俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

読んだことがない南米文学

2週連続で観劇です。14時開演ばんざい。マチネも、昼12時台はつらいので、これくらいの開始時間がいいよね〜。
帰りに、渋谷Loft で、まな板立てを購入。それから別の乗換え駅のデパ地下で野菜買ったり、本屋で漫画買ったり、いろいろしました。充実の日曜!

世田谷パブリックシアター「南部高速道路」@シアタートラム

【原作】フリオ・コルタサル『南部高速道路』1966年刊
【構成・演出】長塚圭史
【出演】真木よう子 黒沢あすか 江口のりこ 梅沢昌代 植野葉子 安藤聖 赤堀雅秋 梶原善 加藤啓 小林勝也 菅原永二 裵ジョンミョン 横田栄司安藤聖を基点に、五十音順)

6/10(日)14:00開演、於・世田谷シアタートラム。上演時間は約2時間。

さて、長塚圭史の構成・演出で、原作……原案というのか、は、アルゼンチンの作家フリオ・コルタサルの短編小説「南部高速道路」です。小説を読まずに観劇。実は、南米文学を読んだことはないんですよ*1ボルヘスマルケス! しかし文学史的に「マジック・リアリズム」なのだ、という半端な知識はある、要は頭でっかちなんですな。
つまり、私の意識下で南米文学はマージナルである。そして長塚圭史の作風もマージナル。ゆえに、相性はいいだろうと勝手に決めつけておりました。んで、観劇後の今、そうだったなあと思ってます。

役者陣がよかったですね。
江口のりこさんの、地味な「運命の女」ぶりが如何にもでした。運命もしくは転機って、さりげなく来るよね。そして通り過ぎていく。
小林勝也さんて、俳優座所属だったんかー! 彼持っていた風呂敷包みの大きさや色柄が、数年前まで地下鉄でときたま見かけた、行商の女の人の大荷物とダブって面白かったです。そうそう、疲れると、その風呂敷で包んだ四角い荷物の上に座るのよ。
菅原永二さんは、相変わらず、ぬめりのある二枚目でした。梶原善ちゃん、太った? 真木よう子さんは、あまり「真木よう子」という感じはせず、埋没してた気がする。

日曜の昼下がり、都心に戻る高速道路は、車の長蛇の列。郊外で休暇を楽しんだ人々の車で、週末の高速はいつも混んでいる。だが、「いつもの」渋滞とはちがう、原因不明の渋滞に巻き込まれた人々を描いた舞台です。
いつまで経っても出口のない渋滞。
最初はいつもより長引く渋滞、程度に思っていた人々が、不安にかられ、反撥、それぞれの受容に至る過程が、「死の受容」の五段階と似ているな、と思いました。すなわち、
否認―怒り―取引―抑鬱―受容、です。善ちゃんの役は、それに加えて「欺瞞」かなあ。
最初は交わらない、点でしかなかった人々が、コロニーをつくり、線や丸となってつながっていく。そうして、人々が心優しく、分かりあえたと思った瞬間に、車の流れは動きだし、あのひととも、このひととも、否応なく離れ、流される。途切れる。
圭史の作品「 アンチクロックワイズド・ワンダーランド」「荒野に立つ」などと、多重構造の具合が似ているかもしれません。今回の物語の最後、どう捉えるかは観客次第。私は、白昼夢だと思いました。人生なんてそんなものさ。

*1:と思ってたけど、ちくま文庫マルケスエレンディラ』だけ読んでたわ。