俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

戊辰と平成の姉歯さん(世良修蔵)

マンション・ホテルの耐震強度偽装問題の、姉歯秀次氏(元一級建築士)の証人喚問が、昨日TVで中継された。ご覧になった方も多いのではないでしょうか。この話題は1日遅れでお送りしております。
夕刊でも一面トップで、姉歯氏の写真が並んでいた。つらっと眺め、デスクに戻ったが、もやもやが消えない。「あのう、……姉歯さん、ヅラなんでしょうか?」「えー! まさか今気づいたの!」みんな、とっくにヅラだろうと見当をつけていたそうだ。自分、遅かったみたいです。

姉歯」という名字を聞くと、戊辰戦争を思い出す。戊辰戦争が起こるきっかけともなった、世良修蔵暗殺事件である。
明治維新薩長が天下をとり、奥羽列藩に会津追討の命がくだる。謹慎中の会津に同情、また明日の我が身をみた列藩は、会津の赦免嘆願書を、新政府の奥羽鎮撫総督府に提出するが、これを却下された。却下したのは総督府下参謀の世良修蔵。長州の奇兵隊出身である。この世良が、同じ下参謀の大山各之助(薩摩)に書いた密書が、仙台藩士の手にわたったことから彼の運命は決まった。「奥羽皆敵」と書かれた(東北側の史料によるが、文章改竄の可能性を指摘されている)密書に激昂した仙台・福島の両藩士らは、世良を暗殺するのである。もう戻れない。ここに、新政府との交渉に失敗した北越の藩も加えた「奥羽越列藩同盟」が結ばれ、戊辰戦争へと突入していくのである。
世良修蔵暗殺の実行部隊に、姉歯武之進がいた。仙台藩の軍監で、実行部隊の中心だった人物である。戊辰戦争では福島白河で戦死。現代の姉歯秀次氏も宮城県出身だし、親類の姉歯かもしれない、などと思った。

世良修蔵については、悪役で書かれたものが多いようだが、別の視点からとらえた本もあるようだ。谷林博著『世良修蔵』(山口県古書店マツノ書店さんより) の紹介記事を読むと、ちょっとかわいそうな人に見えてくる。

世良修蔵 (1974年)

世良修蔵 (1974年)