俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

大人と子供(2)

昨日分、松尾スズキさんの「課外授業 ようこそ先輩」感想のつづき。

「ようこそ先輩」番組中では、子供(小学校6年生)は、堂々たる子供ぶりだった。大人に興味ないし、むしろ子供でいたい風だったが、当り前だと思う。今の世の中、子供でいた方がトクだもの。衣食住、必要なものは買い与えられて、冷暖房完備、ビデオDVD携帯ゲームにおやつ、すべて支払いは親がし、小遣いまでもらえる。レールから大幅に逸脱しなければ、たいていのことは目をつぶってもらえるんですよ。対する大人はいつも疲れて不平ばかり、遠い将来の就職口も不明で、年金制度もおぼつかない、大人になっていいことあるの? てなもんですよ。つまり、子供は大切にされているんです。
ただし、その優遇は子供のうちだけだと、子供は子供なりに感得しているのだろう。だから仕方なしに、大人になることを受け入れていく。実際、学校を卒業すると「いつまでも子供じゃないんだから」と、今まで子供扱いしてきた親や周囲が言いはじめるでしょう。いつまでも子供でいたいよ! でも社会的に許されない。
このとき、大人になる準備(気構え、もしくは諦念といってもいい)をしてこなかった子は、大変です。昨日までOKだったものが、今日からNGだなんて変でしょう。世界は変わらず、同じように朝はやってくるのに、自分のまわりだけ違う。理不尽である。自分に冷たい世間の体現者である、親への憎悪(憎しみは愛と表裏一体である)が育つ……そんなこともあるのではないかしら。あのう、大人になっても子供でいるって、才能がいるんですよ。またほかに、大人になることを重大事に考えすぎて、自縄自縛になるタイプもいるでしょうね。
大人になっても、100%大人果汁、というのはないだろう。たいていの人は“大人仮面”をつけてるんだと思う。年をとると、大人仮面ははずれやすくなってくる。ボケとはちがうけれど、親が子供還りをする。親が子供に、子供が親になる。親の言うことを、聞かされる、ではなく、聞いてあげるようになっていく。

で、早く大人になりたい子供って、どういう子かとも考えてみた。真っ先に浮かんだのは、明治大正、昭和初期。子供が働かされた時代です。「子供は遊ぶのが仕事」なんて、いつから言われはじめたんだろう。昔の子供は、学校から帰ってきたら子守、農作業の手伝い、隣近所や親戚の家への使い走り、遠慮なく使われていたはずだ (家にピアノがあるような、裕福な家庭は除く)。食べ物もぞんざいで、一品多いのは一家の長たる父親、お菓子類は祖父母から。何かしたくても家の用事を言いつけられ、小遣いは家計の足しにされる、これでは早く大人になって、独立したくなるだろう。大人になったら好き勝手できる、子供よりいい目が見られる。大人のほうがトクなわけ。
ふと思ったのだけれど、今の子供優遇社会で早く大人になりたいという子供は、家庭的に不幸な子が多いのかもしれない。年齢が満ちれば、家から出ていけるから。それは外的要因で、内的要因ではないけれど。とすると、松尾さんの番組に出てきた子供たちは、今現在不足のない暮しで、きっと幸せなのだろう。子供らしい子供。それはやっぱり、うらやむべき者なのかも。