ボディ・ブローにノックダウン
阿佐ヶ谷スパイダース「はたらくおとこ」
4/4(日)18:00、於・下北沢、本多劇場。
本多は久しぶりだ。ロビー内部にスタバがあってびっくり。前からあったっけ?
さて、阿佐ヶ谷スパイダースである。
長塚圭史・中山祐一朗・伊達暁のユニット劇団で、必要に応じて外部から人を呼んでくるスタイル。作・演出を手がける長塚圭史は、長塚京三の息子だが、七光ではなく、実力あるひとですね。息子が作・演出し、父が主演した「マイ・ロックンロール・スター*1」 が、それはそれはよかったのですよ!
「マイ〜」では、圭史は役者としては出なかったので、初のナマ圭史、初の阿佐スパ本公演になる。
「あとからボディ・ブローのように、じわじわくるよ」
……阿佐スパを何本か観ている、知人のことば通りだった。
最初はふつうのお芝居、というか、それほど面白くはないのだが、途中で一転、人物たちの歯車が少しずつ狂いはじめ、坂をころげるように、抜き差しならない状況に落ちてしまう。ひとひねり、ふたひねりされた、どんでん返しの結末に「これか! これだったのか!」と唸らされる。
物語の最初から、終末のある一点に向けて集約され、作りこまれた芝居であることが、そこで分かる。それを、言葉で説明せずに状況で理解させる。すごい手腕だ。
今回のお芝居でいうと、池田成志さんの立ち位置ね。この舞台の視点がだれにあるのか、最後の最後に分かります。
ただ、リアル系スプラッター表現だけはどうも…。スプラッタというよりホラー? グラン・ギニョル? 血のりが好きなんだよ圭史…。しかもしつこいからね。好きなんだろうなあこういうの、とは思うんだけど、正直ちょっとキツイっす。途中で口に生唾がたまり、胸がえずきました。ぐえ。でも、「後味わるいけど、妙に心にひっかかる」(先の知人の弁) なんだよね。
今回の役者陣で、当初のお目当てはW池田(池田鉄洋・池田成志)だったのだが、「茅ヶ崎さん」役の中村まことさん*2がよかった。小林隆さん*3と雰囲気似てる。もう少し若くして、狂気を割増した感じかな。
東北弁をしゃべる松村武さん*4をみて、「奈良出身者が東北弁…」と、全然別のところで笑ってしまった。舞台のセットが凝ってました。
糸にとって、松尾スズキさんの世界は「ファンタジー」だけど、長塚圭史(なぜか呼び捨て)のは「日常の穴」にみえた。なんとか“市民”やってる人間が、ふとしたことから日常を逸脱し、虚飾をはがされ落ちこんでいく……そんな穴です。