俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

ミュシャ展

ミュシャ展@六本木・新国立美術館

アールヌーヴォーのポスター画で有名な、ミュシャの展覧会に行ってきました。
ミュシャ展(音あり注意)

今回の展示の目玉は、なんといっても「スラヴ叙事詩」全20点!!! 約6メートル×8メートルの巨大カンヴァスに描かれた油彩は、圧倒的迫力です。実際に目にすると、全部同じ大きさではないのね〜。ちょっと小ぶり(といっても、10畳はありそう)なものもありました。
ミュシャ (Mucha)」の発音はフランス語読みで、出身のチェコ語だと「ムハ」だそうです。チェコからフランスに渡り、そこでアールヌーヴォーの代表作を何点もモノしたため、ミュシャ読みが日本でも一般化したらしいですね。
以下にもミュシャミュシャしい、女性と装飾的な枠線で彩られた絵画(やっぱり綺麗でした)も展示されていますが、こちらの大半は堺市立文化館アルフォンス・ミュシャ館所蔵品です。「カメラのドイ」創業者の土居君雄が蒐集したもので、土居の死後、堺市に寄贈されたそう。すごいなー。
まあ、そちらは堺市に行けば見られるので、今回、全20点まとめては初の国外展示だという「スラヴ叙事詩」をじっくり拝見しました。細かな筆使いや彩色を見るのに双眼鏡があるといい、と言われていますが、私は美大生じゃないし、ナシママで行ったよ。だって、ああいう巨大絵画って、離れて見るのにちょうどよく作られているものでしょう。
いやはや、すごい。でかい。空間把握力というか、まとめ方がすごいわー。少しくすんだような色使いがいいなあ。ほんと、よくこんな大きな画面に描けるもの
何点か、写真撮影OKのスラヴ叙事詩があったのでパシャリ。絵が大きすぎて、写真フレームに収まりません。

「聖アトス山 〜正教会のヴァティカン〜」。光の射し込みがきれい。


「スラヴ菩提樹の下で行われるオムラジナ会の誓い 〜スラヴ民族復興〜」。左のハープを弾く少女はミュシャの娘、右の少年はミュシャの息子がモデル。真ん中は、オムラジナ会というチェコ民族運動団体の青年たちが輪になって、古代の伝説にのっとり、スラヴの女神スラヴィアに誓いを立てる場面です。
この絵画だけ、一部の人物の顔が描かれておらず、ミュシャが最後まで手を入れていたのもあって、未完成とも言われる作品。あえて顔を描き入れなかったような気がするなあ。
「スラヴ叙事詩」を描くくらいだから、ミュシャは、自分の故郷のチェコのこと、スラヴ民族のことを真剣に考えていたと思うのですね。チェコスロヴァキア共和国ができたとき、紙幣や切手、警官の制服までノーギャラでデザインしたくらい。紙幣の女性モデルが、自分の娘なのはご愛嬌です。しかし、スラヴ民族の連帯と統一を願った汎スラヴ主義は、ミュシャの晩年には時代遅れになっていました。さらに時代くだって、ユーゴスラヴィアの内戦解体と民族浄化の凄惨さ、チェコスロヴァキアの無血解体、ソ連解体後のいざこざを思うと、現実の「連帯」の難しさに思いを馳せずにはいられません。


「イヴァンチツェの兄弟団学校 〜クラリツェ聖書の印刷〜」。ミュシャの生まれ故郷を描いた作品。左下にいる少年(2枚目参照)は、ミュシャの若かりし頃の自画像だそうです。


「スラヴ民族の賛歌 〜スラヴ民族は人類のために〜」。正面の男性が手に持つ輪は、スラヴ民族連帯の象徴である「ソコルの輪」でしょうね。ここではお花の輪っかですが、他の絵画では、フラフープみたいなソコルの輪が、あっちでもこっちでも出てきます。
さて、ご興味のある方へ。「スラヴ叙事詩」各作品の説明は、Wikipedia「スラヴ叙事詩」をどうぞ。

だいたい2時間半〜3時間くらいで見ました。混んでいたけれど、入場制限はなかったですよ。あ、券売機はけっこう並んでました。私はwebチケットで入場したから、並ばずに済みましたね。
てか、同時開催の「草間彌生 〜わが永遠の魂〜」のほうが凄かった! めっちゃ人並んでました。美術館の木も草間彌生仕様でしたし、なんか力入ってたな〜。野外展示の、草間さんの南瓜だけ見てきました。

最後に、地下1Fのカフェテリアで、ミュシャ展特別メニューを早めの夕飯として頂きます。

「グーラッシュ風ビーフシチュー バターライス添え」。“やわらかく煮込んだ牛頬肉をチェコの伝統料理「グーラッシュ」仕立てに。相性の良いバターライスと共に”だそうです。うーん、まあ、ビーフシチューかな……。こんなとき、自分のバカ舌が悲しいッス。