす。
伊達ちんとオキメグの会話で、存在の観念を挙げる場面など、そゆことは20代のうちに済ませとけ、と正直思った*1。30代前半だから、まだ若いか。誰もが一度は通る道なのかしら。作品のノリがわかったところで、寝不足がたたり、ちょっと船こいじゃった……申し訳ない。でも、だいたい起きてたよ (言い訳)。ちょっと聞き逃したところは、同行者に聞いて確認しましたよー。

中山くん、圭史、オキメグちゃんの3人が、何から逃避しているのかは、観客個人個人が自分にあてはめて、勝手に想像すればよろしい。そういう話だよね。今が夜なのか、なぜ出口から出られないかは、本人が(無意識下で)そう思いたい・そうしたいから。本人の「観念」「主観」に拠るわけです。時の流れの混乱も同様。
伊達ちんは「窓」。道しるべ、無意識に射す光のようなもの。中山くん以下3人がいる幽界(と仮定します)と、現世をつなぐ存在と読みました。圭史の役の「兄」は、もうこの世にはいないのかもしらんね。
美術がとても美しかった。あの透かし、夢幻的。奈落の使い方や照明、音響など、圭史はさりげなく上手い。舞台の長椅子の位置も面白いね。客席も傾斜がほどよくついて見やすく、ありがたかったです。マドレーヌと紅茶は出てこんかった。題名はただの借用かしら。

*1:E.M.フォースターの『果てしなき旅』を思い出した。ケンブリッジ大学生たちが、実在議論で「牛が存在するか否か」をやりあうところから小説が始まる。