俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

久しぶりに大満足!

劇団☆新感線「髑髏城の七人〜Season 鳥〜」@IHIステージアラウンド東京@豊洲市場

【作】中島かずき
【演出】いのうえひでのり
【出演】
阿部サダヲ 森山未來 早乙女太一松雪泰子
粟根まこと 福田転球 少路勇介 清水葉月 /
右近健一 山本カナコ 村木仁 /
藤家剛 工藤孝裕 井上象策 安田桃太郎 菊地雄人 伊藤教人 横田遼 下川真矢
生尾佳子 伊藤玻羅馬 岩田笙汰 大内唯 奥山寛 上垣内平 嶌村緒里江 常川藍里
東松史子 中根百合香 野田久美子 安田栄徳 山口ルツコ 山粼翔太 矢内康洋
梶原善池田成志

7/8(土)18:30開演、於・IHIステージアラウンド東京。二幕構成、休憩20分を挟む。
同じ舞台を季節ごとの「花鳥風月」に分けたうちの、今回は「鳥」バージョンです。主役の捨之介に阿部サダヲ、蘭兵衛に早乙女太一、天魔王に森山未來。極楽太夫松雪泰子、裏切り渡京に粟根まこと、抜かずの兵庫に福田転球、その息子に少路勇介、沙霧に清水葉月。また、狸穴二郎右衛門(家康)に梶原善、贋鉄斎に池田成志
この配役を見ての通り、小劇場系の芸達者を集めての、相当強力な布陣です。主要キャストのうち、新感線の舞台が未経験なのは沙霧役の清水葉月だけで、あとは皆さん、いのうえ演出の洗礼を受けており、観る前から安心感があったよね。
実際観てみて、やっぱり大正解だったよね……!



もうとにかく、楽しい!
「これぞ新感線」という舞台です。歌あり踊りありの、ショーアップした舞台にすると言われた通り、はー、もう楽しい! 面白い! わくわく感が止まらない!
主演の阿部サダヲちゃんが、とにかくがんばってました。もう、あの人エラすぎですよ。過去最年長(47歳)の捨之介だというのに、ものすごい運動量で、切った張ったの身軽な身ごなしで、体力気力、かなりギリギリなのではないでしょうか。しかしさすがの力量で、あんなに動き回りながらセリフを言わなくてはならないのに(演出家が鬼だな)、セリフが聞き取りやすいんですよ〜。うわっ滑りにならないのがスゴイ。これ、ほんとよ。

「髑髏城」は、1997年版を頂点として、主役の捨之介の影がどんどん薄くなっていたんですよね。反対に、蘭兵衛(森蘭丸)の物語がどんどん比重を増して、バランスが悪かったんです。
蘭兵衛の役が大きくなること自体は構わないんですよ? でも、一応主役は捨ちゃんなのだから、それがただの狂言回しに終わると、やっぱり物足りないんですよね。まあ、それだけ、捨之介は難しいのかもしれません。だって、役柄的に蘭兵衛のほうが美味しいもんねー。1997年版で最高の捨之介を演じた古田新太が、その次の再再演で同役を演じたときは、渋いほうに演出が傾きすぎて、物語を進める駒のひとつになっちゃってたもんなあ。
しかし、「鳥」の阿部ちゃんの捨之介は、97年版以来、初めて「主役の捨之介」を見た思いがします。
織田信長に成り代わって「天」になろうとした、「人」の男・天魔王と、いまだに信長のことを忘れられない蘭兵衛(蘭丸)と、「地」を這い世情を信長に伝える役目を負っていた男・捨之介。この3人のバランスが拮抗してこそ、面白い舞台になるのです。悪役が弱ければつまらないし、揺れる男の理由がありきたりに見えるとげんなりするし、主役が軽ければ意味がない。阿部ちゃんの捨之介が、きちんと主役を張ったからこそ、この舞台が輝いたと言えましょう。
また、天魔王の森山未來くんと、蘭兵衛の早乙女太一くんが、超絶よかったんですよね。この2人は、7年前の「ワカドクロ」でも同じ役をやっていたのだけれど、それを軽々と超えてきたよ! すごくね!? めっちゃよかったです!
特に早乙女太一くん。「髑髏城」以外でも、新感線の舞台に何度か出ていますが、今まで彼のことを「きれいだな」「さすがの殺陣だな」と思うことはあっても、ただそれだけだったんですよね。感情が伝わること少なく、いわばお人形さんのような……機械的な美しさに見えていたんです。
それが今回は、すごく心情が伝わってきました。エモーショナルな演技で、その上、美しさと殺陣に磨きがかかっているのだから怖いものなしです。ほんっとによかった。
森山未來くんの天魔王も、脚本の変更もあり(自分一人だけ、信長に顧みられなかった怒りの表出)、「ワカドクロ」のときよりも内面の複雑さが増していました。あれで振り切れる演技もしながら、笑いもとるんだから、本当にデキる役者になりましたよね。
で、太一くんと未來くんの2人の殺陣が、そりゃあもう流麗で! スピード感、美しさ、所作、完璧です。殺陣に関しては、この2人がダントツでトップ。サダヲちゃんは、忍びの者設定で刀を逆手に扱わなくてはならず、年齢(笑)と運動量オーバーで、殺陣はちょっと……うん、がんばれ。演出家、鬼だよねー (2度目)。

捨之介は、今まで着流し姿がお約束だったのですが、今回は「忍び」なので、忍者風の衣装です。サダヲちゃんは着流しが着たかったそうですが、いざ舞台で見ると、そうね……忍者風のほうが、彼の雰囲気には合ってますね。
かなりの運動量でお疲れのサダヲちゃんが、唯一、目を輝かせて全身全霊で楽しむシーンが、池田成志の贋鉄斎とのやりとりです。これは……成志、大変だなあw サダヲちゃん、容赦ないね!(笑)
福田転球さんの兵庫は、年齢にあわせて、大きな息子がいる歳だけど純粋なおじさん設定でした。息子役の小路くん、鎌さばき、がんばってー! 女はキライだ、信用できねえ、と言いながら女の尻をさわりまくるのがいいキャラでしたね。

本当に、この「鳥ドクロ」は、1997年版以来、初めて満足した「髑髏城」でした。物語の終盤で、メインキャストの7人が逆光のシルエットで横一列に並び立つ場面があるんですね。そこが、しびれるほどかっこよかったです! すごく決まってた。
この場面、97年版は鮮烈に覚えているのだけれど、他のドクロはまーったく記憶にないんですよ。でも、今回の鳥ドクロは、目に焼きつきました。なんで、あんなに決まってたのかなあ。役者の力量か、やっぱり。
というわけで、「髑髏城」としても、近年の新感線の舞台としても、本当に久方ぶりに大満足!の舞台でした。