俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

夢の世界

この布を買いました

今年は一体に天気が安定しない。昨日は晴天、今日はどんどん日が翳って、夕方には雨が降りそうな気配。早々に布団干しをやめ、巣ごもりしていたが、さてどうしよう。観たいと思っていた映画が、今月18日で終わっちゃうのよね。
結局、外出することにした。映画館のある渋谷に行く前、谷中まで大回りする。先日迷った布を、悩みに悩んでやっぱり購入。来年以降の励みとしよう。
店主の方と少し話したあと、急いで渋谷まで移動。JR日暮里駅の駅ナカは、小さいながらも楽しいね〜。展示にのせられて、ヒイラギ模様の手ぬぐいハンカチを買ってしまった。500円の幸福。
で、上映10分前に劇場到着。「パリ・オペラ座のすべて」を観てきましたよ。

F・ワイズマン監督「パリ・オペラ座のすべて」@ル・シネマ

渋谷Bunkamura、ル・シネマにて、「パリ・オペラ座のすべて」(フレデリック・ワイズマン監督) を観てきた。劇場たるオペラ・ガルニエの表裏が目当てだったが、映画はオペラ座のバレエ団が主軸だったのね。よく考えたら、そりゃそうだ。
その程度のバレエ門外漢なれど、なかなか楽しめました。160分の長尺で、ときどきバレエ風景が長く思えちゃったりしたけれど、やはり一流ダンサーの肉体はすごい! そのバネ、しなやかさ、跳躍、振付の解釈力。踊り手も一流ならバレエ教師や振付師も同様で、注文が高度かつ細かい。「その踏み込みはちがう」「膝から下を使って」「腕を大仰に回すんじゃない、体ごと回転するんだ」「音楽(の合図)より前に出てきてはいけない」……果ては、教師たちの間で解釈に異同ができ、ダンサーそっちのけで軽い言い合いになったり。仏語ではなく、英語でレッスンをつける教師もいたなあ。ワールド・ワイドですね。
レッスン風景もさることながら、ゲネプロでの振付師、教師たちの遠慮ないおしゃべりが面白い。「チュチュが長過ぎる」「今の踊りはダメだね」「この二人はいいね、息があってる」レッスン時に高い跳躍を見せた男性ダンサーが、ゲネプロでも溌剌と華やかな踊りをしたときには「……いいね」「跳躍が高い、いい動きをする」と感心したようにつぶやく。ここが監督のにくいところで、教師たちだけでなく、観客にも「あのときの人だ」「やっぱりね」と気づかせるような画づくりをしてるんですね。さすが!
ダンサーたちの膨大な練習風景や本番のカットの折々に、オペラ座の地下通路や屋根上の養蜂、社員食堂まで映し出される。そして公演を支えるスタッフたち。衣裳、照明、メイク、みんな地道で無駄がない。オペラ座をチャキチャキと仕切る芸術監督は、いかにもやり手という感じだが、それ相当の苦労があることがフィルムを追ううちに伝わってくる。若手育成がうまくいっているか心配し、古株ダンサーの不満を聞いてやり、調整する。アメリカから大口の寄付をとりつけようという件りや、年金制度の改革でダンサー一同に説明会を開いたときのやりとりなど、なまなましいくらいだ。オペラ座のダンサーたちは国家公務員扱いで、定年40歳なのねえ、知らなかったわ。本当に特殊な、過酷な職業だものな。
私が好きなショットは、ゲネプロや本番の最中の舞台。舞台袖で衣裳をつけたダンサーたちが出待ちで、ひたと舞台を見つめている。暗い舞台袖から、明るい表舞台へ。華やかな古典バレエから、コンテンポラリー「メディアの夢」のような重苦しい悪夢まで、それでも舞台の上にあるのは「夢」である。今日のダンサーの動きは、明日はもうちがうもの、二度と観られない。我々は一夜の夢をもとめて劇場に行くのだ。
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