俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

上川隆也さんはすごい!

SHIROH・オブジェ

SHINKANSEN☆RX「SHIROH」

劇団☆新感線、初の“ロック・ミュージカル”。
12/23 (木・祝)、18:30、於・帝国劇場。25分の休憩を挟み、終演は22:30。これ、最初の仮チラシでは副題「神の声を持つ少年」がついていたのだけど、本チラシ及び公式HPでは、いつのまにか本題のみに。削られちゃったー。
帝劇は初めてです。ロミジュリの日劇につづく、老舗劇場シリーズ (いま命名)。場内は広くて大理石風味でシャンデリヤの赤ジュータンだわー。さて本編のほうは?

……アカもアオも吹っとんだ。今年観た芝居のなかでは、「はたらくおとこ」と双璧。本年度No.1かもしれない、というくらいよかった。

一人は、神の声を持ちながら人々のために歌うことを知らず、
一人は、神の声を失いながら人々を導こうとした。
二人のSHIROHが出会うとき、三万七千人の叫びは神の歌となる。
 ――SHINKANSEN☆RX ROCK MUSIKAL「SHIROH」、本チラシより抜粋

島原の乱」を題材にした劇で、二人の「SHIROH」、という設定。いわゆる四郎時貞、神の恩寵を失った“島原のシロー”に上川隆也さん、神の声を持つ少年の“天草のシロー”に中川晃教くん。
一番にあげたいのが、上川さんの演技の説得力。屈折した心情が胸を打ち、素直に感情移入できた。上川さん本人が「歌は好きじゃない」「歌いたくない」と公言していたので、ひそかに歌の部分を心配していたのだが、まっっったくの杞憂だった。なんてすてきなお声なの! 彼の歌は、直接心に響いてくるのですよ……。シローの内面をさらけだした、彼の誠実な演技がなかったら、舞台にこれほどの深みは生まれなかったと思う。
演技力で魅せるのが上川シローならば、歌声で魅せるのが中川シロー。特に2部のクライマックスでは、かなり入りこんで歌っており、本業・歌手の面目をほどこしている。上川シローの姉役・元バービーボーイズの杏子も、鍛えられたステージングで歌と芝居の両方をこなし、安心して観ていられた。

一番が上川さんの説得力なら、次は歌の威力であり、いのうえさんの演出力である。
やっぱり、歌は盛りあがるんですよ。生バンド最高! ライブの強みですね。岡崎司さんの曲もいいんだ。いのうえさんの演出はスケールが大きい。歌・役者が渾然一体となり、一幅の絵と化したクライマックスでは涙が流れた。ふだん新感線で泣くことなど、めったにないのに。……歌に心ゆすぶられ、さまざまな記憶と思考が頭上をよぎった。隠れ切支丹の歴史、島原の乱の最後、徳川幕府成立からせいぜい30年・いまだ世が安定しない頃の生贄の羊、自由への一歩。マタイ伝27章、「主よ、主よ、なぜ私をお見捨てになったのですか」。

今回の主要キャスティングは、はずれなし。重鎮・江守徹さんは、ちょっと面白かった。わざとアドリブ飛ばして、相手を試して遊んでいるところなど、なかなかよかったですよ。女性陣では、お蜜役の秋山菜津子さんがピカイチ。どこでもしっくりハマる女優さんなのね〜。大塚ちひろさんも印象的でした。
カーテンコールは3回ほど。なぜか左ブロックに集中してスタンディング・オベレーション。いや、感動したけど座っててもいくない?(スタンディングは苦手)
檀上の上川さんは、相当目がうるんでいた。もしかして泣いてる? 2回目のカーテンコールで、(ありがとうございました)と唇が動いていた。3度目のカーテンコール、上手への挨拶で(ありがとうございました)、下手で(ほんとうに)、と小さく口が上下した。こちらこそありがとう!

外に出たら22:30。休憩いれて4時間という長さ。通常ならそのまま帰るが、このままでは寝られない! と、近場の白木屋であわただしく打ち上げ。
「もう、上川さんが……!(身悶え)」「あんなにすごい役者さんだとは……!(身悶え)」と、煩悩全開のトーク。合間に「ジーザス・クライスト・スーパースターを意識してるのでは」など、真面目な話もちろっと。2004年最後の観劇をしめくくるに、ふさわしい舞台でした。