俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

イタリア5日目【オトメン都市・フィレンツェ】

4/27 (金)、イタリア5日目。フィレンツェ経由で、ローマへ。ユーロスターに乗ったよ。

ホテル 06:50発 → Bologn a 中央駅 07:10着(タクシー)
Bologna 中央駅 07:46発 → Firenze. S.M.N.駅 08:45着(ES、2等席)
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フィレンツェ】花の大聖堂(ドゥーモ)〜サン・マルコ美術館〜サンティッシマ・アンヌンツィアータ教会〜メディチ家礼拝堂/サン・ロレンツォ教会〜中央市場(昼食)〜シニョリーア広場、ヴェッキオ宮周辺〜サンタ・クローチェ教会〜ヴェッキオ橋〜花の大聖堂(内部見学)〜S.M.ノヴェッラ教会薬局〜カフェ「SIENI」〜Firenze. S. M. N. 駅
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Firenze. S.M.N.駅 19:31発 → Roma Termini 駅 21:15着(ES、1等席)
21:20 駅発→22:40 ホテル着(タクシー)

朝の弱い自分がちゃんと起きられるか、不安で安眠できず。目の前が森のホテルで、夜鳴鳥がしじゅう鳴いていたのもある。4:30、5:00、5:30と、小刻みに目が覚めた。
6:00起床。苺の残りと、昨日買っておいたパンが朝食。プローシュットを巻き込んだパンが、しょっぱい! 水分がなくなった分、塩が残るんだろうな。もうひとつの小さなラビオリパンは、中身がチョコだった。
6:50、ホテルをチェックアウト、駅まではタクシー。まずはフィレンツェまで約1時間、7:46発→8:45着の、ES(EuroStar:特急ユーロスター)2等席。ベネチアでのIRとちがい全席指定、スーツケース置場は日本の京成スカイライナーと同じだが、4〜5泊用の荷物でも、座席上の荷棚に載せる人が多くて驚いた。よくあんな重いもん、荷棚に上げ下げできるなあ。

フィレンツェ駅の手荷物一時預かり所に、スーツケースを預ける。日本の駅の預かり所やロッカールームみたいに満杯で一苦労、ということはなく、十分な空きスペースを確保しているようだ。そこそこの大きさの駅なら、たいてい手荷物預かり所があるようなのでご確認を。便利だよー。そうこうするうち、もう9:15だ。駅前にあるサンタ・マリア・ノヴェッラ教会を通りすぎて、フィレンツェの顔・花の大聖堂(ドゥーモ)へ。駅近で、徒歩5、6分くらい。
実は、今回いちばん楽しみにしていたのはここ、フィレンツェだった。「眺めのいい部屋」、ジャンニ・スキッキ「私のお父さま」、サヴォナローラマキアヴェッリチェーザレ・ボルジア。花の大聖堂 (ドゥーモ)。しかし、花の大聖堂を実際に目にして、ちょっとびっくり。この白と緑とピンクの建物はなあに?

写真では分かりにくいが、実際はもう少しくすんだ色めである。であるが、予想外の「アリスの小さなお茶会清里ワールドに茫然。メルヒェンだ、少女趣味だあ。写真や映像で見る大聖堂と実物とでは、印象がかなりちがうわ。とはいえ、やはり大きくて迫力はある。朝9時台では、まだ土産物屋の露店もそろわず、人通りもそこそこ、開けた感じが気持ちよかった。左2点は午前9:30前後、3点目は昼すぎの写真。太陽光線の当たりかたが違いますね。

