俺はなでしこ

 はてなダイアリーから、2018年12月に引越してきました

近江・湖北の旅3日目【彦根あれこれ】

多賀大社の名物「糸切り餅」。柔らか。

琵琶湖めぐり3日目 お多賀さまと彦根城


写真左は朝の彦根城。お濠に木影が映ってきれいだなあ。
宿泊した彦根キャッスルホテルは、和洋膳選べる朝食付き。和の朝食膳を頼んだら、小鮎の山椒煮 (甘露煮に山椒の実をトッピングした感じ)、えび豆(小海老と大豆、醤油と砂糖で甘く煮詰めたもの)などの、琵琶湖名産がおいしゅうございました。えび豆の海老は、しらす干しの中に混じっているような小ちゃいもの。
彦根はあとでゆっくり回るとして、多賀大社までお参りに行く。近江鉄道彦根から片道20分ほど、さらに最寄り駅から10分強歩く。駅からの道が、そのまま参道にもなっているようで、昔風の店構えが多い。というわけで写真右、写真屋お茶屋さんです。雰囲気あるねえ。お多賀さまの近くに「大河ドラマ花の生涯』村山たか女の生家」と書かれた板書が掲げてあり、一瞬「だれ?」と思ったが、先ごろ日経新聞夕刊で連載されていた諸田玲子『奸婦にあらず』の主人公か、と思いいたる。

多賀大社に到着。太鼓橋が、鎌倉の鶴岡八幡宮みたいね。広い境内では、七五三の家族連れが記念写真に忙しい。イザナギイザナミ神をお祭りしたお社で、奥書院庭園も拝観。枯れ山水ふうの一角もあったが、緑が多い方がほっとする。縁側に座って、しばし安息の時間。ところで、廊下に飾ってあった著名人の絵馬が面白うございましたよ。ただ名前のみのサインから、五線譜にことよせた音楽家、洒脱な一筆書きの画の落語家、似顔絵をのっけた俳優などなど、おおいに楽しませてもらいました。
お参りのあとは、門前の店で名物「糸切り餅」。それが冒頭の写真だが、糸切り餅の由来は遠く「蒙古襲来」にさかのぼるんだとか。長く伸ばした餅を切るのに、刃物を忌んで、糸で切るから「糸切り餅」なんだそう。小さな餅は柔らかく、餡は塩で甘みを強調している。近江(というより関西なのか)の味付けは、甘めが多い気がする。関東以北だと甘辛か、しょっぱくなるところだろう。「煮る」を「煮(た)く」というのも、西に来たという気分になる。


多賀から彦根に戻り、夢京橋キャッスルロードでお昼。写真左、すきやき丼です。おいしーい。やわらかい牛肉もさることながら、近江の丁字麩がいい味してる。
キャッスルロードを流し見して、いよいよ彦根城に入る。お濠のある城は敷地が広いこと、すっかり忘れてました……勾配がきついし、本丸の城まで歩くあるく。ようやくたどり着いたら、城、小っちゃ! 残っていたのは天守閣だけだったのか。だから小さく見えてたんだね、納得。とはいえ、創建当時の天守を維持している、貴重な城(国宝)なんである。実際、小さくとも風格があった。コンクリート城とは一線を画しているのだ。
天守閣への入場待ちをしている間、ボランティアのおじさま方が、冗談を交えながら彦根について解説。これがなかなか楽しい。写真中央は、ボランティアのおじさまに「ここから彦根が一望できます」と言われたアングル。琵琶湖から米原のあたりまで、はるばると見えて気持ちいいね。

ひこにゃんにも会ってきたよー。彦根城に来ればいつでもOKと思っていたら、登場時間も日時も限られていて驚いた。下手したら会えなかったかもしれない。そのへんPR不足なので (駅前に張り紙すらない)、ひこにゃんに会いたい人はhttp://hikonyan.hikone-150th.jp/で、ひこにゃんのスケジュールを確認のこと。9月なんか、平日は全部休みなんだぜ。
ひこにゃんの登場パフォーマンスには、黒山の人だかり。人垣で姿すら見えなかったのを、なんとか捉えました。ニャンまげのように飛びつこうとか無理。ひこにゃんはちびっ子にも大人気で、あちこちで「ひこにゃ〜ん」「ひこにゃん、こっち来て〜」と幼い声の大合唱。そのたびにトトト……と駆け寄り、愛嬌を振りまくひこにゃん。ポーズごとにぴたっと止まり、シャッターチャンスにも配慮するプロ意識はさすが。この手のキャラクターは別段好きでも何でもないんだけど、やっぱり見ればかわいいね。

写真の左2点は、大名庭園の「玄宮園」。時代劇のロケ地によくなる、というのも納得の趣き。隣の「楽々園」(井伊家の下屋敷) は、なんと江戸時代の耐震構造の建物です。写真右端、奥の建物は揺れを逃がす構造らしいよ。耐震というより免震?


さすがに歩き疲れたので、帰りはベロタクシー自転車タクシー)で、駅まで送ってもらう。運転手のお兄さんの話では、ひこにゃんのおかげで観光客は飛躍的に増えたという。ひこにゃんに会いに来るのか、女性ひとり旅のお客もよく乗っていかれるそう。
運転手さんには言えなかったが、しかし、彦根市ひこにゃんを有効活用しているとは思えない。商売が下手すぎる。駅にショップはない (ひこにゃんの菓子すら置いてない。唯一、駅前の総合スーパー「平和堂」にコーナーがあって助かった)、駅から各観光地点まで距離があるが、巡回バスは1時間に1本というしょぼさ (会津は30分に1本)、夢京橋キャッスルロードの店案内mapもない。駅前の観光案内所は客が入っても私語をやめず、質問が終わると私語再開で感じ悪かったぞ。長浜の観光案内所は、入ったとたんに立ち上がって「いらっしゃいませー」と笑顔で会釈してきたよ全員。天と地の差。彦根市はお城とひこにゃんに胡座をかいて、やる気ないんじゃないの? キャラクター・デザイナーからの訴訟も、すでに手打ちがされたはず*1
先に長浜で、気持ちよく小銭を巻き上げられてきただけに、彦根の不器用さが不思議でならない。何にでも「名物」と銘打ち、あふれるホスピタリティと商魂で観光客からうまーくむしっていく長浜には、近江商人の気概を感じる。だが、どうも彦根は「殿様商売」なのだ。司馬遼太郎が「日本一商売がうまいのは、大阪ではなく近江商人*2」と言った様子が見られない。長浜は大阪の太閤秀吉と縁が深く(秀吉の初領地が長浜)、彦根は江戸徳川の譜代。同じ近江でも、彦根はちょっと違うのかしらん。
食べ物はおいしいし、お城もきれいで、いい雰囲気の通りも残っているんだから、もちょっとどうにかならんかしら。と、帰りの新幹線で揺られながら思った。

*1:ひこにゃんのキャラクター裁判騒動については、以下を参照。「“ひこにゃん”彦根市vs作者闘争で大ピンチだにゃん!(前編)|日刊サイゾー」、「栗原潔のテクノロジー時評Ver2>「ひこにゃん引退の危機」について」、「栗原潔のテクノロジー時評Ver2>ひこにゃんのその後について

*2:ちょう曖昧な記憶による。シバリョーいわく、大阪商人は巷で言われるほど商売はうまくないんだとか。気っ風がよく、情に引かれて損したり。ちなみに京都はしぶちん。正座して出されたものはお茶しか飲まず、二次会にも行かず帰るタイプ。