俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

「蜉蝣峠」観劇初回

orenade2009-03-14

劇団☆新感線 いのうえ歌舞伎・壊<Punk>「蜉蝣(かげろう)峠」

【脚本】宮藤勘九郎
【演出】いのうえひでのり
【出演】
古田新太 堤 真一 高岡早紀
勝地 涼 木村 了・梶原 善・粟根まこと 高田聖子 橋本じゅん
右近健一 逆木圭一郎 河野まさと 村木よし子 インディ高橋 山本カナコ 礒野慎吾 吉田メタル 中谷さとみ 保坂エマ /
村木 仁 少路勇介 川原正嗣 前田 悟 / 他

3/14(土)18:00開演、於・赤坂ACTシアター。上演時間は3時間 (20分の休憩含む)。カーテンコール等で、実際に席を立ったのは21時をけっこう回っておりましたが。
プレビューを含めると、今日で通算3日目と、かなり早い段階での観劇。FC優先で取った席が、行ってみたら右2席・左2席のどちらにも知人の顔。「え……?」顔を見合わせたとたんに、お互い笑っちゃったよ。偶然というにはスゴすぎる。

それはさておき、感想をば。いのうえさん、クドカンに食われてない?
脚本が、遠慮なくクドカンでした。TVドラマのクドカン脚本しか知らないと、容赦ないダークさに戸惑うかも。ここ数年の宮藤さんは活躍の場(映像・バンド・芝居)によって、面を使い分けてるよね。芝居では、彼の虚無的な世界観が全面的に出てきます。日本で、こうも乾いた闇を書ける人は少ないのではあるまいか。師匠の松尾さんがあんだけウェッティなのに! 宮藤さんの脚本は、虫の眼だ。状況説明だけで主観がない。幻想(ファンタジー)を排したドライさがある。要するに救いがない。乾いているから重くはないんだけれども、だからこそ怖ろしい。松尾スズキさんや長塚圭史のほうが重くみえて、実はクドカンより優しいよ。
“いのうえ歌舞伎・第二章”では見なかった、歌が復活。楽曲はおなじみ岡崎司さん、歌詞は宮藤さん。流れるメロディは新感線なのに、歌詞がグループ魂という不思議。1曲だけ、司さんがぐるたまっぽく、やってくれました。本当に、宮藤さんがこんなに「色」の強い脚本家だと思わなかったなー。彼の脚本を演出するのは、相当大変だと思う。読みこなして、明確なイメージとスピードを保たないと失敗しそう。そこはさすがに、いのうえさんですね。

主役の古田さんは、正直、食い足りませんでした。「五右衛門ロック」よりはセンターだったけれど、主役なのに、どこか脇っぽいのですよ。空っぽだった男の「闇」の深度が、伝わってこないのよね。堤真一のほうが魅力的だったなあ。立ち姿がえらくかっこよかった! 後半の見せ場・古田×堤の殺陣も「つっつん、いつの間に、こんなに殺陣うまくなったの?」と思うくらい、スピードとキレがあり、姿も見よかった。「野獣郎見参!」のときは、“腰高の棒立ち殺陣”と悪口いってごめんね。今回は反対に、古田さんの腰が浮き気味なのが気になるわ。
堤さんの役(天晴)は、「用心棒」の仲代達矢を頭の片隅において観た。モチーフのひとつというだけで、他の要素も入っているのは承知だけれど、つい二重写しにしてしまって。堤さんの天晴は、闇太郎が来る前の投げやりな絶望感が、もっと出るといい。浮世は「憂き世」で、濁世の未練は姉だけ、面白くもない現実に居たくないから酒を飲む。セリフからはそう読み取れるが、もう少し身体からも、心の沈潜がにじみ出るといいね。そうでないと、闇太郎以後の興奮と、最後の手のひら返しが唐突になってしまう。
勝地涼くんは、あまり好みの子でないけれど、うまいですね。1幕目は「このひと、そんなに必要?」と、ひどいことを思っていたが、お菓子ちゃん以降、ぐんぐんよくなってます。ちゃんと「身」が入ってた。この役の使い方も、クドカンらしい。木村了くんは初見ですが、舞台映えする顔立ちですな。
ところで、この舞台では1人2役が、ちょいちょい出てくる。単に「役者の出番を増やすだけ」と思っていたら、……そうもあるか。ご自分の目でお確かめください。
梶原さんの最後のセリフの連呼、宮藤さんがただ言わせてみたかっただけ、のような気がしてきた。大人計画からの客演・少路勇介くんが、たいした役ではなくてがっかり。でもがんばってー!

つらつら書いたが、決して面白くないわけではない。3時間、時計を気にせず観られます。いのうえ演出のケレンも楽しめるし、殺陣シーンはなんだかんだ、やっぱりすごい。ただ、新感線もクドカンも、それなりに回数を観ていると、あれこれ言いたくなっちゃうんですよね。
一緒に観劇した人に、古田さんの最後のセリフは要らない、と言われたが、私は「クドカンらしい、人の悪さ」だと思った。宮藤さんは、梯子をはずすのが好き。うーむ、すべて「クドカンらしい」になっちゃうな。
その他、まだまだありますが本日はここにて。続きはまた後日。
【追記】
続きはid:orenade:20090328#p1に書きました。