大聖堂の拝観受付開始には間があったので、並ばずにサン・マルコ美術館*1へ。まだ9:50のせいか、すぐに入れた。
サン・マルコ美術館は、もとドミニコ派の修道院。昨日のサント・ステファノ教会群のように、質素なつくりだ。これだけは絶対に観ると決めていた「受胎告知」*2を鑑賞。
静かな美しさ。
懼れるマリア。受胎を祝福するというより、憐憫をもって言い渡すような天使ガブリエルの表情。ガブリエルが、生の苦しみを知る中年女のように見える。この有名なフラスコ画の作者フラ・アンジェリコは、同修道院に在籍した修道士でもあった。「フラ・アンジェリコ」は死後の通称で、名の通り、敬虔で「天使のような」人柄だったらしい。おそらく、若い女性と接することは少なかっただろう。ガブリエルのモデルは、彼のマンマじゃないかしら……などと勝手に想像。
フラ・アンジェリコは、ここの僧房の各部屋にも、小さなフラスコ画を描いている*3。キリストの磔刑の絵*4では、イエスの体からぴゅーと血が弧をかいていて、カトリックのこういうところがまだ分からん。
僧房は4畳半か6畳程度で、小さな窓が1つあるきり、ベッドと机、手荷物品を置けば仕舞の簡素さ。修道士のふだんの生活がしのばれる。この僧房の奥に、修道院長だったサヴォナローラの部屋があった。サヴォナローラ肖像画、着衣、使っていた聖書、彼の火刑の画などが飾ってある。

サヴォナローラを狂信家、怪僧と呼ぶには、少し哀れだ。詳しくは Wikipedia の項*5を見ていただくとして、簡単に書くと、ルネッサンス期のフィレンツェを席巻した修道士。フィレンツェの僭主メディチ家を追放、贅沢品や芸術品を集め「虚栄の焼却」をし、時の教皇アレクサンドロ6世(チェーザレ・ボルジアの父親)を糾弾。祭政一致をめざし、最初はフィレンツェ人の支持を得ていたが、最後は離反され火刑になった人だ。
サヴォナローラは、正論だけしか持とうとしなかったのが敗因だったのだと思う。また、理想の世をつくるのに子供を使っており*6、目的は高潔でも、第三帝国や文化革命、クメール・ルージュとやっていることが同じ、というのが切ないです。善も悪も、いきつくところは一緒なのかしら。子供はいつの世も、便利に使われちゃうのねー。

感想が非常に長くなったが、サン・マルコ美術館をたっぷり堪能し、外に出る。日射しが明るい。
このとき、なぜかわからないが「サンティッシマ・アンヌンツィアータ教会」に行こうと思ったのだ。近くなのは分かっているが、土地鑑がない。広場でガイドブックとにらめっこしていたら、スキンヘッドのお兄さん(ロッカーふう美形)に「どこ行きたいの?」(英語) と声をかけられ、この道をまっすぐ、と教えてくれた。一瞬身構えた自分を反省。イタリア人いいひとじゃん!
なんとなーく行ってみた、サンティッシマ・アンヌンツィアータ教会だが、これが大当たり。教会内部に入ると、外観からは予想外の荘重華麗なゴシック様式。美しい祈りの空間に圧倒される。観光客がそれほど多くないのだろう、信仰の場という雰囲気が強かった。サン・マルコ美術館とこの教会は写真を撮る気になれず、ただ目にやきつけるだけにする。

アカデミア美術館は長蛇の列。「Gelateria Carabe' (ジェラテリア カラベ)」で買った、ピスタチオのジェラート(ちょううま)をなめなめ、歩いていくと、ふっと広場に出た。

これだよこれ! ドゥーモの美しさは、近景ではなく遠景にあり、だな。日本の桜みたい。遠くからおぼろな花霞を見やるほうが、風情があるというもの。
ここから「メディチ家礼拝堂」*7へ。10:45に並び、10〜15分くらいで入場。本堂内部の、大理石や貴石を色とりどりに組み合わせた床や壁の豪華さに、もうため息。新聖具室はミケランジェロの設計で、彼の彫刻が4体、飾られている。ミケランジェロの彫刻を初めて見て、やっと彼のすごさを知った。大理石の肌はぬめぬめと生きているよう、たしかに肉体が感ぜられ、とにかく妖しい魅力を放っているのだ。ミケの彫刻すごい!(いまさらです)
礼拝堂はこれだけなので、裏手の「サン・ロレンツォ教会」も回る。入口がわかりにくくて、2周しちゃった。

