俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

放課後の時間

今日はがんばって18時に退社。下北沢で阿佐スパ「イヌの日」を観る。
面白かった! これは再演で、初演は観てないけれども、今から6年前にこんなの書いてたのねー。中津の母親の役が、再演に際して、新たに書き足されたものなのにびっくり。事前情報で知ってはいたけど、この役の有無で、かなり印象は変わるんじゃないかしら。
ユーゴスラビア現代史の映画「アンダーグラウンド」、イランのサミラ監督「りんご」、それと少し方向性はちがうものの、W.ワイラー監督「コレクター」を思い出した。特にすぐ浮かんだのが「アンダーグラウンド」。

阿佐ヶ谷スパイダース「イヌの日」

【作・演出】長塚圭史
【出演】内田滋 (広瀬幸治)/剱持たまき (菊沢真理恵)/八嶋智人 (宮本)/大堀こういち (五味哲彦)/村岡希美 (石川陽子)/玉置孝匡 (小笠原洋介)/松浦和歌子 (柴菜緒)/水野顕子(高梨彩)/大久保綾乃 (福本由希)/中山祐一朗 (井口隆之)/伊達暁 (中津正行)/長塚圭史 (西田明夫)/美保純 (中津和子)

11/16 (木)、19:00開演、於・下北沢本多劇場。休憩なしの2時間半ほど。
いやー面白かった! 2時間半越えの上演時間が、長く感じなかった。初演は2000年8月で、阿佐スパ初の再演。美保純の役(中津の母親)は、初演にはなく、再演にあたり書き足されたものである。追加の役とは思えないほど物語とからみあい、しっかりした像を結んでいた。この役の有無で、芝居の印象もかなり変わるんじゃないかしら。
ここ最近の阿佐スパ(というか、長塚圭史)には、正直乗りきれない部分があったが、この再演で「やっぱりスゲー!」と素直に感服。才能がキラキラしてる。最後の爆発以後のシーンは、初演時からあったのか、再演からなのかを知りたいわ。極まったのちの「その後」が、非情なまでに日常でリアル。生き続けるのって、ある意味地獄だもんね。死ぬ方がラクで、ずるい。あとの者がすべて引き受けなくてはならないから。
初演の2000年は、1月に新潟女子監禁事件が発覚、6月に松尾スズキの「キレイ」、8月に圭史の「イヌの日」と、【監禁】がキーワードの年だった。同じ【監禁】でも、松尾さんの「キレイ」は女性側から見た視点であり、「イヌの日」は男性側からの視点なのが、両者のちがいを思わせて面白い。また、「キレイ」は見知らぬ者の拉致だが、「イヌの日」はお互いが知り合いで、情の通い合う間柄(もともと嫌いではなかった)ことに気をひかれた。彼らの関係性においては、監禁=保護といっていい。なお、どちらの作品も監禁は設定の一部にすぎず、それぞれ主眼は別である。

パンフレットで、圭史の「最近、頭でっかちで云々」という発言を読み、本人も自覚してたのね、と思う。充分咀嚼できてないまま、ぺっと吐き出されたような、まさに「頭でっかち」な舞台がここのところ続いていたものなあ。今回の改訂でも、八嶋さんの「宮本」などは、現在の圭史のナマが、出ているのではないかしら。
また、美保純(中津の母親)の役の出現によって芝居に深みが出たが、狭くもなったのではないかしらん。小5で同級生を監禁した、中津の衝動が分かりやすくなっちゃうのよね。初演では、理由はほとんど語られないそう。再演改訂するなら、きちん理由をつけたかったという圭史は、かなり真面目な人とお見受けしました。監禁に理由などない初演版も、執筆時の25歳という年齢を感じさせて、けっこう面白そうなんだけどなあ。初演未見なので、観たかったわー。