俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

夏の自主練・その2と「業音」再演

趣味の講座で、別クラスの自主練がありまして、そちらに遊びに行ってまいりました。途中参加です。14時半過ぎに行き、17時過ぎに終了。終わったあとは、「反省会」という名の飲み会(笑)。
8月の海外研修での動画を、iPhoneAirDropガラケーの赤外線通信のようなもの)でやりとりして、たらふく餃子を食べました!
しかし、最後まではいられず。だって19時から観劇の予定が入っていたのです。

日本総合悲劇協会Vol.6「業音 GO-ON」@池袋・東京芸術劇場 シアターイース

【作・演出】松尾スズキ
【出演】松尾スズキ 平岩 紙 池津祥子 伊勢志摩 宍戸美和公 宮崎吐夢 皆川猿時 村杉蝉之介
康本雅子+エリザベス・マリー(ダブルキャスト

9/2(土)19:00開演、於・東京劇場シアターイースト。休憩なしの約2時間。
松尾スズキが「悲劇」に特化したユニット、日本総合悲劇協会(ニッソーヒ)の第3回として、2002年に主演・荻野目慶子で上演された戯曲の再演です。15年ぶりかあ、もうそんなに経ったのか……。
初演と再演、どちらも観た感想としては、主演女優が違うだけで、かなり印象が変わったなと思いました。今回の主演に抜擢された平岩紙ちゃん、すごくよかった! 正直、初演と再演とどちらが好みかと言われれば、初演の荻野目慶子さんの、どうしようもなく流されゆく悲しみのほうが好きなのですが、再演の紙ちゃんは、すごく「生きる」ことに貪欲なんですよね。人生が思ったようにいかず、行き当たりばったりでどうしようもない人間なのだけど、「それがどうした」と開き直って前を向くしぶとさがある。
どんづまりの閉塞感の中、死ぬこともできずにただ、生きていくのが初演だとすれば、再演は何が何でも生きてやる!という力強さが表に出てきていたように思われます。

キャストも、初演と半分以上かぶっています。
でも、ちょっと無理あるわ(笑)と思ったのは、宇都宮から芸能人入りを目指して上京してきた美少年の兄と、その妹の2人です。だって、宮崎吐夢さんが美少年役なんだよ! ゴリ押し甚だしいわ!と、見た瞬間に笑ってしまいました。
いや、美少年を演じるために、かなり体を作ったなあとは思ったんですよ? でも、吐夢さんが美少年……いやいや、どう見ても大宮か赤羽の場末の若作りホストでしょw 違った方向で面白すぎるw
初演は内田滋啓が演じた役で、ちゃんと美少年だったんですよね〜。つい比べてしまいました。

もうひとつ初演と違うところは、初演時は役名そのものが役者の実名(もしくは芸名)だったのを、再演時は仮名(というか役名ですね)に直した点。
初演がどうだったか、再演を観るまではけっこう忘れていたのですが、観ているうちに「そうそう、こうだった」「ここ、変えたんだなー」と思い出してきました。私、初演の舞台、好きだったんだなあ、と後から実感。
再演は非常に力強さのある舞台で、これはこれでいい、と思ったのですが、2点だけ「直せばよかったのに」と思った箇所を書いておきます。
まず、AIDS。たぶん、2002年の時点でも、ちょっと古かったんじゃないかと思うんですよ。AIDS発症の抑止薬があることが浸透して、かえって最近はHIV感染率が上がっているようですが、舞台でのダメ出しで出すには中途半端に古めかしい気がしました。むしろ梅毒のほうが新しいのでは?(梅毒も、この2年ほどでかなり罹患率が上がっています)
もう1点は、宍戸美和公さんが演じる老女が、終戦間際の原爆をも生き抜いてきた、というセリフ。15年前なら納得なのですが、2017年は戦後72年が経っています。ちょっと……きびしくないですか?

主演女優が違うこと、そしておそらくは、松尾スズキが当時とは異なる心境で演出しただろうこととで、ラストの印象もかなり初演とは変わっていました。
私は、初演の……舞台奥の暗がりでシュミーズが落ちるとともに暗転し、再び仄暗いスポットを当てられた女の、「嘘です。思っただけです」がめちゃくちゃ好きだったんですよね。あのよるべなさ。いっぱいいっぱいで何も考えられず、主体性を持てずに、ただ生きるだけ、の女。
それが、平岩紙になると、非常に力強い、白いライトをたくさん浴びた状態での告白になる。これが2017年ということなのか、と思いました。