俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

12年ぶりの再演

阿佐ヶ谷スパイダース「はたらくおとこ」@下北沢・本多劇場

【脚本・演出】長塚圭史
【出演】池田成志 中村まこと 松村武 池田鉄洋 富岡晃一郎 北浦 愛 /中山祐一朗 伊達暁 長塚圭史

11/12(土)19:00開演、於・下北沢本多劇場。上演時間は2時間半。
2004年4月初演の芝居を、12年ぶりに、当時のキャストをそろえて再演です (女優のみ新規)。今年は阿佐スパ結成20周年で、再演希望No.1の今作を同じキャスト、同じ劇場で上演するというので、行ってきましたよ。

阿佐スパの作品では、私も「はたらくおとこ」がダントツで一番好きです。それだけに、同じキャストといっても12年経っているでしょう? 同じだけど同じじゃない、初演時の衝撃や感動が悪い方向に上書きされたらどうしよう、と期待半分、恐れ半分で下北沢に行ったんですよ。

……まったく問題なかったよね!
この作品はとにかくラストがよくて、そこにすべてが持っていかれるのだけれど、私、そのラスト部分しか覚えてなかったですわ。いや、観れば「そうだそうだ、こういう展開だった、設定だった」と思い出すんだけど、それまでスコーンと忘れてる感じ。舞台セットなんかは覚えていたんですけどね。初演のほうが、もっと簡素な事務所っぽかったような気がします。
はー、池田成志がよかったなあ。この人、やっぱりかっこいい! 新感線のおポンチばかり観ていたものだから、成志を見ると反射的に笑ってしまうことが多かったのですが、今回は違ったね。実力派俳優ですよ。なのにTVだと、どこか過剰なのよね……舞台向きの人なのだと思います。
初演時は、中村まことさんに目がいったものだけれど、それは今回もそうだけど、それよりも成志に惹かれました。なんだろう、初演時よりも、どうしようもない男のつらさとか、ずるさ、気弱さがよく出ていたように思います。
初演時と同じキャストについては、申し分なし。伊達ちゃんはもう40代に突入したのに、若いチンピラ感が損なわれていなくて笑いました (褒めことば)。年齢不詳でいうと、松村武ね! もともと老け顔でしたが、初演時とぜっっっんぜん変わってないわー。こちらも笑っちゃうくらい同じでしたわー
今回お初の北浦愛さんは、下手じゃないけど、諦念が薄かったな。自分に自信がなくて、言い寄る男に好きにさせてしまう悲しみに欠けてた。これでは一歩間違えると、ただの尻軽女になっちゃうよー。

私も長塚作品を観るのが久しぶりで、グロ表現が出てきたとき(あっ……この頃はこういうの多かったな)と、しみじみしてしまいました。まあ、やっぱり気持ち悪かったですけどね(笑)。でも、この作品では、その表現が必要なので、ウェーと思いながら観てました。
ラスト直前の、蛍光色のアレの部分、初演時よりしつこかったような……?
そして、やっぱりラストは、何度観ても心が締めつけられるものでした。
中村まことさんが演じた「茅ヶ崎」さんは、知っていたのだろうか、それとも知らなかったのだろうか。成志の最後の告白は、実際にされたのだろうか、されなかったのだろうか。現実にどうだったのか、なんてどうでもいい。中村まことさんの、ラストの一言にすべてがあります。

ちなみに、初演時の感想はこちら(id:orenade:20040407)。
今回(再演)の東京公演ダイジェストは下記。