俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

関西旅行【奈良2日目】維新派!

関西旅行、2日目の朝です。といっても、昨日はお宿に着いただけのようなものですけどね〜。
JR線で行ける法隆寺に行くか、東大寺か、どこに行くか迷いましたが、無理はせずに「ならまち」を歩くことにしました。夕方16時過ぎには、観劇のため、平城京に行きたいのです。ランチタイムを勘案すると、法隆寺には行けるけれども、その周辺をめぐる余裕はなさそうだし、東大寺は混んでそう。東大寺以外の奈良公園は、春日大社も含めて、昨年行ったんですよね。
まずは土産を先に買い込み、ホテルに置きに戻ります。夕方からの野外劇に備え、防寒グッズを入れたトートバッグを持ち、簡易ギブスを外して、手首サポーターに切り替え。ギブスだと、夜に羽織りたいコートの袖が通らないんですよ……(医者には了解済み)。

体力温存のため、JR駅前からバスに乗り、ならまちへ向かいます。
ならまち(奈良町)は通称の地名で、地図で見ると奈良公園の下にある、奈良の旧市街地です。旧い町並みが残っている地域で、京都の町家とは少し違った趣がありますよ。

身代わり猿の庚申堂と、蚊帳ふきんの会社。けっこう、歩いているだけで1時間経っちゃいますね。

少し早めのお昼。「あしびの郷」で、おつけもの御膳です。他のお茶屋さんで、わらび餅をお昼代わりにするか、最後まで迷った(笑)。
ごはんを頂いて元気を取り戻してから、ならまち内にある元興寺へ。地味だけど世界遺産でっせ!

元興寺の極楽堂。地味だけど国宝です。こちらと禅室の瓦の一部は、飛鳥時代の丸瓦が使用され、葺き方も違うのだとか。

禅室。曇り空なのもあって、写真が暗くてごめんなさい。
さて、この秋の奈良は、日中韓「東アジア文化都市」の日本側の都市として選ばれ、「古都祝奈良(ことほぐなら)― 時空を超えたアートの祭典」を開催中です。観光名所で現代アートを展示したり、劇を開催したりするんですが、ここ元興寺でも、そのプログラムの一環で現代アートが展示されていました。
キム・スージャ(韓国)の「演繹的なもの」(石舞台)。


ならまちの次は、近鉄線に乗り、大和西大寺駅へ。駅ナカの麺類の店が、関東だと「そば・うどん」のところ、関西らしく「うどん・そば」表記で、メニュー写真もうどん押しなのに感心してしまいました。

それはさておき、この駅からは西大寺と、秋篠寺や平城京跡などに行けます。秋篠寺にも行ってみたいところだけれども、時間がないので、西大寺を拝観してから平城京跡へ行くことに。
西大寺駅から5分ほど。真言律宗総本山で、奈良時代の創建です。

ならまちの元興寺もそうだったけれど、奈良のお寺って、敷地内に建物がドデーン!とあって、庭がないんですよね。京都だと、庭と寺社仏閣が渾然一体となっているじゃないですか、でも奈良は建物!仏像!おしまい!そんな感じ。
西大寺も「古都祝奈良」のアート展示会場でした。アイシャ・エルクメン(トルコ)の「池からプールから池へ」。

古都祝奈良HPによると、「西大寺の池をシルクロード東端の奈良に見立て、隣にプールを制作。……プールと池を繋ぎ、水を浄化、循環させる装置をアートとして見せます」とのことだけれど、まあ、なんつーか、……児童公園の子供用プール? 現代アートが分からない人間ですみません。

15時半になり、そろそろ平城京跡へ行く時間になりました。
駅に戻り、そこから歩いて20分ちょいかな。奈良タウンを離れると、大和路はのどかなものです。
そして、平城京跡は、復元した大極殿 (だいごくでん) と朱雀門、あとは平城京跡資料館くらいしかない、本当になーんにもない、だだっぴろい野っ原でした。空気がよく、金木犀の匂いがよく香ったなあ。ススキとセイダカアワダチソウの群生がきれいでした。平城京跡資料館も、なかなか面白かったですよ。

維新派「アマハラ」@奈良・平城京

この平城京跡の一劃で、劇団維新派が野外劇「アマハラ」を公演中なのです。これも「古都祝奈良」の一環。
実は、維新派の主宰であり演出家であった松本雄吉さんが、今年6月18 日午前3時25分に食道がんで亡くなりました。享年69歳。維新派は、本公演をもって解散されます。
昨年の秋に病気がわかり、劇の演出をしながら闘病されていましたが、残念ながら「アマハラ」公演には間に合いませんでした。今回の「アマハラ」は、2010年の犬島公演「台湾の、灰色の牛が背のびをしたとき」の再構成で、舞台は廃船をイメージしたもの。生前のノートや松本さんが話していた内容を基に、劇団関係者全員で作り上げられた舞台です。
維新派「アマハラ」松本ノート手がかりに、平城宮跡に“廃船”浮かべる - ステージナタリー

開演1時間前から、野外会場前につくられた「屋台村」が営業を始めます。これが維新派の舞台の楽しみのひとつでもあります。

身体が万全だったら、ビールお代わりして、もっと食べるんだけどな〜! キリンの一番搾り「奈良づくり」と餃子で、軽めの腹ごしらえです。舞台がハネたあと、サムゲタンとカレーを食べて帰りました。

客席から撮影した舞台。1枚目は開演前、2枚目は終演後。写真だと全然伝わりませんが、最後に舞台の照明が落とされると、目の前の廃船の先に、黄金に輝くススキの海が見える仕掛けです。ナウシカの「その者青き衣をまといて金色の野に降り立つべし」を思い出しちゃいましたよ。

ところで、肝心の舞台「アマハラ」ですが……とてもよかったです!
初演にあたる2010年「台湾の、灰色の牛が……」も観劇していますが (当時、忙しくて感想は書いてない)、初演もすごくよかったけれど、再演(再構成)のもよい! 初演時に比べて、音楽がより派手に、ドラマチックになっていました。台詞は、それほど改変されていなかったように感じましたが、削られていたところもあって、意外と自分覚えているな、それだけ初演がよかったんだな、としみじみ思いました。
もう、維新派の舞台が観られなくなるのが本当に寂しいし、残念ですが、これも演劇の一回性ですね。蜷川幸雄さんが亡くなったときも思ったけれど、演出や演技はその人だけのもので、いなくなったら、もう見られない。ああ、でも、もう少しだけ、もっと観たかったなあ。
そう思った人が大勢いたのか、この最終公演はチケットが数日で完売、当日券も毎日、長蛇の列だったそうです。松本雄吉さんを偲ぶ祭壇のようなものが、会場外にそっと飾られていました。今まで素晴らしい舞台を観せていただいて、ありがとうございます。最後の数年間だけでも、維新派の舞台を観られて幸せでした。