俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

F/T(フェスティバル/トーキョー)

マレビトの会「石のような水」@にしすがも創造舎

【脚本】松田正隆
【演出・美術】松本雄吉
【出演】小坂浩之 酒井和哉 筒井潤 西山真来 幡司健太 増田美佳 森正吏 山口惠子 和田華子

12/1(土)19:30開演、於・にしすがも創造舎。上演時間は約2時間。
演出の松本雄吉さん(劇団維新派・主宰)が好きなので、観に行ってきました。
「F/T」、フェスティバル/トーキョーの一環として、にしすがも創造舎にて公演。「F/T」とは、「東京芸術劇場をはじめ池袋エリアに集積する文化拠点を中心に開催する、日本最大の舞台芸術のフェスティバル」です。都も関わっているフェスティバルで、海外からも多く舞台公演を招いており、かなり国際的な印象ですね。
脚本の松田正隆さんは、「マレビトの会」の主宰者です。すみません、私、存じ上げませんでした……。黒木和雄監督の遺作となった「紙屋悦子の青春」の原作者だったんですね。
その松田正隆さんが、演出に維新派の松本雄吉さんを迎え、旧ソ連の映画監督タルコフスキーの作品をモチーフに作った作品が、今回の「石のような水」です。
なんか……なんかもう、いろいろゴメンナサイなんですけれど……タルコフスキー監督の名前は知っていても、作品を観たことありません。無知が恥ずかしす。
なので、どこがどうモチーフなのかは分かりませんが、観劇後の印象は「静か」でした。終わりのない日常と、破滅を分かっていても遭遇してしまう悲しみ、その悲しみの底に凝る不思議な安穏。
会話と、出演者たちの(文字通り)立ち位置から、彼らの関係性が読み取れます。芝居っけを極力排した、リーディングのような演出。でも役者は、棒立ちして棒読みしてればいいわけではないので、底力が必要ですね。夜のラジオが、私にはひとつのファンタジーのように思えました。

松田正隆さんは1962年、長崎県生まれ。彼のテーマのひとつに「原爆」があるようです。今回の舞台でも、隠れキリシタンの「オラショ」が出てきましたし、生まれ育った土地への情念、もしくはそこからの影響を感じます。
舞台中、日常の延長上に突如あらわれた異世界の「ゾーン」が語られます。「『ゾーン』のそばの住民たちは自主避難……」というような台詞もあり、「ゾーン」に行く者、戻ってきた者、帰る者、境界線まで行く者が、それぞれ語っていきます。そういう物語に、いちいち3・11を感じる私もまた、ゾーンをどこかで意識しているのかもしれません。