俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

観劇と熊谷

SISカンパニー「近松心中物語」@初台・新国立中劇場

【脚本】秋元松代
【演出】いのうえひでのり
【出演】
堤真一 宮沢りえ 池田成志小池栄子 市川猿弥 立石涼子 小野武彦 銀粉蝶
池田倫太朗 伊藤安那 大久保祥太郎 大野香織 大原康裕 金松彩夏 駒井健介 陣内将 高柳絢子 内藤裕志 山崎美貴 山田悠介 吉野実紗 頼経明子 ほか

1/28(日)13:30開演、於・新国立劇場中劇場。上演時間は約2時間30分 (休憩込み)。
近松心中物語」は、もともと蜷川幸雄演出で名高い舞台だったそうです。「冥途の飛脚」、「ひぢりめん卯月の紅葉」とその続編「跡追心中卯月のいろあげ」の3編を秋元松代が大幅に脚色・仕立て直した作品を、蜷川幸雄平幹二朗太地喜和子、菅野菜保之、市原悦子で1979年に初演したのが始まりだとか。すごい顔ぶれですな。
生前の蜷川さんが「いのうえの近松が見たい……」と言ったのが機縁で、いのうえひでのり演出の舞台が実現しました。蜷川さんといのうえさんの演出って、大掛かりで大上段、派手なのが共通しているので、親和性高そうよね。

近松といえば心中物。ちゃんと読んだことはなくとも、文学史的に知ってはいる、その程度のアタマで観てきました。
堤真一が飛脚屋の跡取り養子・忠兵衛で、宮沢りえがその敵娼・梅川。池田成志が調子のいいダメ男の入り婿・与兵衛で、小池栄子はそんなダメ男にぞっこんの、傘屋の跡取り娘・お亀。いわゆる「家つき娘」というやつです。
その2組のカップルの行末を描くのですが、メインは堤真一宮沢りえ。王道の悲恋で、ある意味、型にはまった芝居しかできないからちょっとかわいそうだったかも。池田成志小池栄子はコメディ・パートで、メインカプは堤&宮沢に譲りながらも、その喜劇性と人間臭さが演じ方に幅が出て、面白みのある役柄だったのではないでしょうか。少々、笑いが表に出すぎた嫌いはありますが。

舞台セットがすっごくよかった! 格子をうまく使い、花と見紛う赤い風車の群れが、苦界の華やかさと憂き世を象徴しています。
舞台設定が江戸初期ということで、歌舞伎っぽく黒子に場面転換をさせていました。今回、何がよかったって、3Dプロジェクションマッピングも、スクリーン映像も使わなかったこと。私ね、その演出はもう、ほんと飽き飽きしているんです。ちょっとさー、いくら暗転が嫌いだからといって、いのうえ演出はスクリーン多用しすぎですよ。今回はそれがなく、真っ向勝負な感じがして好感が持てました。まったく個人的な感慨ですがね。

お堅い朴念仁の忠兵衛を、結果的に遊女屋に誘って梅川と出会わせ、破滅に追いやらせたのが、飛脚屋仲間の丹波屋八右衛門。八右衛門を演じたのが市川猿弥で、これがまた大変味わいがありました。さすが歌舞伎役者ですね、締めるところは締めて、凄みの出し方がとてもいいです。
市川猿弥と並んでよかったのが、銀粉蝶。こちらも「さすが」の一言です。傘屋を取り仕切る、しっかり者の母親役で、なんの大げさな演技をしなくとも、すっと感情やセリフが聞こえてくるんですね。
今回、いのうえ演出には珍しく(笑)、演者にマイクがない舞台だったんですよ。そのせいか、モブとメイン級の役者の差がくっきりと浮かびあがってしまいました。そう、モブの方々は、セリフが聞き取りづらいんです……。身体は動けていても、何かもろもろ、伝わってこないんですよ。芝居の出だし、モブの方々の応酬が終わったあとで堤真一が出てくるのですが、セリフ回しから何から、モブとは違っていてびっくりでした。セリフがめちゃくちゃ聞きやすいし、身ごなしが自然なの。売れる役者って、やっぱり理由があるんだと認識させられました。
あ、モブでも、宮沢りえのいる遊女屋の女将など、かなり出番のある役者さんはちゃんとしていましたよ。本筋とは関係ないけれども、「役者の力量」について考えさせられた舞台です。
それで言うと、小野武彦は、もったいない使われ方だったなあ。出番がちょこっとしかなくて、「え、これだけ?」と思いました。

   ※  ※  ※
さて、舞台を観終わってからは、急いで熊谷まで移動。高校時代の友達、3人と会うのです。
3人のうち1人は、2年ぶりかなあ? 一緒に熊谷まで来ていた旦那さんとお子さんにも会えて、ラッキーでした! お子さんが、生まれた時からイケメンだったけれど、成長してもイケメンだったわ。かわいかった〜。
旦那さんとお子さんに挨拶してから、イタリアンの店に移動。18時から20時半まで、あっという間でした。電車の時間の都合で「あともう少しだけ」と、駅構内のモスバーガーに入り、短い時間でも、めいっぱい再会を楽しみましたよ。21時半頃の電車で帰宅。