俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

影の主人公は「わが町ふるさと」

花粉症の季節到来。周囲の防塵マスク率が右肩上がりで、今日いっしょにお昼を食べた人も、前のデスクの人も、みーんなグズグズ。私は、今年も逃げ切りたい所存。花粉症にはならん! ならんぞ!

さて、いまイチ押しの漫画家、岩本ナオさんのコミックスを紹介します。
主に小学館漫画誌「flowers」で活躍されている方で、既刊すべてがマジおすすめ。男性でもいけます。ただいま連載中の「町でうわさの天狗の子」「雨無村役場産業課兼観光係」、どちらにするか迷ったけれど、よりマイナーな「雨無村〜」を、今回はご紹介。早く次巻が読みたいなあ。

雨無村役場産業課兼観光係 1 (フラワーコミックス)

雨無村役場産業課兼観光係 1 (フラワーコミックス)

岡山がモデルの「山岡県」。過疎化の進む雨無村に、東京の大学から村役場に就職するため帰ってきた「銀ちゃん」。田舎の描き方が半端なくリアルなの。

銀ちゃん/村の高校生以上の若いの あたしら3人しかいないから/仲良くしようね

よそじゃどうだか知らないけれど/ここじゃ16でデキ婚で高校中退の うちの弟みたいなののほうが喜ばれるくらいだし

若者は村を出たっきり帰ってこない。子供と年寄りの村。今やっていることは、半日経てば村中に知れわたる。嫁取り婿取りは当然のように話され、親父たちの娯楽は酒。わかるよ……田舎ってそうだよね……。目に見える過疎の村でなくとも、「町」でも「市」でも、大都市から離れるほどにムラなんだよ。変わらないよ雨無村と。少子高齢化、若者空洞化もご同様。
でも、ちゃんと田舎のいいところも描かれています。そこは決め台詞があるので、実際に買って読んでみてくださいな。だから銀ちゃんは、東京から帰ってきたんだよね。
と、こう書くと固い漫画に思われそうだけれど、いやいやどうして。ユーモアセンスと、せつないスイッチが抜群ですよ。「東京都明太区〆鯖ホテル」が出てきます。探してみよう。

少女漫画だからして、もちろん恋バナもあるさ。「全員が片思い」って、ハチクロかよ! ハチクロより好きだよ! いや、羽海野チカさんもいいんだけど、あの人の話は、実は派手なんだよね。全員がスター。けっこうジャンプ的王道漫画を描く人だと思う。岩本ナオさんはタイプがちがって (どちらがいい悪いではなく)、「その他大勢」が主人公なのがいい。微妙な顔がたくさん出てくるよ。それが嫌みじゃなく、あたたかいの。
恋と町おこしに邁進する銀ちゃんを応援しつつも、しかし自分は、田舎には帰れないな、とも思った。だって、田舎では、ヒトリモノはいないも同然だから。でもがんばれ雨無村。

最後に、小声で一言。岩本さん、BL向いていないんじゃ……。少しだけ違和感あり。