俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

制服の頃

電車での移動時間と就寝前をつないで、あさのあつこ著『バッテリー』4〜6巻を本日読了。全6巻で、実際の本の表記は、巻数がローマ数字。
前に読んだ1〜3巻と比べ、4〜6巻は話の進み方が遅い。天才ピッチャー巧と豪のバッテリーに対し、天才バッター門脇秀吾と瑞垣俊二の組み合せが出てきたが、後者の比重が、思いのほか高くなったのだろう。特に瑞垣。最初はこんなキャラになるとは思ってなかったのではないかしら。それは他の登場人物も同様で、1巻から比べて、みんなかなり変わったよなあ。豪も、最初はおっとりキャラだったのが、いつからこんな攻撃的な子に! 巧と反転したかと思った。最初は2巻で終わるつもりが、6巻まで書きつぐうちに、狙いも関係性も変わるようすが興味深かった。瑞垣の人気が高いそうだが、わかるなあ。天才にあこがれる凡人だもの。(この「凡人」は、対比のため出したものです)

個人的には、1〜2巻が面白かった。後半は、瑞垣がかなりいいけれど、ちょっとだれる。あさのさんの他の著作は読んでいないので、このシリーズに関していえば、文体が実は苦手。心情を説明しすぎ。酔った書きぶりで謳いあげてて、ときどきうるさく感じてしまう。
1〜3巻を読んだときの感想は、id:orenade:20050104。そこで「少年の成長物語などと言わせるものか。友情物語などに貶めたりしない」という著者の語を紹介したが、うーん……6巻まで読むと、そう見られてもしかたのない一面が出てきておりますよ。『バッテリー』は春から翌春までの、中学1年間を追った時間構成で、主人公は“中学1年”。1巻が発刊してから6巻の完結をみるまで、あしかけ9年。キャラクターも作者も、変化はするよな。
4〜6巻で、はっとした箇所。卒業を目前に控えた中3男子が、後輩たちが練習するグラウンド風景に物思いする場面。俺たちはいなくなるのに、グラウンドには後輩たちが立ち、いつもと変わらぬ時間が流れる……制服を着ていた頃を、思い出す話です。

自分がこの本を知ったのは、腐女子ノリのHPが、いくつかとりあげていたから。5巻が出る前の頃だったと思う。今は「児童文学の傑作」と言われ、いろいろなメディアに紹介されているが、もともと火をつけたのは“やおいボーイズラブ”系統の人たち――で、合っているのかしら? もちろん、そうした素養(?)のない方々にも面白く読める本だけれども、最初の発信源がどこなのかが、ちょっと気になる。
ところで、角川文庫版の帯。北上次郎さんが「こんな傑作を読んでこなかったのかと猛烈に反省」しておりますが、たしかこの人、『十二国記』のときも似たようなこと言ってたよなあ。世の人が安心して手を出すようになったのは、こうした人の太鼓判のおかげもあるかも。

●「バッテリー 1〜6」あさのあつこさん(読売新聞「本よみうり堂」2005年2月22日付記事)
 http://www.yomiuri.co.jp/book/author/20050222bk01.htm

Yahoo!ブックス インタビュー あさのあつこ(2005年1月26日掲載)
 http://books.yahoo.co.jp/interview/detail/31476644/01.html