写真はサン・ロレンツォ教会の中庭。だいたいどこでも、中庭はこんなもんです。
サン・ロレンツォ教会は、メディチ家菩提寺。ドナテッロがあります。あとミケランジェロがデザインした階段。ミケの階段は、教会付属のラウレンツィアーナ図書館*8にあり、拝観は別料金。さっそく、教会2階の図書館にあがってみた。
……ミケの階段、別段ふつう*9ミケランジェロ、と聞かされてなかったら正直「ふーん」だ。今は昇降禁止で、保護されている。それよりも、図書館室の、大学教室のような雰囲気のほうが好きだなあ。

ドゥーモを通り抜けて、中央市場でお昼。12:20到着。

市場内の屋台食堂「NERBONE (ネルボーネ)」で、フィレンツェ名物「Lampredotto (ランプレドット)」のサンドイッチ、サラダとビールを注文。ランプレドットは、牛の胃袋煮込みのこと。パンは手のひらを広げたくらい、でかい。ちょっとした小山で、相当なボリュームだ。かぶりつくと、かったーい! フランスパンみたい。中はやわらかいけど、外の耳(?)の部分はカリッカリに固い。この固さが、イタリア人の好みなのね。
セルフサービスの店で、先に会計を済ませてから、カウンター(写真の親父さんが、料理をさばいているところ)に、レシートを差し出して注文完了。お昼どきでカウンター前は人だかり、これじゃあ順番はどうなっているのかしらと、レシートを何度か差し出すと、親父さんは一瞥して首を振る。レシートと親父さんを見比べていると、温和そうな中年女性が「レシートに打ってあるNo.が、待ちの順番なのよ」と教えてくれた。なるほど!
昼食のあとは、市場の店流し。市場は14:00閉店で、あと10分ちょいしかない。さすが観光都市、数店舗で日本人スタッフを見かけた。


さあここから巻いてきますよ。
オルサン・ミケーレ教会のわきを通り、シニョリーア広場へ。14:10頃。とにかく、いろいろある広場で、観光客もわんさかいる。

左写真の金環は、サヴォナローラ火刑の跡。右はヴェッキオ宮とダビデ像。このダビデ像は模造で、本物はアカデミア美術館だ。思ったより彫刻が大きくて、びっくり。ヴェッキオ宮は混み混みで、入口からのぞくだけで済ました。反対側の建物には、屋外彫刻ギャラリーがあり、なかなか派手な広場である。
ウフィツィ美術館は、ここからすぐそこ。3時間待ちほどの行列で、むろん通りすぎました。ボッティチェリがあるんだよねえ。

お次は「サンタ・クローチェ教会」*10。教会前の、大きな広場には土産物の露店が何列も並んでいた。寺社仏閣の門前町みたい。

ドゥーモより真白な大理石に、ピンクとグリーンが組み合わさって、「アリスの小さなお茶会」濃度がUP。フィレンツェ人は乙女な心の持ち主にちがいない。メディチ家礼拝堂が外見は質実剛健、中身はきらびやかなのも、当主の抑圧されたオトメン感情の現れにちがいないわ (妄想スイッチ・オン!)。昼間は陰謀めぐらす冷酷なビジネスパーソンでも、夜は総レースの天蓋ベッドに、フリルつきのネグリジェにナイト・キャップをかぶって、BL漫画で癒されてんのよ! ロレンツォったら、もう!
ごめんなさい。行列の待ち時間がわりかしあって、妄想で時間つぶしてました。
サンタ・クローチェ教会内部は、ガリレオ・ガリレイの墓とかマキアヴェッリの墓とか。写真右端はミケランジェロの墓。墓ばっかりだけど、ほかにもジオットのフレスコ画や、ドナテッロなどがあり、内装も豪華で見甲斐があった。また、ここの教会にはレザースクールの店と工房があるそうだけれど、どこにあるか分からないまま退出。

