俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

2度目

ひょっと晴れ間の日。洗濯を2度する。用事をすませ、青山劇場へ。ぼーっとして反対の路線に乗ってしまったときは、どうしようかと思った。1駅で気づいて、本当によかったよ。開演5分前に滑り込みセーフ。
観たのは「メタルマクベス」2回目です。前回は筋と演出を追うのに精いっぱいだったけれど、2度目は余裕があり、好きなシーンをしぼって観ることができました。前回気づかなかった、役者さんのお遊びが楽しかった。詳しい感想は後日。

劇団☆新感線RX「メタルマクベス」2度目

6/17 (土)、18:00開演、於・青山劇場。感想追記が、ほんっとーに後日になりまして、現在8月11日です。やっぱりすぐ書かないとだめだね。忘れちゃう。しかたがないので、下書きのまま放置していたやつを、そのまま載せます。
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今回気がついたあれこれ
・3人の魔女の一人、林さん→ローズと同一人物
林A(右近さん)のセリフ「バンドのマネージャーやってた」で、ようやく気づく。コラーゲンの泉で若返った林が、松たか子なのを配役チラシで確認。しかし林A・林Bて、ハリコナA・ハリコナBみたいね。なつかし〜。
・「リンスはお湯に溶かして使え」PVに、宮藤さん友情出演
だよね? だよね? 一応、パンフの付属DVDも観たけど、あれは宮藤さんだよね?
レスポールJr.の頭髪事情
前半のマホガニー城に招かれた時点で、すでに抜け毛を気にしてたのね。遺伝が〜、とかなんとか言ってた。個人的には、この伏線は要りません。後半、すぐにあの展開になって全然OKだと思う。そんなに整合性つけなくていいよ。
・寝台のマクベス夫人
後半、罪におののくマクベス夫人が、夫に優しく寝させられたあと、布団の中でガタガタ揺れ始める。なにこれ? エクソシスト? 前回観劇時にはなかったと思う、新演出。
・ラストシーン、グレコの背中に青いアザ。
これも前回なかったような気が……。大きめだし、わざわざ客席に背中を向けてアピールしていたので、意味ありそう。気になる〜。(後日、知人に聞いたら、狼だか犬だかのアザだったそう。予言で、犬がどうとかって言ってたから、そうなのね)

最後の絵ヅラで、マクベス夫人の服装が、メイプル城(第一部)のときのものだった。幸せだった頃、本来の己の姿、なんだろうけれども、それがメイプル城だと思うと、ちょっと泣けるよなあ。「身の丈がメイプル城」どまり、ともとれるので。実際のセリフのとおり「小さい人間」かあ。「大きい葛篭にはお化けがいるの。小さい葛篭にしておけばよかった」という、マクベス夫人の肺腑をしぼるセリフは悲哀がこもり、非常にいい。のだけれども、同時に「小さい人間のままなのね」という気分もある。
原作ありきで、しかたないのだろうけれども、ここがこの芝居の限界かとも思った。非常に予定調和なのです、この話は。かつ保守的。悪いことした人が、分際を越えた地位を持てあまし、後悔して滅ぶ。ピカレスクロマンですらない。大きい人間になるために王殺しをしたのに、「身の丈に合いませんでした後悔しまくり」って、現体制肯定の勧善懲悪じゃないですか。このおさまりのよさが、原作料理のうまい宮藤さんらしいし、つまらないところ (と敢えて書きます)。
面白かった。でもあとに残らない。
うますぎて、引っかかりがないのんね。余韻のなさも、宮藤さんらしいのだけれど。それとも今回、いのうえさんが、より分かりやすくしている(?)せいかしら。グレコの背中に青いアザを足さなくとも、個人の解釈にまかせればいいのに、と思わないでもない。でも思いついたらやっちゃうのが、いのうえさんなんだよねー。困っちゃうけど好きなところ。

原作にないオリジナル・シーンで、レスポール王(ダンカン)の「何のために戦うのか」という問いがある。王のためなどという、おためごかしは要らない。人殺しが好きなのか、家族のためなのか。最後にこの問いは繰り返され、すでに家族を失ったランダムスター(マクベス)は「人殺しが好きだからだよ」と絶叫する。わざわざ二度出しするくらいだから、人間存在に対する、宮藤さんの所感じゃないかと思うのね。性悪説、とでもいいましょうか。
でも、個人的にこのセリフは弱い。テキトーに返した感がする。戦う理由(人殺しの理由、といってもいい)を、うまく言語化できないランダムスターが、やけで前王のことばを鸚鵡返しに言っただけなら、主体性のない人間の悲劇として「深い」と思うけれども。判別つかない。
自分なら、返答は「そうしたかったからだ、理由なんてあるか」ですね。理由のない人間のおそろしさときたら! 「王のため」という理由で、主体性をもってやる人間はゴマンといますよ。昔の軍国少年少女をご覧なさい。「ユダヤ人問題の最終解決」を忠実に遂行した、ナチ党アイヒマンの言い分は「命令に従っただけ」。要するにこの問答は、大ざっぱで、唐突な印象がするのね。

不満並べているように見えるけれど、面白かったんですよ! だからこんなに書いちゃうのよね。
グレコが、ランダムスターの右手を掲げて「これが悪魔の右腕だ!」と叫ぶところ。知人が、楳図かずおの「神の左手 悪魔の右手」という作品の引用じゃない、と言ってました。深いぜ。