俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

K2

うわーい、今日は盛りだくさんな一日だったよ。
大急ぎで用意をして趣味の講座からグループに出席、帰りのミーティングに滞空時間25分で退席 (しかし自分の分担事項は責務を果たした)、地下鉄に飛び乗って三軒茶屋へ。堤真一×草なぎ剛の二人芝居「K2」を観てきました! チケット取れてよかったよほんと。
観劇後は、同行者と二人で焼き鳥屋で飲み。感想を言い合ったり、中村明日美子の漫画の話とかしてたら、山手線から先の終電に乗り遅れたった。迂闊。三茶はやっぱし遠いわ。

堤真一×草なぎ剛「K2」

【脚本】パトリック・メイヤーズ
【翻訳】小田島雄志
【演出】千葉哲也
【出演】堤真一(ハロルド) 草なぎ剛(テイラー)
http://www.siscompany.com/03produce/30k2/index.htm

11/20(土)19:00開演、於・世田谷パブリックシアター。上演時間は1時間45分。堤真一×草なぎ剛の二人芝居で、シス・カンパニーのプロデュースです。「父帰る/屋上の狂人」以降、草なぎ君の舞台プロデュースはシスカン続きだわね。
草なぎ君と堤さんは、TVで共演して以降、仲がいいお二人。演出の千葉さんは、私は役者の顔しか知らなかったけれど (それも新感線の「IZO」「蛮幽鬼」、偏っているかもしれん)、演出もよくされているのね。演出家として拝見するのは初めてだけれど、堤さんと千葉さんが、これまた仲がいいらしい。三方仲がよろしいということは、息の合った芝居が観られるはずだ。うん、よろしかったです。草なぎ君の前回の舞台「瞼の母」より、ずっとよかった。あれのいいとこは暗転の処理くらいで、なんつーか、観ててつらかったもの。

アメリカの劇作家、パトリック・メイヤーズが1982年に発表した戯曲。難易度の高さから「非情の山」とよばれる「K2」に登頂した2人のクライマーが、下山時に遭難、断崖氷壁の岩棚から身動きがとれなくなり……という話です。いやもう、バリバリの翻訳劇! なんでアチラの人って、滔々としゃべるのかしらねえ。1982年発表とあって、時代がちょっと古いかな。翻訳は、個人的にシェイクスピアなイメージの小田島雄志。過去に2回、日本でも上演されてて、そのうち1回は加藤健一事務所でした。カトケン、はずさないぜ!

さて、今回の舞台に話を戻す。演出はオーソドックスでシンプル。演者二人は、とにかく覚えるのが大変だったろうな、と思わせる山の装備や手つきでした。けっこう本格的なのでは。これ、山男に観てもらって感想を聞きたいですね。堤さん演じるハロルドは事情があって動けず、主に草なぎ君演じるテイラーがロック・クライミングさながらに氷壁をのぼり、ザイルで垂直降下などします。まじでザイル1本でやってた。え、命綱ないの? と、こちらが心配になったくらい。そのザイルの安全確保している堤さんも、地味にすごいです。さすが「クライマーズ・ハイ」をやった男。
草なぎ君のテイラーは、イタリア系の検事補34歳で独身、感情の起伏が激しい設定。対する堤さんのハロルドは、哲学的な思考をもつ物理学者で家庭を愛し、テイラーのお兄さん的存在。
テイラーの感情が激する部分は、草なぎ君はまだ無理が出てたかな。あと、どうしても滑舌が悪い。翻訳調の台詞で長いから、って実際翻訳なんだけど、よけい目立つね。うまいなーと思ったのは、テイラーの弱さや、横顔を映すあたりですね。この人は、こういう心のほころびを見せるのが、ほんとうまい。「助けてくれ」と「わかった」は、すごくよかった。特に最後の「わかった」は、その予想のつく返事をどう演ずるか、注目どころの演技だったので、よけいに響いた。最後の見つめ合い、余計なアクションをお互いに入れないところもいい。
ラストをしめたのは、ハロルドの堤さん。アニキかっこいいぜ! 包容力ある男をよく演じてます。しかし、急にキタキツネの話が出てきたのにびっくり。このへんの展開が翻訳劇で、かつ脚本の古いとこだよなー。個人的には蛇足 。あ、堤さんが蛇足なのではなく、脚本の台詞が付け足しに聞こえてもったいない、ということです。
二人の芝居が向き合っていて逸らさず、沈黙と表情がよかったです。

テイラーのはハロルドに対する信頼が、彼の女嫌いと相まって (愛を失うのがこわいから恋人をつくらない、と言うが、本質的に女を信用していないのだと思われる)、ほんのりBLに見えました。はっきり書かれてませんし、ハロルドもテイラーをそう見てないだろうし、テイラーも自分をそうだとは思ってないだろうけれど、ま、男同士の友情は、多分にそういう要素を含みますよね。それが意識にのぼるか、嗜好として発現するかどうかの差だと思ってます。念のため書き添えておくと、女嫌い=ゲイ、とは思ってませんよ。

山の話として思い出したのが、井上靖氷壁」。といっても原作を読んだことはなく、NHK土曜ドラマで、玉木宏山本太郎鶴田真由の三角関係でした。玉木宏山本太郎がプロ登山家のパートナーで、親友。そこに女がからむことで、友情から少し離れてしまうのだけれど、ドラマ版では、山がK2だったんですよね。山は厳しい。そして美しい。