アルノ川を渡り、フィレンツェ最古の橋・ヴェッキオ橋まで歩く。15:30頃。

写真左橋が、ヴェッキオ橋。アーケードのように覆われ、建物の絵が壁に描かれているのがわかるだろうか。思ったより小さな橋で、ここも「ふーん」。今のこの橋じゃあ、「あの人との仲を許してくれなきゃ、ここから身を投げて死んでしまうわお父さま」なんて、ちょっと言えないなあ。橋の両側は、金細工や宝石店でぎっしり。
また、ドゥーモのある広場に戻ってきた。16:00、ドゥーモ内部を見学。次にサンタ・マリア・ノヴェッラ教会に行ったら、17:00前だったが、警備員さんに「今日はもう終わり」と手を振られる。私のあとも、そういう人が何人かいた。
写真中央は、そんなS.M.ノヴェッラ教会の、世界最古といわれる薬局*11。正確には、薬局内からのぞいた、教会とおぼしき中庭の柱廊。
薬局を出たのが17:30前。18:30、フィレンツェの最後に、老舗カフェ「SIENI」で、立ち飲みのカプチーノとドルチェ (写真右端)。一見、メレンゲ風のドルチェだが、食感はサクサクの反対で、粘りつくような食感だった。見かけによらないものですね。

18:50、駅に到着。手荷物一時預かり所から、スーツケースを引き取る。駅構内の売店でサンドイッチと缶ビールを購入、これが本日の夕飯だ。ここからローマ・テルミニ駅まで、19:31発→21:15の、ER(特急ユーロスター)1等席。本当は2等がよかったんだけど、最終電車まで全席、2等は完売だった。朝の時点で、フィレンツェからの切符も確保しておくべきだったわ。
さて、1等車両の居心地はというと、ほとんど2等と変わらず。車掌さんが回ってきて、飴や水をくれるのが、2等とちがうサービスだった。車窓から落ちゆく夕陽を眺める。
ローマには21:15着のところ、ESがかっとばして21:10には到着。このへんのいい加減さがイタリア的。早く到着するときもあれば、遅延することもある。駅に到着するごとに、発車までの待ち時間が長いなあと思っていたが、この“前後差”を解消するための“待ち”だったのね。たまたま、自分が乗ったのはESやIRの特急・快速だったが、これが各停だったらどうなるんだろう。やっぱり遅れるのかしらん?
テルミニ駅でタクシーを拾う。21:20駅発→22:40ホテル着。ナヴォーナ広場の近くの宿だが、、ビストロやリストランテのテラス席が道にはみだし、タクシーが宿まで車を寄せられない。少し手前で下ろされてからは、スーツケースを持ち上げ、えっちらおっちら。地面がでこぼこの石畳で、車輪が突っかかって使えないのだ。
チェックインして、部屋で足を投げ出してリラックス。とうとう、ローマまで来た。明日はヴァチカン市国と、フォロ・ロマーノに絶対行くぞ。

*1:サン・マルコ美術館

*2:フラ・アンジェリコ「受胎告知」→Wikipediaの画像

*3:サルヴァスタイル美術館?Salvastyle.com:フラ・アンジェリコ」に、詳しい解説あり。Wikipedia:Fra Angelicoには、「受胎告知」の一部拡大図などもある。

*4:キリスト磔刑の絵→Wikipedia:Fra Angelicoを参照。

*5:Wikipedia:ジロラモ・サヴォナローラ

*6:綱紀粛正、風紀取締の少年隊を組織。少年たちは街を見回り、贅沢品を取り上げたり、人々の言動に目を光らせた。面白いのは、多くの大人たちが、それを歓迎していたことだ。退廃の世がまともになる、と期待したのだった。なんか、バブル崩壊直後に「いきすぎバブルいくない、使い捨てでなく、モノを大切にする昔に戻ろう」という言説が散見されたことを思い出しますね。現在、安くて最初から使い捨ての粗悪品が多いですが。

*7:Cappelle Medicee:メディチ家礼拝堂

*8:Biblioteca Medicia Laurenziana:ラウレンツィアーナ図書館

*9:ミケランジェロの階段は、こちらの写真上から2つめ。

*10:Wikipedia:Basilica di Santa Croce (サンタ・クローチェ教会)

*11:All About:サンタ・マリア・ノヴェッラ参照。もう一つ、S.M.ノヴェッラ薬局の日本公式HP