俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

ロック・オペラ

週始めは寒かったが、今日はウールのセーターだと蒸し暑い。空はくもり。夜になるにつれて、風が強くなった。春一番
でかける前に、NHK土曜ドラマ「ハゲタカ」を視聴。大森南朋松田龍平という、おいしいキャスティング(私が)を今まで見逃していたなんて! 他のキャストもいいな〜。柴田恭兵も闘病から復帰してます。龍平君の初連ドラ、TV画面での浮き具合がたまらん。中村獅童酒気帯び運転・降板の代役だったとは知らなんだ。最初から観とけばよかったなあ。もう今日が最終回だよ。
ハゲタカの余韻をひきずりながら、日比谷の日生劇場まで。「TOMMY」を観劇。

ロック・オペラ the Who's「TOMMY」

【演出】いのうえひでのり
【訳詞】湯川れい子/右近健一
【翻訳】薛珠麗
【振付】川崎悦子
【出演】中川晃教高岡早紀/パク・トンハ/右近健一/村木よし子/斉藤レイ/山崎ちか/ソムン・タク/ROLLY /他

3/24(土)17:00開演、於・日生劇場。約2時間35分 (休憩20分含む) の上演。
いのうえひでのりさんの演出が目当て。「SHIROH」を経て、どんなミュージカルをみせてくれるのか楽しみだったが、うーん……まあ、ふつう。ふつうのミュージカル。これぞ、いのうえ演出! という興奮は、一部をのぞいて、あまり感じられなかった。いのうえ演出を見慣れすぎてるせいかしらん。やな客ですね。ふだん、ミュージカルは観ないので、基準がわからないわ。世のミュージカル好きのご意見を伺いたいところ。

「ロック・オペラ」の名のとおり、英国のロックバンド「The Who」が、1969年に発表したコンセプト・アルバム「TOMMY」が基。75年にケン・ラッセル監督で映画化、92年にブロードウェイ・ミュージカル化。いのうえさんは映画版寄りらしく、MTVみたいに、プロモーションビデオっぽくやりたい*1、と言っていて、それは観るまで忘れてたんだけど、確かにPVみたいな流れだった。全編、The Whoの曲でつづられており、セリフはすべて歌、生バンドの演奏は途切れることがない。これ、バンドメンが一番大変ね。弾きっぱだから。映画版*2は未見で、舞台よりもぶっとんでいるそうなので、見比べてみたいです。映画版観てたら、感想変わってたかなあ?

The Whoも知らないし、ミュージカル好きでもなく、ひいきの役者もいないせいか、どうにも自分の温度が低い。歌に筋をつけるより、筋に歌をつける舞台の方が、自分には向いているようだ。TOMMYの筋、重いわりにご都合主義で、へこいんだよね〜。一歩まちがえたらyoshiになりそうな。虐待、セックス、新興宗教、自己解放、そういう話、もう知ってますから、という感じ。70年代の原典がそうだからしょうがないけれど、その先の物語を、21世紀の私は観たいんだよね。ただ、70年代のスピリチュアルが垣間見れて、それは面白かった。竹宮惠子さんの漫画「地球(テラ)へ…」も、70年代の作品だなあ。なんとなく思いだしちゃった。

バンドの音量はさすが、いのうえさん! で、聴きごたえあり。いのうえ演出で今回の一番は、なんといっても「Pinball Wizard」でしょう。クレーンとレーザーにはやられたわ。一幕最後は、最高に盛り上がります。
残念な点は、モブ(群衆、アンサンブル)が固かったこと。仕事だからやっているように見えた。舞台を愛してないね。TOMMY役の中川晃教の熱演が、むしろ不憫……。Free! と歌うあたり、いい表情してるんですよ。ロック向きの声かどうかは別として、TOMMYの繊細さは、いのうえさんの狙い通りによく出てると思う。右近さんは怪演。
パク・トンハ(TOMMYの父親役)が、新庄に似てるという知人のことばに、舞台を見たら、ほんとに新庄だった。もうこれから新庄にしか見えません。高岡早紀(同・母親役)は、えろくて綺麗だった。うらやましーい。
「メタル・マクベス」でも使われていた、LED電光表示機が大活躍。頼りすぎてるくらい。構成からして、LEDがなかったらかなりきつかったと思うが、今後は、もうちょっと絞った使い方だといいなあ。
ミュージカル文法を意識せずとも、とらわれずにやればいいじゃない、と思った舞台だった。いのうえさんには、やっぱりオリジナル・ミュージカルで勝負してほしい!

*1:「e+ Theatrix!」より、いのうえひでのり/右近健一の各インタビュー記事→http://eplus.jp/sys/web/theatrix/special/tommy.html

*2:「TOMMY」映画版の紹介:「HELLO YELLOW ELTON ROAD」HPより→http://www.linkclub.or.jp/~yk-elton/tommy.html