俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

達三さん

ここのところ、石川達三を読んでいる。この人の作品を紹介した知人の話が面白くて、自分でも読んでみようと思ったのがきっかけ。
いやーすごいね石川達三
昔の作家さんです。第一回芥川賞受賞作家、といえば想像つくかしら。理屈っぽい文体ながら、口吻みじかく整理され整っているので、すっと頭に入ってストレス・レス。いい文章だと、つまずかないから読むスピードも速くなるね。
昔の作品のため男女規範が古く、時代錯誤なところもマアあるが、まだ現代に通じる視点もあって侮れない。時代錯誤が、かえって新鮮で楽しかったりもする。しかし、こんな真面目に愛や結婚、夫婦や男女関係について論理的に語ろうとする作家は、あまり知らないなあ。女や愛を信じず、ゆえに求めてやまぬイメージ。

とりあえず、今まで読んだ作品のかんたん紹介。

『青春の蹉跌』陽の当る場所。
『結婚の生態』自伝的小説。紫上かマイ・フェア・レデイか。昭和13年に「僕女」が存在した驚き。
『僕たちの失敗』モラトリアム人間のはしり。モラトリアムって、もう死語? もしくは、大人になりたくない子供の話。
『蒼氓』第一回芥川賞受賞作品。これ、プロレタリア文学!? 社会派から女の告白小説まで、達三先生、幅ありすぎです。でもこれがデビュー作の出世作で、出発点なのよね。
『その愛は損か得か』遠慮のないタイトルに、どんだけエグイんだと思ったら、不器用な女性の愛を求める姿を描いた作品だった。文庫裏表紙の惹句がすごい。「現代の愛の行為は利害打算から自由になれないものなのだろうか」冒頭からこれですよ。愛が重いわー。

以上、読んだ順。個々の面白ポイント(わたしだけが)の紹介は、そのうちやるかも、やらぬかも。