俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

たまらん! 楽日

「朧の森に棲む鬼」楽日のせんぺい

お昼が芝居楽日で夕方は趣味の講座、書店のぞいて夜はスタバという出ずっぱりの1日。午前11時に家を出て帰宅したの夜の0時。
「朧の森に棲む鬼」楽日だったのだけれど、もーのすごくよかった! 染五郎さんとサダヲさんが進化してて、大満足です。4日より格段によくなってた。こちらの物語の受け取り方も、ちょっと変わったわ。楽日だけあって、板の上も気合十分。とても昂揚した舞台だった。幸四郎パパが来ておりましたよ。

新橋演舞場「朧の森に棲む鬼」2回目@東京楽日

1/27 (土)、12:00開演、於・新橋演舞場。1日4日以来の、2度目の観劇。ほんで東京楽日。
大満足! よかったー!
4日に比べ、いろいろと見方が変わりました。4日の時点では、ライの成り上がり人生すごろくで、昇るのも下るのも派手というか、絵物語みたい。ライの悪人ぶりがどこかヒーローめいていて、転落も美しく、そのぶん軽くみえるきらいがあった。それが今日は、「これって、血塗られた物語なんだなあ……」と実感。昇りつめるためには何でも利用する非道さが、凄みを増して迫ってくる。平面だった男の像が、立体として顕れる。その凋落と妄執に、はじめてライが哀れと思った。前回は阿部ちゃんのほうが目立っていたけれど、今日の染は主役の面目躍如ですよ。ライの地金の下賤さも出てたし、公演数を重ねるたびに成長していて嬉しい。
では阿部ちゃんの印象は薄まったかというと、まったくない。こちらもパワーアップしているからすごい。愛らしさも殺陣の速さも、4日より上をいくおそろしさ。なんなのこの人すごすぎる!
剣術の腕前というより、腕っぷしが強いだけの荒い剣だったキンタが、位が上にあがるにつれて流れるように変わり、最後の特殊な殺陣にいたっては一番速く鋭い剣さばきになるさまは見事。4日以上に冴えわたっており、マダレの「腕をあげたな」の台詞が、嘘ではなく聞こえる。
懸案の、二幕クライマックスの対峙も申し分なく満足。阿部ちゃん、びっくりさせてくれてありがとう。前回はいまいち決まらなかった、キンタの心情が痛いほど伝わってきた。舞台袖近くにひっこんで、ツナやマダレたちと正対せず、やや後ろ向きにうつむく姿だけで、未練がわかる。「雨が降る」と言いきりながら、「降ってきやがった…」と空を仰ぐ“……”に、憎いながらも一点、心配な感情が表れてますね。マダレたちとライの剣撃に突っ込んでいくときの、かけ声一閃は、4日にはなかったもの。ここからは一気にかけあがる見せ場だ、キンタ、ライ、ツナ、マダレの4つ巴は、下手な役者は入れません、4人ともにひけをとらずぶつかりあい、瞬きすら忘れてしまう。
キンタの「あんた」「アニキ」が交錯し、相討ちにならん勢いで斬りつけていたのが、ライが自分を見ず、朧の鬼たちへの妄言をはじめてからは、剣先がにぶる。キンタが斬りつけ、恨みごとをぶつけたかったのは、兄貴のライであって、妄執の鬼ではないのだ。いつまでも強気な憧れの男で、心神耗弱のざまなしとは違う。かつて仰いだ男が、さらばえて去るのを、血人形を握りしめて見送るわけです。今のこの身は、おまえさまゆえ……血人形は、男の非道の印でもあり、愛情の証でもある。暗転の一瞬前に、血人形をわずかに持ち上げて見やるんですよ! もーう心は説経節。書きながらふと思ったんだけど、いのうえさんのやりたいドラマって、もしかしたら説経節の世界ではないかしら。それなら腑に落ちる。近代心理ドラマとはちがうのだろうな。

さて、カーテンコール。座長の染五郎さんの挨拶のあと、新感線では楽日恒例のせんべい撒きです。舞台上だけでなく、客席にも役者さんたちが降りてきて、せんべいを配ってくれました。私はサンボくんから1get。初めて、せんべいもらえたー! わーいわーい。
カーテンコールでは、染五郎はもちろん、阿部ちゃんにもひときわ大きな拍手。観客って正直だよねえ。今日は楽日のせいか、本編の登場シーンから、キンタにまで拍手が起きてた。阿部ちゃんもわかりやすくノッていて、お遊び部分がいつもより長かった。ツナへの手紙を読むシーンでは張りきってやりすぎて、ツナの秋山菜津子さんに「キンタ、気がすんだか?」と言われ、あわてて「ハイ。」と、正座して謹慎したのが微笑ましい。「あれ、橋本じゅんさんだったら、もっと長いよね!」という同行者の意見が、さらにおかしかった。
ひとしきりカーテンコールがすんだあと、阿部ちゃんが1曲披露。彼の純・新感線初舞台「レッツゴー! 忍法帖」の曲です。あああ、阿部ちゃんの歌が聴けるなんてー。特別ゲストとして、冠さんが途中参加。えらく腰の低いゲストで、歌い終わったあと「僕なんかですみません」と、しきりに謝っていた。そんなことないのに、いい人だなあ。