俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

なぜに菊池寛、といいつつ観た

SMAP草なぎ君の舞台を観てきました。菊池寛父帰る」「屋上の狂人」の2本立て。心優しい人たちの協力で、一般発売日に奇跡の一発つながりでGET! つながったのは、今回の舞台にでんでん興味のない人です。無欲の勝利。しばらくその人と会うたび、拝んでました。
前から3列目の左ブロックという良席で、草なぎ君の端正なお顔を存分に堪能。青山円形クラスに小さい劇場なので、一番後ろでも役者を身近に感じられると思います。立ち見も出てました。上演時間は1時間5分と短く、立ち見でも楽勝です。

SIS company プロデュース「父帰る/屋上の狂人」

 作:菊池寛
演出:河原雅彦
出演:
父帰る草なぎ剛勝地涼西尾まり/梅沢昌代/沢竜二
「屋上の狂人」草なぎ剛勝地涼高橋克実キムラ緑子/富川一人/梅沢昌代/沢竜二

4/16 (日) 18:00開演、於・世田谷シアタートラム。菊池寛の「父帰る」「屋上の狂人」の2本立て、各30分ほどの公演。休憩10分弱で、1時間5分の上演時間でした。短かっ! 夜公演なのに19:05終了。「まだ19時!」「いつもは21時、22時で飲み屋を探すのが大変なのに、まだ19時!」落ち着かないったら。結局、デパートで春夏の靴をチェックしてから飲みに。

全体の印象としては、教育テレビの深夜劇場放送。ベタでオーソドックス。題材が題材だから、しかたがないか。この公演を知ったとき「なぜに菊池寛」と思ったが、観終ったあとも「だからどうして菊池寛」だった。演出に河原雅彦、草なぎ君をもってくるというのも分からない。だれが考えたのか、企画者とその意図が知りたい。

父帰る」の草なぎ君は、そりゃーもう面白かったです。声をつくっていて、低めに抑えてました。放蕩親爺に感情を爆発させる長男の役だけど、父親が帰ってくるあたりから汗を額に点じはじめて(来るぞー、来るぞー、キターーー!)という感じ、荒ぶる場面では満面汗だく。(でも端正に怒っているの) 同行者のオペラグラス・チェックによると「汗は滴り、握りこぶしに血管が浮いてた」。
ちなみに、この芝居で汗をかいていたのは彼ただ一人。草なぎ君の、緊張すると汗をかくクセがよく現れてますねー。
父帰る」と打って変わって、のびのびと演じていたのは「屋上の狂人」。こちらは汗をいっこもかいておらず、ほんと分かりやすい人だわー。「父帰る」はセリフ劇、リーディングの要素が大きく、他の役者さんたちも大上段な演技だったのに対し、「屋上の狂人」は明るく、皆さんわりと自由に楽しくやっているようでした。

内容は……古典でベタ。ほんとに父親はよくも戻って、周りも「お父さん!」と暖かく迎えるもんだ。小さい頃に出奔して、顔すらおぼろの父親を「よくぞ帰りました、これからはお世話いたしますよ」って、ほんとかいな。「屋上」でも、さらっと「座敷牢」ということばが出てきたり、ちょっと足りない息子の扱い方など、どうも時代が古い。やっぱり、今やる意味不明。
父帰る」も「屋上」も、讃岐(香川県菊池寛の出身地)あたりの話で、全編、方言。若手はのきなみ「努力してます」風だけど、さすがにベテラン勢はうまいね。草なぎ君は、「父帰る」の長男よりも、演じ方の難しそうな「屋上」の狂人が自然でよかった。この人の奥の深いところです。キムラ緑子の巫女さんは、そりゃーいいでしょう、という仕上がり。勝地涼君はもうけ役、というと言い方悪く思われるかもしれませんが、うまかったですよ。ただ、輪郭が明らかに丸くなっててびっくり。どうしたんだ勝地君! 20代前半て、いったん肥える時期なのかなあ。(そして20代後半にまた痩せる。で、30過ぎに本格的「肥え」が……そこからは鍛練あるのみ)
河原雅彦さんの演出は、非常にオーソドックスでした。この人は、よくジャニーズがらみの仕事してますね (嵐の大野君や、MAもやった「青木さん家の奥さん」演出、嵐の映画「ピカ☆ンチ」脚本、「秋葉原@DEEP」演出など)。

パンフレットはA5サイズで700円。文字も舞台写真もあるので、迷わず買うべし。草なぎ君の談話は、そのへんの演劇雑誌の取材で答えているのとほぼ一緒。最後になぜか、堤真一×草なぎ剛の対談が6ページ! 対談タイトルは「屋根の上で演劇の真髄を語らう」。具体的に「こうしてる、あの時はああだった」などと言いながら、お互いを褒めあってます。堤さんが、演出の河原さんを「リーダー」と呼んでいるのがツボ (ハイレグ時代の名残ですね〜)。草なぎ君は「イヌと呼ばれた男」「恋に落ちたら」2作で、堤さんと共演しており、そのときに彼のことが好きになったようです。だから、今回の芝居とでんでん関係のない堤さんが呼ばれて、対談してんのねきっと。草なぎ君は「スタアの恋」で古田新太さんとも共演してますが、堤さんいわく、古田さんも草なぎ君を褒めていたそうです。なんか嬉しい。草なぎ君中心の観劇感想になってしまって乞容赦。
原作と対照して見比べたい方は、「青空文庫」HPの菊池寛のページ(下記URL)をどうぞ。忠実なつくりなので、そのシバリで見せるのは役者の伎倆ですね。
http://www.aozora.gr.jp/index_pages/person83.html