俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

観劇2回目

「蛮幽鬼」劇場2Fのオブジェ。

蛮幽鬼」2度目の観劇。12時に新橋演舞場は、まじきつい……。
詳しい感想は後日に譲るとして、初回を踏まえた、かんたんメモ。
早乙女太一くんが格段に進化してた。殺陣は固いわ、台詞をしゃべるお人形さんだったのが、スピード感ある華麗な剣さばきに! すばらすぃ〜。ちゃんと、台詞からも実が伝わってきました。若い子の吸収力すげー。
・千葉さんの、前半後半の落差が、より際立っていた。前半のいやらし〜い偽善者、後半の悪党ヅラがたまらん。
・堺さんの笑顔が、凄みを増してますねえ。
・ところで主役はどこですか。
・で、いのうえさんが描きたいという「人間ドラマ」って、なんですか。どういうのが「人間ドラマ」なんですか。
・けっこう文句たれてた「蜉蝣峠」の方が、「蛮幽鬼」よりも、人物の心理面において納得できる。
・というのも、土門vsサジの関係が薄っぺらくてかなわんから。ラストに至るまでの理由づけが弱すぎ。そこまで持っていく台詞も浮いてる。そう思ったわけを書く時間がない(絶対長文)ので、後日。
稲森いずみ好演、山内くんも型からはみ出し、自由になってきている、聖子ちゃんに泣かされる日が来ようとは。
「かんたん」と書いたわりに、長いですね。毎度すみません。

劇団☆新感線 いのうえ歌舞伎 SHOCHIKU-MIX「蛮幽鬼」@2回目

【脚本】中島かずき
【演出】いのうえひでのり
【出演】上川隆也 稲森いずみ 早乙女太一
    橋本じゅん 高田聖子 粟根まこと
    山内圭哉 山本 亨 千葉哲也
    堺 雅人 /
右近健一 逆木圭一郎 河野まさと 村木よし子 インディ高橋 山本カナコ 礒野慎吾 中谷さとみ 保坂エマ 村木仁 川原正嗣 前田悟 ほか

10/4(日)12:00開演、於・新橋演舞場。第一幕12:00〜13:45/休憩30分/第二幕14:15〜15:30。休憩時間も含め、3時間30分。
詳しい感想を書くつもりでしたが、上記のかんたんメモで、ほとんど言い尽くしとる……。
それでも蛇足を。
蛮幽鬼」の評判、私の周囲ではおおむね評判がよいです。久しぶりに新感線らしい! とか、堺雅人がいい! とか。たしかに堺雅人はいい。早乙女太一くんも、最初に観たときより格段の進歩をして、ちゃんと芝居になってました。初回は「この子が評判の女形というなら、世間の評判もたいしたことないな」と切って捨ててましたが、いやあ、流れるような剣、美しい舞、どんどん芝居がこなれていって、お人形に生命が吹き込まれる過程を見た気がしました。今後の活躍を期待します。
ほとんどの役者さんがうまく、きちんと見せてくれるのだけれど、主演の上川隆也。彼の役が、あまりにも損で、いたたまれない。いのうえ歌舞伎の主演だよ! 新感線・いのうえ歌舞伎の主役というたら「文句なしに格好いい」、色悪かピカレスク・ロマンか、なんでもいいけど、かっこよくて胸がすく、好漢、快男児が基本でしょ。ぜんっぜん、何コレ。主役は上川さんじゃなくて、堺くんじゃない。
今回のモチーフは「巌窟王」と聞いて、TVや芝居で見飽きた“いいひと”、ホワイト上川ではなく、ブラック上川が観られる! と思っていただけに、従来のイメージ通りの役柄でがっかり。これって「SHIROH」でしょう。SHIROHの上川さんは好きですよ。でも、「蛮幽鬼」ではちがう上川さんが観たかったよ。「天保十四年のシェイクスピア」「SHIROH」とはちがう、新たな地平の上川さんが観たかったのに。がっかりだよ!
正直、甘い人物像の上川さんは飽きました。確かに、彼の持つ誠実なイメージや、冷血になりきれない温かみが求められたのは、脚本上わかる。でも、それって「まんま」ではありませんか? つまらん。だいたい、こういうタイプは復讐に走らないと思います。復讐のための脱獄ではなく、無実を証明するために脱獄するほうが、しっくりくる。でもそれじゃー、話が転がらないんだな。まず、この時点で私は脚本にダメ出しします。
そして、ラスボスが弱い。
堺雅人さんを、ああいう役柄に設定したのは面白いし、あんな運動神経の鈍そうな人が殺陣をやりきっている姿には、ちょっとホロリとしました。初日のカーテンコールで本人が言ったそうですが、小学校のときの通信簿、体育は「2」だったそうですよ。でもね、ラスボスとしては弱いのよね。やはり堺くんは参謀タイプなのですよ。ラスボスの脇でささやいている、栄養の悪そうなヒョロリ系小悪党だったらよかったのに。で、ラスボスにも騙されて「よくもわたしを、わたしを……裏切ったなああああああ!」と絶叫してほしい。
すみません、妄想が過ぎました。ラスボスの話に戻します。今回は、土門(上川)の「敵」が、ことごとく弱いのがノリきれない一因でもありました。山内圭哉粟根まことを仇と思い定めて十数年……と言われても、あの二人では軽すぎる。黒幕は別にいるとわかっていても、「あの二人に復讐を思いつめて十数年」の時点で「あんな小者にナイナイ」と思っちゃう。あ、小者とは役の格から見て、ですよ。

要するに、私の不満は「上川隆也がいつも通りの役でがっかり」、この一言です。あと、冒険活劇に人間ドラマをもたせようとしたのか、脚本の無理が目立ったのも大きい。舞台にはまったときは、粗なんぞ気になりませんが、今回は、粗のひとつひとつが嫌気に拍車をかけました。たとえば、土門のサジに「親友だ」発言。嘘くさー。どこまで本気の台詞なのか。土門の、サジに対する揺れる感情(友なのか、ただの手駒なのか)が伝わりづらい。全般的に、土門の感情の説明不足が目立つ (主役なのに……)。ゆえに、上川さんの個人イメージに頼らざるを得ないわけです。あの薄っぺらい役をがんばって演じて、ふくらみを持たせたのは、上川さんの健闘の結果ですね。
サジはほんと、もうけ役だと思う。堺さんもよく演じました。大人になることを拒否した子だよね。彼に対しては、説明を加えない手法が非常に効果的でした。
土門―サジの軸でいくのかと思いきや、途中で土門―美古都(稲森いずみ)の男女恋愛路線が入り、けっこうな主軸になったので、「ふーん」と思ったり。稲森いずみがかなり魅力的だったので、気にならなかったけれど、新感線は恋愛要素を入れても、実は男―男の対決が主軸のことが多いじゃないですか。今回は恋愛パートの比重が大きくて、最後の男―男の対決に戻ったとき、一度回線がブツ切れになった感触がしました。
あと、個人的にいやだったのは、宗教を安易につかったことですね。
最後、書き忘れてましたが、右近さんの大王(おおきみ)が、久方ぶりのヒットです。右近さんがやればできる子なの、忘れてました! これはかなりいい。いつもこれくらいやってくださいよ。