犬の名前

どうして、昭和の犬の名前は「ジョン」なのか。ジョン。ジョーンー。ジョン！　おいで！「やあ、犬を飼ってらっしゃるんですね」「いいえ、うちのジョンは猫ですよ」「え、猫…（気をとり直して）やあ、本当だ、かわいい猫だなあ。男前の顔ですね」「うちのジョンはメスですけど」「……」「若草物語のジョーだって、女の子なんですよ。白石のライバルではありません。固定観念は捨てていただきだいですね！」「すみません」「わかればいいんです。あら、ミケだわ。ミケ。ミーケー。ミケ！」「今度は犬ですか」「何をおっしゃいますの、ミケといったら猫でしょう」「……」「三毛猫だからミケ。簡単じゃあございませんか、素直にお考えなさいな」「すみません」「わかればいいんです。それはそうと、ノラはどこに行ったのかしら」「今度こそ猫でしょうね」「人間ですけど。イプセンの人形の家、ご存知ありませんの？」「ノラといったら猫でしょう！」「ノラは内田百間の専売特許ではございませんことよ。ノラといったら猫だなんて、短絡的思考だわ。ノラ犬の立場はどうなりますの」「ここって謝るとこなんですかね？」「あなたがノラの夫ならば」「さようなら、僕が出ていくよ」こうして二人は別れた。